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魔女の選定  作者: ごぼうし
導入
3/4

昔話

ーむか〜しむかしのお話。


今では私と国の偉い大人しか知らないお話。トラルスは確か10歳くらいだったなぁ。


「僕よりちょっとだけお兄さんだね。」


あー、そうだな。......おい、ちゃんと目は閉じとけよ。



あの頃は国そのものが若かったからな、貴族の力関係?ってのがあやふやだった。成り上がるには絶好の時代だったって事だな。貴族どもは娘を次々と3代目の.......え〜.........


「バレルタ王?」


そうそう、そのババアダ王に輿入れさせたのさ。


「バレルタ王だってば。」


だからそう言っただろ。

ーバレルタってのがダメなやつでな、40人くらいになったお妃に手当たり次第手をつけやがって、子供がポンポン生まれた。王子が13人、王女が10人だ!


「ねえ、ディア。」


何だ?


「あかちゃんはどうしてできるの?」










「ディア?」











とにかく、あの時代に王子が13人ってのが問題だった。貴族らはみんな自分の孫を次の王に据えようと必死になった。そして権力争いでどろっどろの王子同士の醜い蹴落としあいが始まった、その中の第7王子が私の今は亡き友、トラルスってわけだ。





......寝たか?


「ぜんぜん。」


聞いてて楽しいか、これ?

ーふぁーぁあ〜....私の方が眠くなってきたんだが.....


「寝ちゃダメだよ!僕が寝るまで聞かせてくれるんでしょう?早く!続き‼︎」


........絶対私よりたち悪いぞ、お前...。





ートラルスはいい友達だった。ただ、人がよすぎて他人を疑わないというか.....とにかく、王位継承だとか騙し合いだとかの駆け引きがとことん向いてなかった。あぁ、そういう所とか、能天気で抜けてるところとか、トイムにそっくりだったぞ、くくくっ。


「......フクザツだなぁ。」



普通なら第7子なんか争いとも無縁に生きられたんだろうが、運がいいのか悪いのか、トラルスは正妃が産んだ唯一の王子だった。抜けたやつだが正当な後継者として王位に就く可能性もゼロじゃない、それなら障害は早めに潰しておこうってんで、かわいそうにトラルスは兄王子全員から真っ先に命を狙われることになったのさ。ま、本人は死ぬまで後継者争いなんてもんがあったことにすら気づいてなかったけどな。


トラルスを一番疎ましく思ったのは腹違いの兄にして側室の子、第1王子だ。名前こそ憶えていないが、高慢かつ小心者、小者を絵に描いたようなニンゲンだった。トラルスが後継者の候補に入っていると知った途端に、10ほど年下の弟を真っ先に殺そうとした。


「第1王子って、確か若くして病気にかかって死んでしまった人だよね?」


いや、あれは.......あ〜、そうだったかな。

ー何せヤツは小心者だったからな。万が一にも暗殺の首謀者が自分だとバレないように警備の薄い城外で、しかも他殺の証拠を残さずにトラルスを始末しようとした。

ヤツの計画はこうだ。トラルスを呼びつけて、自分の代わりに内密に暗い森を越えた国の辺境の村を視察してきて欲しいと頼む。屈強な兵士と信頼する家臣をお供につけるから安心して行ってきてほしい。これは王様から受けた密命だから誰にも見つからずに城を出て欲しい、とか何とか言ってな。お人好しのトラルスを騙すのはさぞかし簡単だったろうよ。

トラルスが誰にも見つからずに城を出れば暗殺は終わったようなもんだ。自分の家来どもがトラルスを森に置いて帰ってくるのを待って、後は適当に貧困街のゴロツキどもを見繕ってトラルス王子誘拐の罪をでっち上げればいい。餓死なら自分が手を下した証拠も残らない。第1王子の完璧な暗殺計画はつつがなく進行し、トラルスが城から消えて2週間も経った頃にはすっかり死んだことにされちまってた。







「おーい、トイム。目は閉じろって言っただろ。」


「こわ、怖くて目なんか閉じられないし、そもそも眠れないよ......というか.....え...??.....何、このお話。ぼく、ディアとトラルス王が友達になったのはどうしてって......ディア!笑えない冗談はやめてっていっつも言ってるじゃないか!どうしてそんなウソつくの、ふ、普通に話してよ⁉︎」


「嘘じゃねーよ。トイムが“本当の”私とトラルスの出会いの話を聞きたがるから最初から丁寧に説明をだな.......」


「えっ....え?今の、ディアの作り話じゃないの?さっき読んでくれた昔話に似てたから、僕てっきり.......」


「今の私の話を昔の偉い人がちょこちょこっと書き換えたのがあの昔話だな。美談にしたもんだろ?ははは。」


「わ、笑い事じゃないよ⁉︎ディアの話が本当ってことは、つ、つまり..........ひっ!!!!!」


「お?どうしたトイム、顔が青いぞ?アラムルの花みたいな色してる。」



「......ぼく、さ?このお話、聞いても良かったのかな......?」


「あー、私は昔、偉そうな奴に決して口外してはならぬ!って言われたことあるぞ。ひとに話したのがバレたら消されるらしいから、2人だけの秘密にしとこうな?へへっ。」


「へへっじゃないよ!話しちゃまずいやつじゃないか!なんでそんなことさらっと話しちゃうんだよ、先に言ってよ、ディアのバカ!大バカ‼︎」


「お、お、大バカ.....だと.....!!? あ、おい暴れるな!いってぇ‼︎......わ、悪かった、わるかったよ!もうここで止めにする。2人で寝れば怖くないだろ?」


「それは....ダメ。」


「は、はい.....⁉︎」


「どうせ聞いちゃったらお終いまで聞かないと気になって眠れないよ。ディアのせいで眠気も吹き飛んじゃったし、ちゃんとセキニンとって最後まで話してよ。じゃないと明日遊んであげない。」




「トイム......」


「なに?」




「お前は......本当に...........おもしろいやつだなぁ。」





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