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 家に帰ると急いで着替えを済ませ、まとめてあった荷物を手に持って飛び出す。駅に戻って電車で三駅、十分弱で降りると、駅にはナナが迎えに来てくれていた。

 手を繋いで夜道を五分歩く。

 残念ながら叔母さんは帰って来ていなかった。よって今夜は二人だけだ。

 前日から仕込んでおいてくれたという料理を楽しむ。ナナの料理は本当に美味しくて、ついつい食べ過ぎてしまう。付け加えるとエプロン姿もかわいい。

 食事の後も勉強なんてする気になれずに、楽しくおしゃべり。ルリは普段は無口だけれど、おしゃべりが嫌いなわけじゃない。自分の話でナナが楽しそうに笑っているのを見ているだけで、幸せな気分になる。

 叔母さんが冷蔵庫に山と詰め込んでいる缶カクテルを一本拝借したためか、ナナがルリの肩にしなだれかかってくる。長い睫に飾られた瞼が下ろされた横顔は、ただただ美しい。少し上気した柔らかな頬に、ゆっくりと唇を近づけていく………


   そんなことは全く無い!


 まず駅に迎えには来ない。私のような美少女がカッチンのために、一人で夜道を歩いていくなんてリスクは犯せない、ということだ。

 家に着いたらすぐに勉強開始。食事は勉強しながらでも食べやすいようにサンドウィッチ。コンビニで買ってきたものではなく、具材は自分で調理したものであり、それはそれで美味しいのだが、物足りないのも確かだ。

 しかしそんなことに不平をもらす余裕は与えられない。ナナの教え方はスパルタだ。ゴリゴリと数をこなすことをひたすら要求してくる。教え方が上手いなんてことは全くなく、ひたすら問題集をやることを押し付けられる。

 まさに特訓である。

 ちなみに予習復習をかかさないナナの成績は、中の上ではあるが、学年上位に名を連ねるほどではない。

 ルリが普段、勉強を怠り過ぎているのだ。

 できの悪い生徒にノルマを与えつつ、自分の予習復習を済ませる。ナナは特に試験勉強はしないらしい。普段の予習復習で取れる点数だけで十分ということだ。

 ナナはルリを残して美容体操を始める。ルリが泊まりにくるたびに体操の内容は変わっている。ビデオを見ながら行っていることも多いが、今日はビデオも本も見ずに、基本的なストレッチをこなしている。息の具合から考えると、特殊な呼吸法が売りのストレッチなのかもしれない。

 体操が終わると次はゆっくりと風呂に入る。もちろん一人でである。ナナが風呂に入っている間もルリはさぼることはできない。与えられたノルマを達成できていなければ、冷たい目線とため息を浴びせられるのだ。

 ミッションコンプリートできていても褒められることはない。すぐに風呂へと追い立てられる。

 ナナの長風呂に比べれば、ルリの入浴時間は短い。湯船にぷかりと浮いた大きな乳房を自分の腕で抱きしめる。

 風呂から上がると、ナナはテレビの前のソファに座り美顔体操をしていた。その前には化粧水や乳液が並んでいる。ルリは隣に腰を下ろす。

 テレビはニュースにチャンネルが合わされていた。ナナはあまりテレビを見ない。ヨガや体操、エクササイズのビデオを流していることが多い。後はニュースを見ているぐらいで、バラエティや音楽番組を見ていることはない。たまに映画のDVDを借りてくるらしい。

 美しい顔をぐにゃぐにゃと変形させている様を、ルリはぼんやりと眺めていると喉がかわいてくる。

「ミルクをもらう」

 グラスになみなみと牛乳を注いで戻ってくると、ちょうどスポーツコーナーが始まるところだった。セリーグではクライマックスシリーズ進出の最後の一枠を巡って三チームがデッドヒートを行っており、それに関する話題がメインだった。食い入るように見つめる。

 スポーツコーナーが終わるとナナはすぐにリモコンでテレビの電源を落とす。

「早く髪を乾かしてきて。寝るわよ」

 睡眠不足は美容の敵、ナナの夜は早い。今夜はこれでもルリに付き合って、遅くまで起きている方だ。

 ルリが髪を乾かし、歯を磨いてからナナの部屋へ行くと、ベッドの横に布団を敷いてくれていた。始めて泊まりにきた時は同じベッドで寝たのだが、ルリが寝ながらナナを力強く抱きしめてしまい、それからは別々に寝るようになった。

 ガールズトークなどする間もなく電気が消される。心地よいアロマの香りが漂っている。

「文佳さん、帰ってこなかったな」

「いつも遅いけど金曜日特に遅いわね。飲みに行っているみたい」

「合コン?」

「そんな良いものではないと思うけど。合コンがいい物かどうかはともかく」

「文佳さんはもてそうだよな」

「カッチンは文ちゃんを過大評価し過ぎてるわ」

「そうかな?」

「そうよ。明日もしごくんだから早く寝なさい。おやすみなさい」

「お手柔らかに。おやすみ」

 沈黙が続くとすぐにナナの寝息が聞こえてくる。それを子守唄代わりにしながら、ルリも心地よい眠りに落ちていった。

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