虎目石のこと 2
「君にはそれを祓うことはできないんだね?」
「はい。霊能者ではないので」
「出来る人を紹介してもらうことは?」
「え? 必要ですか?」
深刻な顔をした父の質問に、城崎さんは不思議そうに答えた。
「夕香さんが綺麗に浄化してたじゃないですか。霊能者なんて必要ないですよ」
「それじゃ、もうあれは出て来ないと?」
「あ、いえ。それはなんとも言えません。あれは、たぶん芯が生きた人間なので」
「生きた人間って……。生き霊ってことか?」
「はい」
「なぜそう言い切れるんだ?」
「これも場に漂う残留思念を読んでみての経験則です。――羨望、嫉妬、恨み、妬み、すべてがとても生々しく鮮烈な感情でした。ああいうのは生者のリアルな感情です」
死者の場合、恨みの中に諦観めいた哀しみが混じっていることが多いと城崎さんは言った。
「しかもあの生き霊は邪気を強く纏っていて、あともう少しで悪霊化するところでした。邪気を放出する程に歪んでしまった人が、一度撃退されたからといって諦めるとは思えません」
「……また来ると?」
「その可能性はあると思います。でも、夕香さんのような方がいるんだから心配ないですよね? 悪霊化しかかってた生き霊を痕跡も残らず消すなんて、高位の神職レベルですよ。――なにか撒いてましたけど、あれ、なんだったんですか?」
城崎さんの興味津々の質問に、今度は母が困惑した顔になる。
「あれは……芽生ちゃんからもらったもので……」
「食卓塩だよ」
「はあ?」
「だから、携帯用の普通の食卓塩。日陰に凝ってる澱みに振りかけると少し小さくなるからいつも持ち歩いてるの」
「……食卓塩であれは消えないと思うんですが……。浄化の光が部屋に満ちていたし、夕香さんがなにかしたのでは?」
母は困ったように父に視線を向ける。「彼には話しても大丈夫だろう」と、父は母に頷き返した。
「私がなにかしたわけではなんです。私が世話している植物達がみんなで助けてくれて……」
その結果、植物達が枯れてしまったことを思い出したのか、母が言葉に詰まる。
「俺が説明するよ」
母に変わって父が、母の緑の指の力について話をした。
話を聞いた城崎さんは、地が出たのか「すげぇ」と興奮したように呟いた。
「無敵じゃないですか! 霊能者なんて必要ないですよ」
「いや、駄目だ。妻にとって植物は友人のような存在なんだ。何度も自分のせいで枯らしてしまうことになったら、妻の心が持たない」
「ああ、それは……確かに……。う~ん、確認なんですが、この時、界太先生はどちらにいらっしゃったんですか?」
「家にはいなかった。たまたま実家のある九州に行ってたんだ」
「なるほど。たぶんそれも偶然じゃないですね。界太先生がいなかったから出たのかもしれない」
「なんで?」
「きみのお父さんの神気の卵が特大サイズだからだよ。修行した神職なみのパワーがあるから生き霊だってそう簡単には近寄れないはずだ」
結界のような効果をもたらしていた父が家から遠く離れたことで、生き霊が家の中にまで入ってきたのかもしれないと、城崎さんが言う。
そして、家の中に父の姿が見当たらなかったから、探す為に家の奥にまで入り込んできたのではないかと……。
「それって、生き霊の目当てはお父さんだってこと?」
「たぶんそうなんじゃないかな。嫉妬や羨望みたいな感情が強かったから、有名漫画家である界太先生を羨んでる誰かの生き霊じゃないかと俺は思ったんだけど……」
「お父さん、心当たりある?」
「う~ん。あるっちゃある。デビューできない新人から中堅作家や同期まで色々と……。取材やなんかでけっこう俺の仕事場は知られてるし、隣が自宅だってことも知ってる奴は知ってるしなぁ。そもそも嫉妬や羨望なんて、誰だって持ってる感情だ。そういう感情があるからこそ、いつか見てろよと頑張れる部分もあるだろうし」
「そっかぁ。それなら特定は難しいよね」
「候補が多すぎて無理だ」
「疑わしい人がいたら、芽生ちゃんに会わせてみるという手もありますよ」
「なんで私?」
「生き霊が邪気を纏っていたんだから、きっと本人だって邪気まみれだからですよ。きっと一目瞭然だ」
「げっ」
思わず下品な声を出すと、「めっ」と母に叱られた。
「できれば娘にそういうことはさせたくない。邪気……というか俺達は澱みと呼んでいるんだが……澱みを身に纏った人間の危険性は理解しているつもりだからね」
「……今までになにかありましたか?」
「この子達の幼稚園時代に、同じ幼稚園に通う子供とその母親が犠牲になった事件があった。それ以外にも何度か……。つい最近も、かなり危険な集団に関わりかけ……。――芽生」
「なに?」
「お前のクラスメイトから、家の情報が流れた可能性はないか?」
澱みを放出する人とは滅多に会うものじゃない。だから父は、先日の都子ちゃんの部屋絡みの事件を連想したのだろう。
でも私は、それは違うと思う。
「大丈夫だよ。美結はもう絶対にそんなことしないから」
「私もそう思います。あれ以来、悪い人達とはきっぱり縁を切って、真面目に部活動に励んでいるんです」
ここ最近は、毎日のようにコツンコツンと美結のオレンジ色の光がぶつかってきてうるさいぐらいだ。
あんなに元気に光が飛び回っているんだから、もうあの怖い人達とは会っていないだろう。
「それに、あの怖い人が生き霊を放ったとしても嫉妬や羨望じゃないと思う。もっと怖い感情だよ」
苛立ちや怒り、そして破壊衝動。
そういう破滅に向かう感情ではないかと思う。
「そうか。ふたりがそう感じるのなら、そっちが正解だろうな。となると、やっぱり業界関係者か……」
「パーティーにくっついていこうか?」
私が自分から申し出ると、父は難しい顔になった。
「俺の天使を人前に出したくない。変な奴に目をつけられても困るしな。……それに犯人を見つけたとして、どう対応したらいいんだ?」
「生き霊飛ばすのを止めろって頼むとか」
「いや、無理だろう。生き霊は飛ばす方は無意識だと聞いたことがある」
「そうですね。だから、人を妬んでも無駄だと、どうにかして分からせるしかないと思うんですが……」
「澱みを放出するくらいこじれてる人間が、説得されたぐらいで思い直したりするか?」
「無理だよ」
私が断言すると、みんな一斉に難しい顔になった。
「犯罪を犯しているわけではないから拘束することはできない。幽霊が相手なら頼む人に頼めば強制的にあの世に送ることもできるのかもしれないが、生きた人間相手じゃそれもできない。難しいな」
「なんかすみません。俺、役に立ってないですね」
「いや。そんなことはないよ。こっちは五里霧中だったんだ。事態を理解する道筋を教えてもらえただけでも助かってる」
「それならいいんですが……。とりあえず、知り合いの神職の方に相談を兼ねて、お札を書いてもらってきます。名だけ神職じゃなく本物なので効き目はありますから。界太先生がお留守にしても家を守ってくれると思います」
「それは助かる。家には神棚はないが大丈夫かな」
「はい。人の目線より上で、清潔で明るい場所に祀っていただければそれで」
「わかった。――お礼はどうしようか」
相談にのってくれた城崎さんや、お札を書いてくれる神職さんへのお礼など、大人達が具体的なことを話しはじめたので、そっちに興味のない私は、さっきからずっと都子ちゃんの膝の上でうずうずしているぴーちゃんに視線を落とした。
「都子ちゃんが手を離したら、きっとすっごい勢いで飛び出して行くよね」
はじめて見る虎目石タイプの光に、さっきからぴーちゃんの視線は釘付けなのだ。
城崎さんの話でみんな興奮していたからか、それ以外にも皆の光がいつもより大目に放出されている。苺ちゃん達もくるくるっと飛び回っていて、楽しそうだ。
「そうね。もう抑えておくのが大変。でもね、ぴーちゃん絶対に爪を出さないの。いい子ね」
「そだね。家に来たばかりの頃は、けっこう流血沙汰も多かったんだけど」
はしゃぐあまりに、ザシュッと爪を立てられたことが何度もある。
猫の爪切りは先端の尖った部分を切る程度なので、引っ掻かれれば浅い傷はつく。仕方の無いことだと諦めていたけれど、誰が教えたわけじゃないのに、いつの間にかぴーちゃんは爪を立てなくなっていた。
「大人になったのかなぁ」
猫は人間より成長が早い。だからなのだろうか?
「ぴーちゃん、何歳なの?」
「家に来て七年目で、お迎えした時にはもう成猫だったから、八歳以上?」
「けっこう高齢なのね。小柄だからまだ子猫みたいにみえるのに……。猫の寿命ってどれぐらいだったっけ」
「……十五、六とか言われてるみたい。でも獣医師さんが、ぴーちゃんは子供の頃に栄養がちゃんと取れてないみたいだから、あんまり長生きできないかもって……」
ぴーちゃんを飼うと決めた時に、猫の寿命については父から教えられていた。
いつかその時がくると覚悟を決めているはずなのに、ぴーちゃんとの別れを思うと、自然と目が潤んでくる。
私は、都子ちゃんが抱っこしているぴーちゃんの頭を撫でた。
撫でられたぴーちゃんは迷惑そうに、ふんと鼻を鳴らしている。
なんと冷たい態度か。
これで、毎晩必ず私の側でゴロゴロ喉を慣らしつつ眠るんじゃなければ、嫌われてると思うところだ。このツンデレめ。
「猫の身体にいい食べ物とか、マッサージ法とか、後で調べようか?」
「うん。ありがと」
うっすらベソをかいてしまったのが気恥ずかしくて、えへへっと笑って誤魔化していると、城崎さんが声をかけてきた。
「その黒猫、さっきから妙にキョロキョロしてるみたいだけど、いつもそんな感じ?」
「ああ、ぴーちゃんも私と同じように光……神気の卵? が見えてるの。だからだよ」
「そりゃ珍しい。……霊を察知する猫はけっこういるけど、神気が見えるなんて」
城崎さんからポポンと虎目石が飛び出してきて、興味津々と言った態でぴーちゃんに近付いていく。
はしゃがないよう都子ちゃんに押さえつけられていたぴーちゃんは、大きく口を開けてその虎目石をぱくっと食べた。
「……今なにした?」
「虎目石を食べちゃった」
「ああ、やっぱり食べてるのね。いつもはしゃいでる時、おっきく口を開けてるから、そうじゃないかと思ってたけど」
「うん、そう。狩りのつもりなのかもね。光を追っかけて、パクッと食べるまでがワンセット。食べてるっていっても、光は触れられるものじゃないから。食べた真似だけどね」
「界太先生の特大サイズのもパクッと?」
「そだよ。私の光が一番好きみたいだけど……。ねー?」
ぴーちゃんに話しかけたが、ぷいっとそっぽを向かれた。酷い。
「ぴーちゃんって、たまに凄く人間くさい仕草をするよね」
「そだね。ぴーちゃんから出てくる光も人間っぽい色だよ」
「色がついてる? 茜からは、動物の神気は白だって聞いたんだが」
「淡いピンク色だよ。普通の猫より大きめで数も多いから、暗い所で見ると桜の花びらみたいで綺麗なの」
「……それ、本当に猫なのか?」
「猫だよ」
失礼な。
こうして、最後の最後に城崎さんの好感度は地に落ちたのだった。
「あ、ドボンだ」
調子に乗ってカードを要求して、あっさり負けた。
学校の昼休み、ババ抜きから始まったトランプ遊びは、神経衰弱を経て、現在はブラックジャックに至っている。
チップの代わりにクリップを使って、いつものメンバー五人で遊んでいるのだが、例の如く私のひとり負けが続いていた。
「芽生ちゃん、もうちょっと慎重にね」
「高望みせず、地道にやったほうがいいよ?」
都子ちゃんと杏ちゃんの私を見る目は、残念な子を見るそれだ。
「勘が良いとか言ってたくせに、てんで駄目じゃない」
美結が、ふふんと鼻で笑う。むかつく。
「いいカモね。大人になっても賭け事には絶対に手を出しちゃ駄目よ」
ニヤニヤ委員長、咲希ちゃんがしょうがない子を見る目で私に忠告した。
「はーい」
素直に返事をした私だが、ふと以前都子ちゃんが言っていたことが気になった。
美結の件で異常な勘の良さを見せた私に超能力少女疑惑が持ち上がっていて、それを確かめる為に咲希ちゃんがトランプに誘ったのではないかと……。
ババ抜きでテレパシーが、神経衰弱で透視能力が、そしてブラックジャックで勘の良さが無いことが既に証明されてしまった。
「咲希ちゃん、明日からもまだトランプする?」
不安に思って聞くと、「飽きちゃった?」と軽く眉をひそめた咲希ちゃんに逆に聞かれた。
「ううん。もっとしたい。負けても楽しいし」
「それなら良かった。誘った甲斐があったってもんよ。長いことぼっちで友達と遊ぶのに免疫なさそうだから、ちょっとはリハビリになるでしょ」
コツンと咲希ちゃんの深緑の光がおでこに当たる。
せっかく遊んでやってるのに、余計なことを言うなとちょっとだけムッとしたってところかな。
咲希ちゃんは少し性格がよじれてるけど、基本的には面倒見がいいから委員長に推薦されたんだろう。納得。
痛いわけではないけれど、なんとなくおでこをさすりながら、私のおでこにぶつかった衝撃でくるくるっと教室の天井近くまではじけ飛んで行ってしまった深緑色の光に視線を向けた。
と、いきなりコツンと頭を小突かれた。
「なに見てんのよ」
「え?」
「もう、すぐそうやって空中ばっか見てるから、ぼっちになちゃうんでしょ? 止めてよ。気持ち悪い」
「怖いの間違いでしょ? ごめんね、芽生ちゃん。美結はね、こう見えて臆病なの。怖いのがホント駄目でね」
文句をいう美結を、杏ちゃんが庇う。
「子供の頃に、近所のお婆さんの幽霊を見たことがあるんだって。それ以来、怪談とかホラー映画とか絶対につき合ってくれないの。夏合宿の夜の定番だったのに」
「怖いことされたの?」
「別に……。お帰りなさいって挨拶されただけ。……その時には、もう病院で死んでたんだけどさ」
「ふうん。優しい幽霊じゃない。なんで怖がるの?」
「なんでって……。幽霊よ? 怖いに決まってるでしょ」
「そっかなぁ。害のない幽霊なら別に構わないと思うけど……」
特に美結が会ったというお婆さんの幽霊は、死んだ後も小学生の見守り隊を務めてくれていたのだから、いい幽霊なんじゃないだろうか?
脅かしてくる幽霊を怖いと思う気持ちは分かる。
でも私は、そういう怖い幽霊と同じくらい生きた人間――澱みを噴き出して真っ黒になってしまった人――も怖い。
怖い怖くないは、生死ではなく、その人の心根で判断したいと思う。
「芽生ちゃんは幽霊が見えるの?」
見えないよ、と杏ちゃんに答えかけて、言葉に詰まった。
あの夜追いかけてきた黒い這う人型を幽霊とカウントしていいものかどうか、悩んでしまったからだ。
「芽生ちゃんちの黒猫ちゃんが、そういうのに敏感みたいなの。しょっちゅうなにもない所に視線を向けてるから、私達もつられてそっちを見るんだけどなかなか見れないのよね」
都子ちゃんが私の代わりに答えてくれた。
「……見たいの?」
「ちょっとだけ。興味あるし。ね? 芽生ちゃん」
「うん。興味津々」
「えー、やめてよー。もしかしていつもキョロキョロしてるのって、見る訓練してるんじゃないでしょうね? もし見えたとしても、あたしに報告しないでよ!」
「えー、どうしよっかなぁ」
私がニコニコ笑うと、美結がきーっと怒る。
最近のお昼休みはいつもこんな感じ。
賑やかで、とても楽しい。
お昼休みも後五分を残すばかりになると、もうお終いと咲希がトランプを回収した。
「来週からはトランプはいったん休みね」
「なんで?」
「期末テスト一週間前だから。トランプなんてして遊んでるのを見られたら先生達の心証悪くなっちゃう。――期末テストが終わると夏休みね。みんな予定は?」
「はいはい、わたし部活動! 杏もでしょ?」
咲希ちゃんの質問に、美結が真っ先に応えた。
「そうね。私も部活メインになるかなぁ。親からは、塾の夏期講習に通えって言われてるのよね。美結もでしょ?」
「うん。迷惑かけたから嫌だっていえなくて。芽生は?」
「塾行ったことない。変な噂があったから通いづらくって……。都子ちゃんは?」
「私もないわね。必要なかったし」
「うわっ、こいつむかつく」
「都子ちゃんは美結と違って賢いからね」
私は、ふふんと我が事のようにつるぺたの胸を張った。
と同時に、都子ちゃんの夏休みについて考えていた。
このままだと、夏休みはお祖母さんの家に帰ることになるのではないかと……。
それは絶対に避けたほうがいいような気がする。
家に帰ってから、父を交えて都子ちゃんと話をしようと脳内に予定を刻み込む。
「咲希ちゃんは?」
「私は夏期講習はなし。通常の塾はあるけど。夏休み中はバイトを兼ねて家業の手伝いにいそしむわ」
「家業ってなに?」
「下町の甘味屋よ。あんみつで有名な店なんだけど、夏場はかき氷もやってるから、夏休み中に暇になったら遊びに来て」
「行く行く!」
「よしよし。そうだ。どうせなら皆で遊びに行かない? 遊園地や花火大会とか」
「部活動がない日ならいいわよ」
「グループ作っとく?」
そして皆でトークアプリのグループを作った。
「凄い。普通の女子高生みたい」
「馬鹿言ってないで早くスマホしまいなさい。没収されるよ」
感動してスマホを眺めていた私を、自分の席に戻る途中の美結が注意していく。
慌ててスマホをマナーモードにして学校鞄に仕舞い込みながら、私はまだ喜びの余韻に浸っていた。
――高校生のうちに友達を作る。
それが、私の夢だった。
地平線の向こうに揺らぐ蜃気楼のように遠く儚い夢だと思っていたのに、気が付けば私には都子ちゃんという素敵な友達がいる。
お昼休みや夏休みを一緒に遊んでくれる友達グループもある。
私から友達を奪ってぼっちにしたのが光なら、友達をつくるきっかけをつくってくれたのも光だ。
城崎さんは『神気の卵』と言ったけど、私にとって光はそんな厳かな存在じゃない。
もっとずっと身近なものだ。
光の動きは心の動き。
私には人の心の動きは見えるけど、自分の心の動きは見えない。
気持ち悪がられたから、そっぽを向かれたからと、私はずっとぼっち街道を邁進してきた。
思い返せば、自分から遊んでと手を差し伸べたことがあるのは、あの男の子だけだ。
幼稚園時代、都子ちゃんと二時間だけ友達になった時も、近付いてきてくれたのは都子ちゃんだった。
その後、嘘つきと言われて背中を向けられても、私は自分から手を伸ばすことをしなかった。
やっぱり駄目なんだと、諦めていただけ。
きっとその頃の私の光は、みんなに近付くことを諦めて少し離れたところでふ~らふ~らと弱々しく漂っていたに違いない。
でも今は違う。
私は自分から都子ちゃんに声をかけた。
美結や咲希ちゃんや杏ちゃんにも、自分からすすんで関わっていった。
そして今、きっと私の光は都子ちゃんの髪にぴとっと慕わしげにくっついたり、咲希ちゃんや杏ちゃんの目の前でくるくるっと踊ったり、美結にガッツンガッツンぶつかっていったりしているんだろう。
光の動きは心の動き。
私の光は、今とても元気だ。
読んでいただいてありがとうございます。
生き霊の話は解決しないまま後半まで引っ張ります。
次話は、友達ができた芽生、次は恋に興味津々w
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