プロローグ 幸薄
インフルエンザインフルエンス
空を見上げると満月が傾き始めていた。
今日で森の中をさ迷い続けて9日になる。
疲労と空腹で体はボロボロ。
もうそろそろ限界がくるだろう。
改めて思い返してみるとリアルでもこの世界でも幸薄だったなと思う。
5歳の時、3歳の妹を病気で亡くし、翌年父親が事故死、その3日後母親が自殺した、いや幸薄なわけじゃなくて回りにいる人が死んでいく特殊能力か、まあどうでもいいや。
どうせここでも奇跡なんて起こるわけもなく、一人静かに息をひきとるのだろう。
若干鬱気味になりながらも歩き続ける。
だが、2時間ほど歩き続け日が上ってきたその時!
奇跡が起きた!
道に出たのだ!
山道だが踏み固められているところをみると、定期的に馬車が通るのだろう。
これだけでも十分奇跡なのに更に奇跡は続く。
ちょうど馬車が走って来たのだ。
「やったぁーー!!おおおい!!」
こちらに気付いたのか、御者が馬を止めてくれた。
そして幌が持ち上がり馬車の中から人が出てくる。
やった!これで助かる!ぞ?
「ん?」
なぜか出てきた人は全身黒づくめで手には剣を持っていた。
「こんにちはー、あはは」
挨拶しても返事は返ってこず、その代わりにどんどん近付いてくる。
やっべーのを察した俺はゆっくりと後ずさりをして、しまいに走り出した。
ただ走る体力なんてほとんどの残ておらず、すぐにおいつかれる。
なんでこのゲームの製作会社はこんなシステム作ったんだよぉーーー!!!
次の瞬間。
ガツッ!
バタ
やっぱり不運だった。
~~~~~~
ガタガタガタ、ゴツッ!!
「んっふ!!」
いった!
なんかで頭ぶつけた!
どうなってんだよ、口には猿轡されてるし、手と足は動かないし。
しかもなんか揺れてるし。
わかんないけどさっきの馬車の中なのだろうか。
目をあけて状況確認をするがまぶしくてよく見えない。
少しずつ目を光に慣れさせてやっとはっきりものが見えるようになった。
すると目の前に見えたもの、それは太い足だった。
目を上に動かしてみるとおっさんが座っている。
恐らくさっきの黒ずくめの中の人だろう。
ヤバイな。
だってこれあれでしょ、奴隷商人。
終わったじゃん。
逃げることもできないし、だからと言って装備なしで戦うこともできない。
うーーん。
悩み唸っていたその時。
ガタガタッ、ゴツッ!!
「ンッフ!!」
いった!!
また頭をぶつけた、くっそ!何なんだよ!!
激突と揺れで三半規管はボロボロ。
目の前が歪んでくらくらする。
だが揺れが止まっていることには気が付いた。
馬車が急停止したのだ。
すると男が。
「おい!どうしたんだ!」
御者台に向かって怒鳴る。
「倒木だってよ」
それを聞くと男は舌打ちをし馬車から出ていった。
チャーンス!!
今だったら逃げ切ることが出来るだろう。
服の裾に隠してあった小刀で縄を切り、落ちていた自分の装備を回収する。
幌の隙間から御者台の方を見るともう一台同じ馬車が止まっていて、その前に数人の男が立っていた。
全員こちらに背中を向けている。
幌を持ち上げて音をたてずにコッソリと馬車から飛び降り、森へ逃げ込もうとした時。
「ぐぅ」
お腹が鳴った。
状況が状況でお腹が減っていることを忘れていたのだが、逃げ切れると安心したら思い出した。
恐らくだがこのまま逃走しても餓死するだけだろう。
そこで作戦変更。
食料を奪ってから逃げることにした。
自分が入っていた馬車には食料は入っていなかったので、あるとしたら前の馬車だろう。
倒木をどけている男達はこちらに気づく様子はない。
馬車に近づき幌を持ち上げて中を確認すると······。
白いふわふわした何かが中を埋め尽くしていた。
「な、なんだこれ」
ツンツンしても動かないしただの羽毛なんだろうか。
もしかして奴隷商人じゃなくてベッド職人だった?
なわけないよな。
まあ羽毛が食えるわけでもないので跨いで食料を探す。
すると後ろから小さな寝息が聞こえてきた気がした。
だがふりかえっても誰もいない。
本当に気がしただけだったようだ。
食料探しを続行する。
するとまたしても後ろから小さな寝息が聞こえた気がした。
いや、気がしただけじゃない、絶対なんかいるぞ。
だが後ろには羽毛しかない。
ということは羽毛の中に何かが潜んで居るのだろう。
少し探してみることにした。
なんでこんな状況でこんなことをしてるんだろうか。
絶対に自分に利益はでない。
ただもしこれで本当に人がいたらどうだろう。
その人には奴隷になる未来しか待っていない。
だとしたら助けないといけないなと思う。
それが俺の信念だ。(キラッ)
実際こんなこと思ってないけど、でも実際助けが必要な人がいたら助けようと思うし助ける努力をする。
羽毛をかき分けると奥のほうに白い布がみえた。
服だろうか?
触ってみると温かくそれが生き物だということを示している。
もっと羽毛をどけようと羽毛をつかみひっぱる。
すると沢山の羽毛が固まって付いてきた。
仕方ないのでその塊ごと掴んで上へ持ち上げる、するとそれが翼の形をしていることに気が付いた。
変だなと思いながらもそれを邪魔にならないところに下ろし、もともとそれが被さっていたところに目を向けたその瞬間、これまでにないほど絶句した。
そこには少女、といっても同じ歳、14歳くらいの女の子の顔見えていた。
薄いクリーム色がかった綺麗な白髪、美人というよりも可愛いといった方がいい整った顔だち。
女の子が中にいただけでもビックリなのにさらに驚くことがあった。
背中から翼がはえていたのだ。
要するに、さっき掴んでいた羽毛はこの子の羽ということになる。
背中に翼で思い当たる点があったが今はそれどころではない。
翼を踏まないようにして馬車の入り口側に立ち少女の腕の下から自分の腕を通して羽交い締めにする。
翼が邪魔だったがなんとか馬車を出ると全力を振り絞って森の中を駆け出した。
まつるとは別人が書いてます。
初投稿なので語彙と文法が大変なことになっておりますが、どうかお許しください。
投稿ペースは1週間に1話投稿投稿出来るように頑張ります、気長にお待ちください。
それでは今後もよろしくお願い致します。