ある夜
「ーめでたしめでたし...っと。よし!トイム、もう気が済んだだろ。もう寝よう?な?」
「ーねぇ、ディア。このお話の悪い魔女って、ディアのこと?」
「はぁぁ?.......おいおい、私が一度だって悪い事したことあるか?え?」
「今はいい魔女になったって、お話に書いてあるよ。......うーん、でも僕、ディアが国を守ったり、お仕事したりしてるところ一度も見たことないよ。僕と遊んでない時はずっとごろごろしてるの、僕知ってるよ。」
「そうだっけかなぁ。」
「.....魔法だって、僕と遊ぶ時以外で使ってるの見たことないし.....ねぇ、ディアって本当にすごい魔女なの?」
「あったりまえだ」
「じゃあさ!本当に兵士をカエルやクモやヘビやコウモリに変えたの⁉︎そんなことも出来るの⁉︎」
「ふふん。まぁな、それくらい私にかかればあくびしてても出来るぞ。...あー、ただ、言っておくが私は兵士なんぞにそんな下らん魔法をかけて遊んだ覚えはないぞ。」
「えぇ?でも、悪い事したからトラルス王に斬られたんでしょ?....やっぱり痛いの?どの辺を斬られたの?聖なる水晶の剣って、どんなのだった?」
「ちょ.....馬鹿言え!トラルスは私の友達だぞ⁉︎友達に斬られてたまるか。」
「ええ?友達?」
「それに、聖剣って言ってもな....あいつそんなの持ってたか...? 2人で、カルの木の枝を折って振り回して遊んでたのは覚えてるんだが、もしやそれのことか.....。」
「ちょ、ちょっと待って!それだとお話と違うよ。」
「ま、お話はお話。都合の悪い事は美談にでもして隠しちまいたいものさ。おぉ!大人は汚いねぇ、怖いねぇ。トイム、お前も気をつけたほうがいいぞ?」
「....そのわざとらしい身震いやめてよ......。じゃあさ、本当はどうだったの?」
「.....あ?」
「だから、本当はどうやって僕のご先祖様とディアは友達になったの?」
「.......もしもしトイムくん。お前、これ読んだら寝るって約束しただろ。」
「ねー、お願い!聞いたらちゃんと寝るから!ね?」
「........ったく、仕方ないな。明日起きられなくてもほっとくからな‼︎.........ええっと........じゃぁ.........................そうだな...................よし........むかーしむかーし.....」
「ベタな始まり方だね」
「黙って聞いてろ。」