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閑話 残された想い

ここで少し閑話をいれさせて貰いました。後々関係してくるので、早い段階で投稿しておきます。

 ゆう君が私達の前からいなくなって、あれから1ヶ月がたった。

当初、病室から唐突にいなくなった事から、私達は直ぐに騒ぎになると思った。怪我をした彼を勝手に連れ出したのではないのか?と。


 それに対して私達姉妹はしっかりと説明する気でいた。


誰が怪我をした人を連れ出すというのか。


誰が好きになった大切な人に無理をさせるというのか、と。


 私達姉妹は泣きながら半狂乱と言ってもいい程に、病院関係者に食って掛かった。それに対して病院関係者は私達に思ってもいなかった言葉を掛けてきた。



 『新石 優良さんですか?そのような方は入院しておりませんが。』と。



 ありえない、そう思った。私達はすぐに運び込まれた状況を説明した。ところが、入院履歴はおろか退院履歴すら無いと言ってきた。私達はもちろんその記録を確認させて貰った。ところが、そこには「新石 優良」の文字は何処にも無かった。



 私達は、夢を見ていたのだろうか?それとも、連兄れんにいに担がれた?そんな事は無いはずだ。

いくら連兄が悪戯が好きでも私達姉妹を傷つけてまでそんな事はしない。絶対にだ。



 それならゆう君は何処に行ったのだろうか、あんな大怪我では歩き回れるはずはないし、医者ですらも危険な状態を示唆していた。それなのに…。



 これではまるで昔話にある神隠しだ。そんな事はありえない。現代日本でそんな事が起こりうるはずがない。だけど、あの状況をそれ以外にどう説明すればいいのかわからない。



 一番おかしいのは、何故病院の人達からゆう君の記録や記憶が消えてしまったのだろうか?

一体何が起きているんだろう。最早私達が知らない存在に連れて行かれてしまったと思うしか無い。



 何故?どうして?なんでゆう君なの?何処に連れて行ったの?何処に行ったの?そればかりが頭の中を埋めつくしていく。おかしな事を言っていると自分でも思う。でも、他にはもう考えられない。どうしていいのかわからない。



 好きだった。大好きだった。年の差なんて気にならない程に。ずっと一緒にいたいと初めて思える人だった。……なのに、それなのに。



 もう会うことは無いかもしれない、会う事が出来ないかもしれない。だって、ゆう君は私達の目の前で光と共に消え去ったから。



 何処に行ったか?なんて知らない、知ることは出来ない。何処に居るか教えてほしい、生きているの?死んでしまったの?それすらも知る事ができない。



 結局ゆう君は行方不明者として扱われることになった。本人が見つからない事。病院の監視カメラにすら写っていなかった事。そして、病院にいる私達以外の誰もがその姿を見ていないから。警察には、何度も説明したけど聞き入れてはくれなかった。それどころか私達を行方不明の原因なのでは?と疑う始末だった。



 私達姉妹は激怒した。しかし、連兄達にそれを止められた。言っても無駄だ、と。どうせ、探す事もないし、探しきれないだろう。そう言われてしまった。なんでそんな事を言うんだろう?そう思った。何か知っている?そういう訳じゃなさそうだった。単純に無理だと思ったみたいだ。



 警察だって馬鹿じゃない、とっくに調べがついてるはずだ。ならこれ以上ごねても何も明らかにはならないだろう。そう言われてしまった。本当はわかってた、見つからないだろう事は。だって、私達の目の前で居なくなったのだから。それに、居なくなるあの時、私達はゆう君の声で確かに聞いた言葉がある。



『葉津梛ちゃん、和津梛ちゃん今まで迷惑ばかり掛けてごめんね…。それとありがとう…。バイバイ…。』



 あの時、病室の中が光で満たされる中確かに聞こえたゆう君の声。あれが、なにより私達に別れを告げさせるには充分な出来事だった。会社の皆も心配していた、「逃げるようなヤツなんかじゃない、きっと今に帰ってくるはずだから。」そう言いつつもやはり皆の表情はくもっていた。



 あれからさらに数日がたった。ゆう君が居なくなってしまった事で気が抜けた日々を送っていたが、ある日私達に希望を見出す出来事が起きた。



 それは、ある日の事。私と和津梛は学校から帰ってきたら、大兄たいにいに呼ばれた。


「葉津梛それと和津梛ちょっといいかい?あのね少し聞きたい事があるんだけど…。」


「何かな?聞きたい事って。私達に関係ある事?」


「どうかな?そこも含めて聞いてみたいんだ。あのね、実は公佳が優良君の部屋を掃除してたんだけどね、その時に変わった物を見つけたんだ。それを見てほしくてね。公佳持ってきてくれるかい?」



 そう言われて公佳さんは、小物入れを持ってきた。それが、見せたい物なのだろうか?



「見せたい物と言うのはね、この中に入ってるんだ。開けて見てくれるかい?」



 大兄に促されその小物入れのフタを開けてみると、その中には水晶の様な物が入っていた。形は細長い八面体でキレイに磨かれたように光っている。数は5個入っており、大きさは同じぐらいそれぞれ色がついており、青・赤・黄・茶・緑と5色に分かれていた。とても綺麗に見える。



「それが見せたかったものだよ。見に覚えはないかい?もしかして、二人の持ち物だったりするのかと思ったんだけど。」



 私と和津梛には見に覚えはなかった。ただ不思議な事に妙に懐かしい感じがした。その水晶を手にとって見た。すると、その水晶には懐かしい温もりを感じた。間違いないこれはゆう君の温もりだ。私が間違うわけない!(いつも抱きついてたから)



 どうしてこんな水晶からゆう君の温もりを感じるんだろう。どう考えてもおかしい。

そう思いながら水晶を撫で回していた私の頭の中にある言葉が浮かんで来た。



 【想いの欠片】



「想いの欠片?この水晶の事なの?これって一体…。」


「姉さん?姉さんにも聞こえたんですか?この水晶の声が!」


「えっ声って?私はどっちかと言うと言葉が浮かんでくる感じだったよ。」


「そうなんですね、私には声が聞こえたんです。これは【想いの欠片】って。」


「ちょっと待って二人共。どういう事なの?僕達が手に持った時は、何も聞こえなかったし、頭にも浮かんではこなかったんだ。何かしたのかい?」


「「何もしてないよ(です)」」


「そうなんだね…。でも、なんで僕らには聞こえなかったんだろう?そもそも、これは一体誰の物なんだろうか。なぜ優良君のベッドに置いてあったんだろうか?」


「うん?ちょっと待って、大兄それっていつの事?少なくとも昨日はこんなものゆう君のベッドに無かったよ。」


「なぜ葉津梛が昨日優良君の部屋に居たのかは後で聞くとして、それが見つかったのは今朝だね。公佳がいつ優良君が帰ってきてもいいように、掃除をしようとしたら置いてあったらしいんだ。しかも、ただ無造作に置いてあったんじゃなくて何か妙な感じで置かれてたらしいんだ。その配置を公佳が携帯に納めてあるらしいんだ。だからついでに見てくれるかい、優良君が病室から消えたというならもしかして関係があるのかもしれないからね。」



 そう言われた公佳さんが携帯の写真を見せてくれた。それは、まるで五芒星のような配置だった。但し、逆さまになってる気がした。何故かはわからない、ただなんとなく逆さまな様な気がするのだ。



「何か気の所為ですかね?これ五芒星が逆さまになってる気がします。」


「和津梛もそう思う?私もね、なんかこれ逆さになってる気がするの。」


「う~ん、ねぇ公佳、公佳もこれが逆さに見えるかい?」


「いえ、見えないわね、ついでに言うならこれが五芒星にも見えないわ。ただなにかしらの規則性がある感じはするんだけどね。明確に何とは言えないかしらね。」


「連枝はどうだい?五芒星に見える?それと逆さに見えるかい?」


「俺も見えねぇな、つーかそれが模様にすら見えねぇよ。ただ置いてあるだけにしか見えねぇな。」


「僕もだよ、これが模様には見えないんだ。ただ置いてあるようにしか見えない。なぜ、葉津梛と和津梛だけが模様に、しかも五芒星に見えるんだろうか。二人は心当たりがあるかい?」


「「無いよ(です。)」」


「なんかさっきから二人してやたらシンクロしてんな、どうしたよ?」


「「え?そんな事ないよ(です。)」」


「…なんか本当に息がピッタリね。どうしたの?今日は変わった遊びでもしてるのかしら?」


「「何言ってるんですか?この状況でそんな事する訳ないじゃないですか。」」


「…二人共その水晶をこっちに置いてくれるかい?それと、ちょっと質問していいかな?」



 そう言われて私達は水晶を小物入れに戻して、大兄の質問を待った。



「突然の質問になるけど…二人共優良君が好きかい?あ、もちろん異性としてね。答えてくれるかな?」


「うぇ、いや~それは~その~はぃ、好きだ…よ。」


「わ、私はその、ですね。嫌いでは無いといいますか、好きか嫌いかで言うなら……す…き…ですよ。」


「ふふ、そうか。じゃあ今度はその水晶を持った状態でもう一度同じ質問に答えてくれるかな?」


「「だ、だから好きだっていってるじゃん(じゃないですか」」」


「……これは…一体。」


「おいおい、マジか。どうなってんだよ。何だよソレ、一体なんなんだよ。オカルト的なやつなのか?もし、そうなら俺に近づけんなよ。」


「オカルトといえばそうかも知れないね、どう考えても別の意見が出るような質問をしたつもりなんだけどね。ただ…う~んちょっと僕じゃ判断し辛いかな。ねぇ、これ僕がしばらく預かってもいいかな?ちょっと、こういうのに詳しい人に見てもらいたいんだ。」


「「え?でも、これはゆう君(優良さん)の…」」


「だーっ!やかましい!兄貴さっさと持ってって調べちまえ!こんな意味不明なものいつまでも置いててもしょうがねぇだろうが!ならさっさと調べてからその後に好きにすりゃいいだろうが。」


「「ちょっと連兄(連枝兄さん)勝手に決めないで(ください)よ」」


「あーうるせぇ、さっさとよこせ!ほら、葉津梛よこせ、お前もだ和津梛!ほら、兄貴さっさと調べて来てくれ!」



 そう言って私達から取った水晶を連兄は、大兄に投げたのだが水晶は思いがけない動きをした。



「あー!投げたら割れちゃ…う…。う、嘘、う、浮いてる?なんで?」


「なんで浮いてるんですか?この水晶。連枝兄さん何かしましたか?」


「い…や…してない、けど、これどうなってやがる?」


「大樹君、これ早めに回収したほうがいいんじゃないかしら?なんか今にも飛んで行きそうな気がしない?」


「ッ!そうだった、早く回収しないと!ふぅ…、良かったよ本当に飛んでいくんじゃないかと思ったよ。じゃあ、これは僕が預かるよ、超特急で調べてもらうから二人は待っててね。」



 だがこの水晶またしても思いがけない動きをした。大兄の手を飛び出し私達の元に飛んできたのだ。

私の元には青い水晶が、和津梛の元には緑の水晶が手に収まった。



「こ、これは…一体…何なんだ本当に。訳がわからない。葉津梛、和津梛もそれを渡してくれるかい?流石に異常だよ、これが何なのか判明するまでは厳重に保管しておきたいんだ。」


「う、うん、わかったよ。じゃあその箱に入れちゃえばいいかな?和津梛も入れとこう?」



 いくらゆう君の温もりをかんじるとはいえ、宙を飛んできて狙ったかのように自分の手元に来るものを持ち続けるのは少し勇気がいる、一度しっかり調べてもらってそれから貰うなり借りるなり、しようかな。と思っていたが、和津梛の一言でその思いを変える事になった。



「あの…ですね、姉さん落ち着いて聞いて下さいね。この水晶から優良さんの声が聞こえてきたんです。それも割とはっきりと。」


「え?うそ!本当に!分かった、私も試してみる!」



 そう言うと同時に水晶を耳に当ててみるが、何も聞こえない。当て方が悪いのかな?そう思って当て直したり、角度を変えたりするが、やはり何も聞こえてこない。騙したな!



「ちょっと!和津梛!嘘ついたでしょ、全然聞こえないじゃんか!さすがにこんな冗談は許せないよ!私がゆう君がいなくなって寂しいってわかってるでしょ!」


「え?姉さん本当に聞こえないんですか?私のは聞こえますよ、何かをやってるかのような声が聞こえてきますけど…。」


「じゃあちょっとそれ貸してみて、それなら聞こえるんだよね?」



 そう言って代わりに和津梛の持っていた水晶を耳に当ててみるだけど、やはり何も聞こえてこない。これにはさすがの私も頭にきた。



「和津梛なんの冗談なの?私言ったよね、今こんな冗談は許せないって。それなのになんでそんな嘘をつくの?ひどいよ!」



 さすがの私もこの冗談には涙が出てきてつい怒鳴るように言ってしまった。しかし、和津梛の表情はまったく変わらないままだった。



「姉さん、私は嘘をついてはいません。その証拠として今聞こえてきた内容を伝えますね。『う…ん、あれここは…森の中?それとも、どこかの敷地の中なのかな?見渡す限り木しか見えないけど…どこなんだろう?』と言う独り言の様な事を喋ってますね。」


「どういう事?なんで私には聞こえないの?ずるいよ、和津ちゃん!私にも聞こえるようにして!」


「また姉さんは無茶なことを無理に決まってるでしょう。第一なんで私に聞こえるかもわからないのにどうやって姉さんに聞こえるようにすればいいんですか。」


「そうだ!手をつないでみよう、そうすれば聞こえるかも。ね!やってみよう!」


「ハイハイ、わかりました。それで、姉さんの気がすむならやってみましょう。」


「よし、じゃあさっそく手をつないで耳に当ててみよう!ハイ!和津ちゃん。」


「はい、これでいいですか?これ……で…なんですか、コレ?何か変な感じがします。何か森の中に居るような変な感じです…。」


「おー聞こえるゆう君の声が本当に聞こえるよ!。おーいゆう君聞こえる?」


「葉津梛!和津梛!それを渡すんだ!いくらなんでも怪しすぎる。」



 そう言うと同時に私達が持っていた水晶は連兄に取られてしまった。何か凄く怖い顔をしている。

どうしたんだろう?



「何?急にどうしたの?そんな怖い顔をして…。まぁ怖い顔はいつも通りか…。」


「冗談を言ってる場合じゃない、お前ら二人気付かなかったのか?この水晶持ってる時、お前ら二人して身体が光っていたぞ!こんな怪しいもんいつまで持たしておけるかよ!」


「え?本当に?」


「本当だよ、葉津梛。君は今確かに身体中が青く光っていた。それに、和津梛は緑色に光っていたよ。さすがに何かわからないままこの水晶を持たせる訳にはいかないから、これは回収させて貰うよ。」



 どうやら冗談を言ってるわけじゃないようだ。でも、せっかくのゆう君の手がかりをみすみす逃すわけにはいかないんだ!そう思い大兄から水晶を奪い取ろうとしたが、公佳さんに阻止されてしまった。



「おっと!葉津梛ちゃんが考えてる事はわかるわよ。でもね、もしそれであなた達も消えてしまったら残された人達は、どう思うかしらね?二人ならわかるはずよ、違う?」


「「それは…」」


「大丈夫だよ、これが悪影響でなければちゃんと二人に渡すから。だからお願いだよ、確認だけはちゃんとさせて欲しいんだ。いいかい?二人共。」


「わかったよ、大兄。だけど、できるだけ早くしてね、せっかくのゆう君の手がかりだから、和津梛もいいよね?」


「はい…わかりました、でも私も姉さんと同じです。早めに返してくださいね。大樹兄さん。」


「あぁ、わかってるよ。急いで確認してすぐにでも返せるようにするから二人共待っててね。行こう、公佳。」



 公佳さんと共に行った大兄を見送ってこれからどうなるのか、あの水晶をきっかけにゆう君を見つける事ができるのかを一生懸命に考えることにした。



 きっと何かが起きるそう思わずにはいられなかった。

 

少し休んで微々たるものではありますが、また書き溜める事が出来ました。

それといつも読んで下さってありがとうございます。読んで貰えてるだけでも励みになります。

あ、評価してくれてるのもかなり嬉しいですよ、ありがとうございます。

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