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序
レオンは美しい人でした。天使ようなの清らかさと高貴な威厳。白い花よりもなお優美で繊細で、薫り高い人でした。わたしはいつもうっとりとレオンに見惚れていました。レオンは誇り高く、大きな志の持ち主でした。花弁のように優しく紅い唇から洩れるのは、絶対のものを欲する言葉。その言葉はいつも人々の心を動かしてきました。
わたしはレオンを心から愛しました。けれどもレオンはもういません。レオンは断頭台で死にました。三十にもならぬ若さで、二十七歳にあと一月の若さで、その生を終えました。月の雫のようだったあの人は重い刃が落ちたとき、血に彩られ、夕闇の中、生きているときよりもなお美しく、蒼白く、その顔を輝かせたに違いありません……。