閑話 響き合う心2
急いで書いたのでおかしな所があるかもしれませんが、後で修正させていただきます。
ゆう君の家族がいない……これは一体どういう事なのだろうか?私は以前にゆう君の口から自分には地元に家族がいて楽しく過ごしていたと聞いた事がある。それなのにお母さんはゆう君に家族は誰一人いないと言う。私はゆう君に嘘をつかれたの?当時のゆう君は前に務めていた会社で酷い仕打ちを受けていたと大兄に聞いていた。もしかしたらゆう君が私に対して気を使って家族が居たと言った可能性が無いとも言えないけど……。本当はどっちなんだろう?お母さんは全てを知っているのかな?早く……早くゆう君の事を知りたい!
「優良君の家族は居ない……なぜそう言えるのか?それを知るのに全く苦労はしなかったわ。それどころかあまりに簡単に知る事ができて何者かに騙されているのではないかと思った程なのよ。」
今まで知ることが出来なかったはずなのに、いきなり情報を手に入れる事ができたのは何か理由がある?難しい事はよくわからないけど昔のゆう君を知る事で今の状況が変わるのなら……。
「その近所の人達から聞くには優良君の最も幼い頃……赤ん坊の頃とかの記憶はイマイチよく覚えていないそうよ?ハッキリと記憶に残る程には既に幼少と言えるくらいの年齢になっていたそうなの。」
「お母さん、それって周囲に住まれている全ての住人がその認識なのですか?もしそうなのでしたら随分と不可解ですね。」
「それってどういう事?静姉。」
「考えてもみて葉津梛?周囲に人が住んでいれば少なからず近所付き合いというものがあるでしょう?そうしたら必ず親しい関係になる人もいれば人付き合いが嫌で疎遠がちになる人もいるはず、そうなると親しい人はよりその人達の家族関係を知ったり誰が幾つくらいの年齢なのかも知る機会は増えてくるでしょうし、疎遠がちの人ならば近づく機会も少ないでしょうから誰が幾つくらい以前にその家族の人数すら知る事は無いでしょう。それなのに……」
静姉が言いたい事がなんとなくわかってきた。つまりは……。その事に気づいた私は静姉の話の続きを話してみた。
「周囲の人達が全員似たような記憶を持っている?あるいは同じ記憶を?それってどう考えても……」
「そう、可怪しいのよ。だからこそ異常……そういう事なんですね?お母さん」
「そう、よく説明せずにそこまで読み取ったわね。偉いわよ、静梛も葉津梛も。まぁただ話には続きがあるから考察は一旦止めてもらっていいかしら?」
はっ!いけない、そうだったよ!ついつい静姉に同意する形で乗っかっちゃったよ。最後まで話を聞かなきゃいけなかったのに、今度こそおとなしく聞いておこう。
「失礼しました、お母さん。お話の続きをお願いします。」
「フフ……良いのよ?決して悪い事ではないから。たださっきも言ったけどこの後どうしても外せない用があるからね?我慢して聞いて頂戴。葉津梛も、大丈夫かしら?」
「うん、今度は最後まで黙って聞いてる。」
「えぇ、それでお願いね?…さてと、続きなんだけど……近所に住む人達に関してはある程度の説明が静梛と葉津梛からあったから、今度は優良君の家族に関しての説明をしていこうかしらね。」
ゆう君の家族……これは結構気になっていた。お母さんは居なくなったのではなく元から居なかったと言った。だとしたらゆう君はこれまでどうやって生活をしてきたのだろう?最低でも幼少からのゆう君は確認されている訳だから、誰かしらがある程度ゆう君が成長するまで見守っていたはずだ。それを知る事でもしかしたらゆう君の居場所に近づけるかもしれない。
「優良君の家族に関してなのだけど……そうね、なんと言えば良いのかしら。居ないと知ったのは近所の人達の話から分かったのよ。近所の人達から共通して聞けた事は優良君の家から優良君以外の人が出てきたのを見た事がただの一度もないそうよ。それを聞いた時はタイミングが悪くて見逃しただけでは?って聞いてみたのよ。
そしたらね?「それはない」って力強く言われてたのよ。理由を聞いてみたらここの周辺は家が隣接してたりするから必然的に誰かの家の前を通らなきゃいけないけど、その前を一度も通るのを見た事がないそうよ。」
そこまで話したお母さんは一度呼吸を整えて喉を潤した後に話を再開した。
「私は理由があって夜間外出をしてたりするのでは?と聞いたの。するとこんな事を言われたわ。優良君以外の家族皆がかい?って。それは確かに可怪しいとは思ったけど、何かしらの病気に日に当たるのを避けたりする人もいるから絶対とは言い切れないと言ったのだけど、それでも優良君以外の家族が皆病気になるのは可怪しい。それにその状況が気になった近所の人が聞いたら家族の皆は元気ですよ。って笑顔で返答したそうなの。
そうなってくると流石に違和感を覚えたわ。優良君はとても優しい子だったわ、そんな子が家族が病気になってたりしたら到底笑顔で家族は元気です。って言える筈が無い。なら考えられる事は本当に家族が誰も居なくて何かしらの理由で優良君が自分には家族がいると思いこんでいた事よ。」
そんな馬鹿な!いくらなんでもそれは短絡的すぎる!もしかしたら姿を見せないだけでしっかりと居た可能性もある筈なのに!お母さんの調査が足りなかっただけでは?そう思った私は黙って話を聞くように言われていたけど、お母さんに思った事をぶつけようとした。だけど……。
「ちなみにだけど調査ならしっかりとしたわよ?しかも普通では出来ないような、ね。でもそれだけじゃあ信用できないでしょう?だから少しだけ教えて上げましょう、優良君に関しての調査を依頼したのはいわゆる裏の者よ。表で活躍してるような探偵なんて目じゃないわよ。そんな連中に頼んだ結果得られた情報は優良君がいた家には優良君以外は誰も住んでいなかった。そして、かつて優良君が住んでいた家は……いつの間にか売られていたそうよ。けど何時、誰が、どのようにして、は全くといっていい程に調べられなかったそうよ。正直こうなってくると優良君自身が何者なのか?になってくるわよ。優良君が病院から消えた事といい、本当にもう……これ以上は何をしていいのかわからないほどよ。」
その言葉を最後にお母さんは頭を抱えて話を終えた。結果で言うのならより謎が深まっただけだ。それにお母さんの言う探偵なんて目じゃないという裏の者が調べて大した手がかりが得られなかったのなら私達に調べられる訳がない。調べた相手は完全なその道のプロ、それに対して私達はただの素人、どう考えても結果は明らかだ。そんな考えが頭をよぎった瞬間もうゆう君には会えないのでは?と思ったら、私の目から涙が溢れた。
「もう、もうゆう君には会えないの?おどおどしてちょっと頼りない所もあったけど、でもとっても優しくて大好きだった……それなのに……っ!もうっ!ゆう君には……会えないの?いや…だ!嫌だよぉ~、ゆう君にっ!ゆう君に会いたいよぉっ!」
泣いちゃいけない、泣いちゃいけないのに……ゆう君にはもう会えないかもしれないという気持ちが強く、強く心にのしかかってくる。これ以上は耐えられそうになかった。今までなんとか堰き止めていたゆう君への好きという想いとゆう君を失ってしまったという想いが強く心を支配する。溢れる涙を止める事なんてできなかった。
「ぅあぁぁっ!ゆう…君!会いたい、会いたいよぉ!どぉして?どぉして私達を置いて居なくなったのぉ!ゆうっ…ぐんっ!」
止まらない、止められない涙と想いを強く言葉にして泣き叫んだ。よく周りも見れば私に触発されたのか和津梛も静姉も千梛姉も和泉姉も皆涙を流して泣いていた。そんな泣き叫ぶ私達を見たお母さんは手を組み目を押さえながらもその間から静かに流れる水滴が見えた。
長くなりそうなので分割しました。今日はもう1話投稿します。