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報告(b)

ピンポーン。

その時、玄関のチャイムが鳴った。


(助かった……!)


しかし、腕を捕まれたままの萌乃は、その体勢から動くことができない。

萌乃は身じろぎをして、訴えた。


「お、おじさん、はなして……」


しかし、倉永は力をゆるめない。


「いいじゃん、放っておけば。ね?」

「ダメだよ……!」


ピンポーン。

二回目のチャイム。


萌乃が叫ぼうと息を吸ったところで、倉永に口を手でふさがれた。


「……こんなにはやく帰ってくるなんて、ちょっと予想外だったな」


倉永が萌乃を見下ろしたまま、そう言った。


萌乃は考えた。

家の外にいるのが自分の母親ならば、カギを開けて入ってきてくれるだろう。

異変を感じたのなら、自分の名前を呼んでくれるに違いない。


しかしそれがないということは、

チャイムを押しているのは、もしかすると母ではないのかもしれない。


まさか、ひいちゃんが?


ぎり、と萌乃は歯を食いしばった。


……どんなことがあっても、ひいちゃんに助けを呼ぶことだけは、できない。

だって彼女は、ナキオを殺した犯人なんだから。


+++++



葵家のチャイムをしつこく鳴らしていた深神は、うしろから追いついた千代に声をかけた。


「奥様、早くカギを開けてください」

「え? え? はい……」


状況をまったく飲みこめていない千代は、深神にうながされるままにカギを刺しこんだ。

しかし、扉は数センチ開いた所で、ガツンとなにかに引っかかって止まった。


千代は扉の隙間から、なかをのぞきこんだ。


「なぜかしら? チェーンがかかっているわ……」

「退いてください」


深神は言うと片足を振り上げ、ドアを思い切り蹴り飛ばした。


バコン。

景気の良い音とともに、チェーンが取付金具ごとはずれて床に落ちる。


あぜんとしたままの千代をよそに、深神はそのまま葵家へと入っていった。


「みかみ先生!」


リビングルームに姿を現した深神に向かって、萌乃が叫んだ。

倉永はようやく、萌乃を拘束する手の力をゆるめてふり返った。


そのすきに、萌乃は倉永の手をふりほどくと、

真っ先に深神の元へと駆け寄ってしがみついたのだった。

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