閑話 響き合う心3
この前にもう1話投稿してます。よろしくお願いします。
しばらくして泣きつかれた私達は誰一人も何かを発する事もなく静かに各々が想いに耽っていた。私達はもうゆう君の事を諦めるべきなのかもしれない。私達がそれぞれできる限りの事をして各所から情報を集めた。
私や和津梛はせいぜい市内程度でしか調べきれなかったが、静姉や千梛姉、和泉姉は日本中どころか海外にまで情報網を張り巡らせていたそうだ。そして、普段姿を見せない父である神楽坂幹悠と祖父の神楽坂真一祖母の神楽坂志織は世界中に情報網を広げていたと知らされた。それにも関わらずお母さんが得た情報以外は何も得られる事がなかった。もうこれ以上大勢の人達に迷惑を掛けるわけにはいかない……。私は全てを覚悟して皆に話す事にした。
「ねぇ皆……もう、もうこれ以上はきっと皆の迷惑になるよ。調べてくれる人にだって生活があるし、私達だってこれから先の事を考えて前を向いていかなきゃでしょ?……だからもうゆう君の事は……っ。」
ゆう君の事は諦めよう、その言葉が出なかった、うぅん出せなかった。それを言ってしまえば本当に……もう2度と会えない気がしたから。言葉の代わりにまた涙が溢れてきた……言えない、言えるわけない!ゆう君を諦めようなんて……言えるわけがないよっ!私はネックレスに付けてあるあの水晶を両手に握りしめて願いを口にした。
「お願い神様!どうか、どうかもう一度ゆう君に会わせてください!そしたら今度はちゃんとゆう君にお願いしたいんです!ずっと、ずっと一緒にいようって!辛い時も寂しい時もどんな時でも一緒にいるからって!だからお願いします!ゆう君のそばにいさせてください!」
有り得ない事、今更そんな事を神様にお願いしても意味は無い、ただ心からの想いを言葉にしたかっただけ。こんなにもゆう君を想っているんだ!って、願いの様に口に出したかっただけ。けど、そこで私は不思議な声を聞いた。
【その想い誠確かな心か?それは幾多の困難がありとて立ち向かう意思となりうるか?例え多の中の一とて不満を抱かぬ心となりうるか?それはうぬの一の心のみだけか?答えよ。】
「えっ?何今の誰?何の事を言っているの?」
「誰っ!皆一箇所に集まりなさい!早く!」
お母さんに急かされて素早くお母さんの元に集まる私達、しかし声の主はそんな事を微塵も気にすることなく語りかけてくる。
【汝ら、例え如何な障害があろうとも新石優良の力となりまた新石優良を支える為の力となるか?我が問に答えよ】
この不思議な声の人はゆう君の居場所を知っている?もしそれが本当なら私は…行きたい!ゆう君のそばに!例え何が起きようとも一緒に立ち向かってやるんだから!だから私の答えは……。
「ゆう君の力に…」
「優良さんの力に…」
「…優の力に…」
「優良の力に…」
「優良さんのお力に…」
「なりますッ!」
【その魂の言霊確かに受け取った、では欠片を手に願うがいい。新石優良の魂へと自身の魂を紡ぐのだ。さすれば新石優良の元へと旅立つ事が出来ようぞ】
欠片?もしかしてこの水晶の事?そう思い水晶に目を向けると今までと比較にならないような強い光が放たれていた。これを手に持って願う……ゆう君のそばに。ずっと一緒にいたい!
水晶の輝きは更に増し、私達の体を包み込んでいく。これでやっとゆう君に会えると思っていた時だった。
「待ちなさい!この声の主に聞くわ!私の、私の最愛の娘達をどうする気なの!もし、もしこの娘達の命を奪おうと言うのなら……私は絶対にあなたを許さないわ!さぁ!早く答えなさい!」
「お母さん……。」
お母さんは目に涙を浮かべながら怒りを顕にしている。分かってはいたけど…ちゃんと愛されていたんだなぁ…。
「私は、私は!例え自身の命を失ったとしても!絶対に…絶対に娘達は守ってみせるわよ!さぁ、早く答えなさい!」
「お母さん……」
「安心しなさい葉津梛、普段バカばっかりやってるあなたでも私の可愛い娘には違いないのよ。だから……例え何があったとしてもあなた達を守るのは母親である私の役目よ。そこでおとなしくして待っていなさい。」
お母さんの気持ちは素直に嬉しい、けど相手は姿も見えない上に私達5人に不思議な現象を起こせるような存在……一般人のお母さんにどうにかできるとは思えないよ。大丈夫かな?
【その意気に免じてそなたらにわかりやすく調子を落とすとしよう。ふむ、子を想う母の気持ちか……わからんでもない。他ならぬ《私》も子を持つ親だからな。ではどうする?新石優良の元へ向かうのは止めておくか?私は別に構わんぞ?】
えぇ!それは困るよ!私達はゆう君と一緒にいたいのに!だけどそんな私達の想いとはよそにお母さんは不思議な声の主と話し合いを続けている。
「あなたが本当の事を言っているとは限らないわ。もしかしたら娘達の命を狙っている悪魔かもしれないじゃない。姿をろくに見せようもしない相手に娘達をそうそう簡単に委ねられるものですか!」
【言葉に気をつけるがいい、私はこの者らを是非と必要な訳ではない。我が息子優良を想えばこその行動よ。が、お主の言う事にも一理あるのは確かよ。我が息子優良の側に行くか行かぬかを今ここで決めるが良かろう。ほんの一時だけ待っておこう】
「…ありがとう。すぐに確認するわ。それで私の娘達?相手はこう言ってるけどどうする?正直私にはどこまでが本当なのかなんて全くわからないわ。姿の見えない相手に話しかけられて警戒心だけがむき出しになってるせいで何が正解かなんてわからないわ。だからあなた達の意思に委ねます。ただこれだけは言っておくわ。……あなた達の誰を失ったとしても私は今回の自分の判断を強く呪うでしょうね…だから、生半可な答えだけはしないでちょうだい。」
「お母さん…私は、行きたい。ゆう君のそばに居たい。お母さんの事もとても大事だけど……でもゆう君のそばにいたい、です。」
「葉津梛は優良君のそばに行きたいのね?そう…あなた達は?」
「お母さん!私も、私も優良さんのそばに行きたいです!もう、もうあの時の様な後悔はしたくないいんです!だからお願いします!私も優良さんのそばに行かせて下さい!」
「和津梛がそこまで意思表示してくるなんて……そう、あなたも優良君への想いがそこまで強いのね?さぁ静梛や千梛、和泉梛も聞かせて頂戴?」
「お母さん、私も優のそばにいたい……私は離れた場所に居て何も出来なかったけど、帰ってきて優が居なくなったって聞いた時、心の中にあった何かが無くなった様な気分になった。あんな想いもうしたくないから!だからっ……優のそばに、行きたい。」
「フフ、和泉梛にしては頑張って想いを口にしてくれたわね?こうやって聞いてると娘達の成長を感じるわね。さぁ二人も聞かせて?」
「えぇっとその、母ちゃん。その、ほら?アタシはさ?こう女のくせにがさつだったりするじゃん?だけどさ、そんなアタシにも優のやつはカワイイって言ってくれたんだよ。だからぁ~そのぉ~そんな事を言ってくれる優ならアタシの事もちゃんと見てくれるんじゃないかって、だからその、~~~~とにかくアタシも優のそばでならちゃんと女になれそうなんだ。だから、アタシも優のそばに行きたいです!~~~~は、恥ずかしいっ!」
「フフフ、今のはなんか優良君に対する告白みたいね?今回のは優良君にあったら聞かせてあげると良いわ。それとちゃんと優良君のそばに行きたいという強い想いは受け取ったわよ。……さぁ、静梛あなたが最後よ?ちゃんと聞かせてちょうだい。」
「お母さん……私はここにのこっ…」
静姉が何かを言おうとした瞬間、お母さんがその言葉を遮るように言葉をかぶせてきた。
「静梛、あなたの、神楽坂家の長女ではなく神楽坂静梛の心の声を聞かせてね?母親としてのお願いよ。さぁ静梛、あなたの声を聞かせて頂戴?」
「お母さん……静梛も行きたいです。優良さんのそばに…他の男の人とは違う、表面でしか私を見ようとしかしなかった男の人よりも!私を、私を【静梛】としてちゃんと見てくれた優良さんのそばに行きたいです!」
「良く正直に言ったわね静梛!それでこそ私の娘よ。……さてと、これで娘達全員の意思を聞かせてもらったわけだけど……皆?後悔だけはしないようにしっかりと生きなさい!それが娘であるあなた達への母の願いよ。しっかりと!……しっかりと前を向いて生きていきなさいね?」
「お母さん……」
お母さんは目から溢れ出る涙を隠そうともせず、私達5人全員を強く抱きしめた。柔らかな感触、温かな体温、小さな頃から嗅ぎなれたお母さんの匂い、それを感じてしれずに涙がまた流れ出した。
もしかしたらもう会えないかもしれない、そんな想いがよぎってしまったからこそお母さんからもたらされるこの感触から離れ難かった、けど……。
抱きしめていた私達から離れて涙を拭い笑顔を見せるお母さん。スゴイなぁ…母は強しってこういう事を言うのかもしれないと思う笑顔だった。
「さぁ悲しい気持ちはここまでよ!……ここまで待ってくれてありがとうございました。どうかくれぐれも私の娘達をお願いします。」
今までずっと何も言わずにいた不思議な声の主からだろうか?何か妙な感覚が伝わってくる。なんだろう?感謝の気持ち?
【良きものを見せてもらった。そうか……これが親の愛か…。私が知るものとは違う…。これがそうなのか。良きものを見せてもらった礼と言うと悪いかもしれんが、そなたの娘達の命を決して奪わせぬようまた幸せに生きていけるようにする事を誓おう。
それと自身の娘が何処ぞと知れぬ場所へと行ってしまうのは不安であろう。だから私の権限で居場所を教えるとしよう優良が今いる場所そこは異世界【トレワール】優良はその世界の創造神の頼みで一流の職人を目指している。決して死んで死後の世界にいる訳ではない。これで少しは安心したか?それと今回の事は本来なら教えてはならぬ事ではあるが……他ならぬ親の愛というものを見せてくれたお主へのせめてもの礼だ】
え?今この人?異世界って言わなかった?ど、ど、どういう事なの!
【娘達に関しては向こうで優良に聞くといい。では神楽坂沙羅よ。心は決まったか?】
「はい、娘達を……お願いいたします」
【その願い確かに受け取った。さぁ娘達よ!優良と共に居たいと強く願うのだ。さすればその願い聞き届けられようぞ!】
私達は一箇所に集まりゆう君を想う。強くひたすらに願い想う。どうかまたゆう君と共に同じ道を歩けますように、と。すると私達の体がそれぞれ光に包まれていく、私は青色に和津梛は緑色に和泉姉が茶色に千梛姉が赤色にそして静姉が黄色にとそれぞれが持っている水晶と同色の光を纏っていた。
【その欠片が優良の元へと導いてくれるだろう。さぁ行くといい。お前達の願いは聞き届けられた!】
その声を最後に私達は今まで以上の光に包まれた、そして意識が遠のいていく前に見た光景はお母さんが一生懸命に手を振り私達を見送っている姿だった。
「ありがとうお母さん、行ってきます!」
聞こえるかわからないけど、私の出せる大きな声でお母さんに挨拶をした。
急いで連投したのには理由がありまして…下手したらしばらく投稿ができなくなりそうな気配があるのでできる今の内にとしておきました。何事もなければもう1つの作品のリサイクルのやつを投稿したあとに続きを書いていきます。いつも読んで下さる方々、ブクマ、評価をされて下さる方々ありがとうございます。