フカツユイ
「もっと刺激的な話なら退屈しないんだけどね。」ユイは頬杖をつきながら僕に言った。
僕とユイの出会いは一年生の6月だ。ジメジメして、雨の日だった。
大教室で僕らは経済学の授業を受けていた。今まで僕はユイと話したことはなかった。
「タガワ君でしょ?あら?私のこと分かる?」
「フカツさん。だよね?ゼミ一緒じゃないか。」
「そりゃそうだ」ユイは笑った。
続けて、一緒に受けていいと聞いてきたので、僕はもちろん。と答えた。ユイの友達がもうこの授業には来ないらしいので、僕に声をかけてきたのだ。大学生にはよくあることだなと僕は思った。
半分経済学の授業を聞きながら、僕はユイと話した。授業のこと、アルバイトのこと、家のこと。兎に角色々だ。
16時に終わるはずの授業だが、15時50分くらいに終わった。
「ね、ね、来週も出るでしょ?」ユイが聞いてきたので、僕は頷いた。
それが「約束」というわけではないが、僕らにとっては指切りしたように思えた。
「来週もフカツさんと一緒に。」
うん。悪い気はしない。僕は心からそう思った。
そうして僕らはさよならをした。僕はそこでユイと話したのが嬉しかった。けど、来週経済学の授業が休講なのを思い出した。教室の入り口に立っていると、男女複数のグループに邪魔くさそうに睨まれたので早々に外に出た。駅まで歩いている途中、雨が降っていた。僕は傘を開くか悩んだが、ささずに駅に向かった。