プロローグ
初めて小説を書かせていただきました。けだるまと申します。
今までは読むばかりでしたが、自分も小説を書いてみたいと思いきって書いてみる事にしました。
拙い文章力ではありますが、読んでいただけたら嬉しいです。
書く速度はかなり遅いのでなかなか更新できないとは思いますが、出来る限り頑張りたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。
プロローグ
どこかにいい職人はいないものか・・・
そのつぶやきが広い空間に響き渡る。
ここは、異世界【トレワール】を管理し見守る神が住む場所。そんな場所でされている会話だ。
『そうですね~、いい加減ここも立て直す時期ですし・・。けどここに立ち入る資格がありつつ職人としてもいい腕を持っているとなるとなかなかみかけないですねぇ~。』
そう返したのは穏やかな顔つきをしたおばあさんだ。
『あまり焦ってもいい事はないですから、ゆっくりいきましょう。すぐにどうなるという事もないですからね。』
それに返すは、こちらもまあ優しい顔つきをしたおじいさんだ。
『そうだなぁ、急ぐこともないか、、、。まぁ、そのうちにという事でいいかもしれんなぁ。』
その言葉に待ったをかけるように横から別の声が掛かる。
『えっ!待ってください、それでよろしいのですか?早い段階での建て替えを検討するはずだったのではないですか?』
『うむ、そうは言っても肝心の職人が見つからん以上はどうにもならんからのぉ。な~に早い内にとは言ったがそれでも軽く見てもあと100年ぐらいならまだまだ大丈夫だ。心配はいらんよ。』
『えぇ、大丈夫でしょう。いくらガタがきてると言ってもそんな簡単には壊れたりはしないから大丈夫ですよ。あくまでも話として早いほうがいいかと思っただけですからね。そんなに気にしなくてもいいんですよ?』
この二人にそこまで言われたら流石にこれ以上は言い辛い。ここは様子を見ることにしようと、女神はそう考えてこれ以上の意見は控えることにした。
『わかりました、では条件が整い次第ということで、今回はここまでにさせて頂きます。では、まだ仕事がありますので、これで、、、、。』
そう言って立ち去った女神を心配そうに見ながら二人の会話は続く。
『あの子には悪いことを言ってしまいましたかねぇ。もう少しあの子の話も聞いてあげるべきでしたかねぇ。』
『確かにのぉ。しかし、こればっかりはどうにもならんからのぉ。まぁ、あの子に関してもしばらく様子を見るという事でよかろう。あの子も立派な神の一柱じゃ、儂等がいつまでも子供扱いしてはいかんじゃろ。』
『ん~そうですね、私達は見守っているぐらいがちょうどいいかもしれませんね。とりあえずはお茶でも飲んで待っていましょうか。』
『そうだなぁ、それがいいちょうどいい茶請けも知り合いから貰ったしそれと一緒にいただくとするかのぉ。ふぉっふぉっふぉ。』
とりあえずは様子見をすることにした二柱の神ではあるが、まさか様子を見ることにした女神がとんでもない事をやらかすとは思いもよらなかったのだった。
『いくら二人が大丈夫だとは言っても限度はあるはずよね…。うん、きっとそうだわ!それにこの世界にいないと言うのなら別の世界から呼べばいいのよ!うんうん、考えれば考えるほどいい案だわ。』
だいぶ先走った考えのこの女神の起こす行動で明らかな被害をこうむる人間がロックオンされつつある。
しかし、この女神を止める者はいない。ロックオンされた人間のその後は女神により異世界トレワールへ招待されるのみである。
『ん~腕の良さそうな職人か~。意外と見当たらないわね。それに、ルールに違反しない条件もつくから
全然見つからないわ。どうしようかしら?
ん?今、条件索敵に引っかかったような?どこかにいるのかしら?っ!見つけたーー!!い、急いで確保しなきゃ!え、え~とえ~とどうやるんだっけ?こうかな?それともこう?あーわかんない!!
とりあえず細かい事は後回しよ!この出会いに感謝します、神様!そ~れ、こっちこ~い!!』
こうして女神により異世界トレワールへと招待された人物の、これから先の人生が決まってしまった瞬間だった。
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ここは日本のとある地方の工務店、若干不満そうに書類仕事をしている女の子二人が愚痴っている最中だった。
「あ~ゆう君早く戻ってこないかな~。こんな所で待ってるなんてツマんないよ~ぶ~。」
今喋っているのがこの神楽坂工務店の姉妹の一人で名を神楽坂 葉津梛。年は18歳である。見た目は肩まで伸ばした髪に色は茶色。目の色も茶色だ。スタイルは抜群にいい。そして何より目立つのがその大きな胸だ。巨乳と言って問題ないほどである。
「葉津梛姉さん…言いたい事は分かりますがとりあえずこの仕事を終わらせてから話しましょう。」
そして、今の返事を返したのが神楽坂 和津梛。葉津梛の1つ下で17歳だ。彼女の髪は背中の中間あたりまで伸ばしたクセのない綺麗な黒髪だ。目の色も黒だ。また彼女もスタイル抜群で姉に負けず劣らずの大きな胸をしている。
「えぇ~何言ってるのさ?『か~ちゃん』私とっくに終わったよ?」
「っ!そうですか、相変わらず仕事が早いですね。あと私は『か~ちゃん』ではありません。和津梛です!」
「いいじゃん!か~ちゃんって呼び名可愛くない?これからはそう呼ぶことにしようか!ね!」
「い・や・で・す!なら姉さんは小学生のときのあだ名で確か、、『はっつん』でしたか?そう呼んでもいいなら構いませんよ?」
「それはいやだ!なんか居酒屋で大将やってるおじさんみたいなあだ名じゃんか~。だから、絶対に嫌!」
「それを言うなら私も嫌です。そのあだ名では既に家庭をもって子供までいるみたいじゃないですか。」
「そっか~それならしょうがないか~。じゃあ、いつもどおりかずちゃんって呼ぶね?」
「はぁ~…はじめからそうして下さい。唯でさえこの書類作業で疲れているというのに、余計に疲れることを言わないで下さい。」
「あ~ゴメンね。そのかわりに書類作業を手伝うから…」
そこまで言い掛けたところに携帯電話が鳴り響く。
「姉さん、電話鳴ってますよ。先にそちらをどうぞ。」
「は~い。もしも~し、葉津梛ですよ~。誰ですか~?」
「誰ですかって…普通聞きますかね…。まぁ姉さんですからしょうがないですね。」
『もしもし葉津梛か?俺だ、連枝だ。今、大丈夫か?』
「うん?連兄~なに~大丈夫だけどどうしたの?」
『和津梛はそばにいるか?』
「うん、いるよ~。それがどうかした?」
『いいか、落ち着いて聞け。優良が現場で仕事中に足場から転落して怪我をした。
今、病院に運ばれたけど、救急隊員の話ではかなり危険な状態らしい。
お前たちには先にその運ばれた病院に行ってほしい。頼めるか?』
「……え?うそだよね?…。」
その言葉を発するのと同時にへたりこんで携帯電話を落としてしまう葉津梛。
「ちょっと姉さん、どうしたんですか!?」
それ以上葉津梛が倒れないように支えながら和津梛は落ちた携帯電話を拾い、話の続きを聞くことにした。
「連枝兄さんですか?電話を変わりました。和津梛です。一体なにがあったんですか?」
『和津梛か!すまん、葉津梛は大丈夫か?』
「はい、大丈夫です。けど話を聞けそうにないので私が変わりました。」
『そうか、わかった。ならもう一度言うから落ち着いて聞いてくれ。優良が現場で仕事をしてる最中に転落して怪我をしたんだが、駆けつけた救急隊員が言うにはかなり危険な状態らしいんだ。
大樹の兄貴と俺は、現場の責任者という事で、警察に事故の状況を説明しなきゃならんから、現場を離れることができないんだ。だから、お前たち二人に先に病院に行ってほしいんだ。行けるか?』
話の内容を聞いてから、電話をもつ手がカタカタと震えだす。しかし、傍らにいる青ざめた顔の姉を見て泣き出しそうになるのを我慢して返事をする。
「大丈夫です。どこの病院か教えて下さい、姉さんと一緒に行ってきます。」
『わかった場所は……。』
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それから時間は少し遡り事故の発端まで巻き戻る。
「お~い優良そっちの作業はまだか~」
「すいません!もう少し掛かりそうです。時間的にそろそろまずいですかね?」
「いや?まだ余裕はあるんだが、もう出来たかと思ってな。」
「すいません…急いで終わらせますんでもう少し待ってもらっていいですか?」
「あ~そんな申し訳なさそうにしなくてもいい。余裕は本当にあるから気にせず続けてくれ。」
「はい…分かりました。なるべく早く終わらせるんで…。」
そう言いながら離れていく男の名前は新石 優良。38歳になる自称おじさんだ。
本人は、おじさんというが他人から見ると童顔なせいか20代なりたてにしか見えない。
そのため、優良に声を掛けた男も年下をいじめたようでやりづらい。
「…優良もなぁ、もうちょい自分に自信をもってもいいと思うんだがな。俺から見ても結構腕はあるんだが、どうしたもんかね。」
立ち去った優良の後ろ姿を見て話す人物は、神楽坂工務店の現場責任者を預かる神楽坂家の次男、神楽坂 連枝だ。細身ながらも筋肉質な体型をしており、如何にも力仕事が得意だと言わんばかりである。年は27歳になる。
「仕方ないよ。優良君は、前に勤めていた会社で自分が何も出来ない人間なんだと思い込まされてきたからね。あれは心の傷になってるんだと思うよ。
だから、彼がこれ以上そう思い込まないように僕らが見守りつつ職人として一人前にしてあげれば、いつかは自分に自信がもてるようになるよ。」
同じくそばで見ていたこの人物は、神楽坂 大樹。名前から想像すると大柄な男性を思わせるが、実際はなぜかとても可愛らしい少女のような見た目だ。力仕事は苦手だが、細かい細工が得意な立派な職人である。ちなみに既婚者で年は28歳になる。
「だな。俺も出来うる限り技術を仕込むけど、大樹の兄貴も頼むぜ。」
「もちろんだよ!僕の技術も惜しむことなく教えてあげるんだ!」
「……あ、あぁ頼んだぜ、兄貴…。」
「んっ?どうしたの?何か気になることがあるの?」
連枝は迷った。聞いてもいいのか、彼が傷ついたりはしないかと…だが心を奮い立たせて聞くことにした。
「じゃあ聞くけどよぉ兄貴。」
「うん、何?」
「…なんで女もんの服を着てるんだ…。」
「これは…その…えっとね、その公佳が『今日は、このお洋服にしましょう!』って着替えさせられたんだ…。」
「そうか…また義姉さんか…。その、なんだ似合ってるんじゃないか?ハハッ良かったな兄貴!愛されてるじゃねぇか。」
そうなぜか大樹は女の子が着るような服装なのだ。せめてもの救いがスカートじゃないことなのだが、この格好には再三に渡って妻に抗議した大樹だが、妻の『やっぱり、こんなのっておかしいよね…。ごめんね、大樹君もうこんな事…させないね…。』と、涙ながらのセリフにより陥落し、結局こんなことになってしまったのだ。
「フフ……そう…似合ってるか…ならさ、僕をちゃんと見てから言ってごらんよ。ねぇ、連枝~ほら~。」
「(チラっ)ぶふっ!おぉ…に、ニアッテルヨ~サスガアニキ、カワイ…カッコイイゼェー」
「棒読みじゃないかっ!しかも、可愛いって言い掛けたっ!!僕がそう呼ばれるのを気にしてるって知ってるのに!!ひどいよ!」
「わかった!悪かった!俺が悪かったって……」
---ガンッ!ガガン!ドサッ!
唐突になにかが落ちたような音が響き渡る。
「ッ!どうした!なんの音だ!!」
「見に行こう!連枝!」
「ああ!急ごう!」
音が聞こえた付近に駆けつけると人集りができていて、そこから一人の従業員が走ってきて伝えられた内容に二人は顔が青ざめた。
「大変です!連枝さん、大樹さん!優良さんが足場から落ちて怪我をしてるんです。」
その声を聞いて連枝があわてて聞いた。
「何!?優良は無事か!おい!どうなんだ!!」
「全身傷だらけでよくわからないんで、とりあえず動かさないようにしてます。」
「救急車は呼んだのか!?」
「はいっ!すぐに呼びましたけど、道が混んでて来るのに時間が掛るそうです。」
「クソッ!とりあえず応急処置だけでもしておくぞ!」
「連枝!僕がやるよ、連枝はみんなを落ち着かせてくれないか?」
「わかった兄貴、おい!お前ら!他に怪我人がいないか確認するから全員一箇所に集まってくれ!」
ざわめく中で応急処置が続くが素人には限界があった。
「これが限界だよ…。あとは救急車が来るのを待って病院で治療してもらわないと…。」
「救急車来ました!こっちです!こっちにお願いします。」
救急車に搬送されていく優良を見て皆が心配そうにしていた。神楽坂工務店に勤めている従業員は皆、優良をとても慕っていた。技術は自分たちに及ばずともいずれは、肩を並べていける職人になるであろうと。
しかし、いずれ訪れるであろう未来は、目の前で無残にも砕け散ってしまった。
皆が思ってしまったのだ、おそらくあのひどい状態では助からないだろうと…。
「優良…。なんでこんなことになったんだよ…。」
皆が救急車を見送る中で、連枝の言葉がサイレンの音にかき消されていった。
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優良が運び込まれた病院にちょうど葉津梛と和津梛が訪れていた。
「すいません!神楽坂工務店の者ですが、新石 優良さんはどこにいますか?」
それに対して看護婦が答える。
「新石さんは、今治療室に入ってます。申し訳ありませんが、今は面会できません。」
姉妹は叫ぶように、懇願する。
「お願いします!ひと目見るだけでもいいんです!会わせて下さい!!」
「会わせてあげたいんですが、治療の邪魔になってしまいますので、申し訳ありませんが…。」
「お願いします!邪魔にならないようにしますから!」
どうしても無理だと、断ろうとした所に担当医らしき人がやってきた。
「構いませんよ、会って上げて下さい。」
「ですが先生よろしいのですか?」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
ただしと医者の言葉は続く…。
「覚悟だけはしておいて下さい。新石さんは、目覚めていません。というよりも助かるかどうかがわかりません。正直かなり危険な状態なので…。
全力で手は尽くしましたが、あとは本人の意志と体力次第です。」
そう言って頭を下げ立ち去って行く医者を尻目に搬送された部屋へと駆け出していく…。
部屋へと辿り着いた二人が見たのは痛々しい状態の優良の姿だった。
「うそ…ゆう君が…なんでこんな…ことになってるの?ねぇ!なんでゆう君!起きてよぉ!ゆう君!!」
「姉さん……駄目だよ!動かしちゃ!」
「でも、でもゆう君を起こして…お家に帰らなきゃ…。きっと、みんな待ってるから…。」
「姉さんの気持ちは痛いほどに分かります。でも、ちゃんと見て下さい。この状態じゃ…優良さんは、きっと…もう。」
「そんな事ない!なんでそんな事言うの?ここいるよ?ゆう君はここにいるんだよ!」
とうとう耐えきれなくなった葉津梛は声に出して泣き出してしまう。それを見て和津梛も声は出さずともうつむいて涙を流す。
二人が悲しみにくれていたその時、優良の体が急に輝き出した。
その光は、部屋を覆い尽くす程の光量で目を開けることなどできるものではなかった。
「な、何、この光眩しくて何も見えない!」
「ゆう君が光ってるの?待って、どこに行くの?ゆう君!行っちゃ駄目ー!」
見えないはずの光の中で、直感的に優良がいなくなってしまうと思った葉津梛が大声で優良を呼び止める声を掛けるも反応は無い。
「ゆう君?ゆう君っ!行っちゃ駄目!駄目だよ!」
その時光の中から幻聴かはたまた実際の声なのかはわからないが、二人は声が聞こえた気がした。
『葉津梛ちゃん、和津梛ちゃん今まで迷惑ばかり掛けてごめんね…。それとありがとう…。バイバイ…。』
その言葉を最後に光は収まったが、そこに優良の姿は無かった…。