表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/25

依頼(e)

そのあと深神は、千代があとから持ってきた分の砂糖もすべて紅茶に沈めると、それをすべて飲み干した。

さらに萌乃が持ってきたお茶菓子も一口でぺろりと平らげた深神は、ようやく満足げに「ふうむ」、とうなった。


「しかしです、盗難事件となると、本来ならば警察の仕事なわけですが」


深神の言葉に、千代はため息を吐いて首を横にふった。


「警察には話が通じませんし、なにより頼りないんですもの。

お願いします、深神先生。どうかあの絵を取りもどしてください」

「どうやら、よほど大切にされていた絵画のようですね」

「夫はあの絵を大変気に入っておりました。今では形見のようなものなのです」


深神は千代の言葉にうなずいた。


「まあ、本音を言ってしまえば、サバトの絵画がらみの事件は、個人的にも大変興味深いものでしてね。

その絵について、くわしくお聞かせ願いますか? まず、サバトの絵画を入手することは、簡単ではないはずですが」


しかし千代は、ふたたび首を横にふった。


「それが……私にもわからなくて。

夫がある日、あの絵をとつぜん持ち帰ってきて、自分の書斎に飾ったものですから」


千代は遠い日を思い出すかのように、目を細めた。


「あの日から夫は、その絵をじっとながめていることが多くなりました。

それこそ私が声をかけるまで、飽きずにずっと」

「絵画の写真などは?」

「残念ながら……、でも、タイトルはわかります」


千代が深神を見つめて言った。


「"山葡萄やまぶどうのレクイエム"。あの有名な"オレンジのラプソディ"と対になる絵だと聞きましたわ。

そして夫は、そこに描かれていたイヌの姿がナキオ……うちで飼っているイヌと似ていたから持ってきたのだ、と」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ