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青いバラの花言葉は……ご存じでしょうか?

 慈善事業は、寄付だけではいけない。

 寄付金をどのように運営されているかも、多額の寄付をした企業はチェックすることが大切である。

 そうしないと……。


 琉璃りゅうりは、リムジンを降りると門を見つめる。


 物心ついてから、ずっといた施設である。

 他の企業に手を回され追い出された場所であり、琉璃の姿を見て、職員や子供たちが顔色を変える。

 琉璃は名前は日本名だが、完全に容姿は母似であり、その点でも意地悪をされていたし、それを見て見ぬふりをしていた大人たちは青ざめている……。


「大丈夫?」


 りょうの問いかけに、光華こうかをだっこした琉璃は、婚約者である亮の手を握る。


「大丈夫なの。頑張るのよ。琉璃」

「そうだね。頑張ろうね?」


 手を繋いだ二人は、今日のメイン歌手である琉璃の義母の瑠璃るりこと『貂蝉ちょうせん』の後ろを歩く。

 子供たちの視線は琉璃に注がれ、ふと一人が声を張り上げる。


「化け物!!ちび!!帰ってくんな!!」


 すると、その意見に勢いづいたのか、


「そうだそうだ!!青い目、泣き虫!!」

「ほほぉ……貴方方は、私の姪をこんな風に苛める所に、押し込めていたと言う訳ですか……」


その声に子供達が振り返ると、琉璃と同じ髪の色と同じ瞳の色の紳士が数人の護衛達と、眉を顰める。


「ロウディーン公主殿下!!いえ、それは……」

「何でしょう?今見ている、物語るものが証拠でしょう?琉璃」


 手招きをされ、てててと伯父に駆け寄ると、ロウディーンは抱き上げ額と両頬を口付ける。


「琉璃に幸せが舞い込むように…私の国は春の国。花々が咲き誇る美しい国。琉璃は、故郷に帰るんだよ。私と」

「おじしゃまと?」

「そうだよ。琉璃は光来こうらい家の子供であると同時に、伯父様の次の当主になりうる後継者の一人だからね。ちゃんと勉強をしなければ……」


 初耳の話に亮は愕然とする。


「あ、あの!?公主殿下!!そんなこと……」

「昨日、話し合いをしたんだよ。琉璃は国で守る、育てることになった。光来家と国の発展に貢献する人材に、国には手付かずの鉱山がある。その採掘権の半分を琉璃に譲ることになった。そして……」

「音楽院を作ることになりましたよ。院長兼公国の専属の歌い手として、瑠璃どのを招きました。その一期生として、姫様と諸岡珠樹もろおかしゅじゅどの。それと最先端の技術を取り入れ、後の国にとって有益な存在の育成を。それは、諸岡瑾瑜もろおかきんゆどのにお任せしています」


 ヴァーセルはニコニコと微笑む。

 裏では胃痛に苦しむのだが、表向きと言うか、少々腹黒い主の補佐兼その不足を補う役目をしているらしい。

 そして、ヨージュが、


「あぁ、亮……亮どの。紹介する。来い……彼が、このヴァーセルの弟のリフォーンだ。ハッキリ言ってまだ動けないアホだ。だが、兄と同じで生真面目さだけはある。一応、大丈夫だと思うが、姫の護衛として着くことになっている。一緒にいることが多くなる、仲良くしとけよ」

「は、はぁ!?一緒……と言うのは……!?」


長身過ぎる亮より、頭一つ低い凡庸な印象の青年が頭を下げる。


「初めまして、諸岡さま。リフォーンと申します」


 20才の亮よりも、歳上の様付けに、亮はハッキリ言って引く。


「すみません。歳上の貴方に……って、ちょっと待って下さい?リフォーンどのと言うと、園芸の世界で『緑の手』を持つと言う、現代の最も優秀な庭師と言われている方ではありませんか!!」

「いえ、趣味です」


 真顔で青年は答え、兄のヴァーセルは溜息をつく。


「申し訳ない。リフォーンは、本人の自覚あるなしに関わらず、何かをすると新種の花を作ってしまう、訳の分からない体質をしているんだよ」

「はぁ!?そんなこと……あるんですか!?」

「はぁ……そうですねぇ……一回だけ、どうやったか覚えてませんが、一輪だけ青いバラを。いまだにどうやったのか思い出せなくて……残念です」


 心底、その趣味が大好きらしい青年の声に、一種の天才がここにもいたのかと溜息をつく。


「で、姫様の温室にも沢山のお花を、手入れさせて戴きますね?、一応、護衛と、執事も兼務となっております」

「執事!!」

「はい。私の一族は元々、公主家の家令の家系です。長兄のウィンセルがその任に。次兄のヴァーセルは、執事には無理がありまして……」


 亮が見ると視線をそらし、


「申し訳ない。私は内政等、政務は得意だが……執事としてのちょっとした反応に対応できず……」

「と言うより、基本不器用なんですよ。ヴァーセルは。神経質のわりに」


ロウディーンのバッサリな一言に、グサッと傷つく。


「わ、私だって……何とか、お茶を!!姫様に!!」

「無理ですね。ついでにヴァーセル?可愛い琉璃に不味いものを食べさせないように!!分量をきっちり計って作ったものが、何で壊滅的な悪臭を放つものになるんです?」

「わ、私にも解らない!!から困ってるんだ!!何で!!リフォーンは器用なのに!!私は!!」


 ヴァーセルは嘆く。


 亮は思う。

 このヴァーセルは、弟と逆に不器用、それと完璧主義者のため途中で考え始めて、その形容しがたいものが生み出されるのだと。


「で、琉璃の婚約者として、君には色々よろしくお願いするよ?一応、琉璃が寂しがるといけないから、短期の海外訪問等は、琉璃以外とは行かないように。長期的なものに行っても良いけれど……」


 にやぁ……


ロウディーンの黒いオーラバリバリの微笑みに、亮は、


「ご、ご安心下さい。私はある程度の論文を纏める為に幾つかの研究所を回った後は、公国に滞在して、兄の補佐や瑠璃さまの助手として動きますので……宜しくお願い致します」

「ありがたい。では、琉璃?伯父様はお話がある。琉璃は舞台の裏に亮殿といなさい。いいね?」

「あい、おじしゃま。だいしゅき!!」


琉璃は伯父にキスを返すと下ろして貰い、とことこと亮の側に行き手を繋ぐ。


「にーしゃま、いこう?琉璃、一杯緊張なの」

「それは大変だ。じゃぁ、リフォーンどの。行きましょうか?」

「リフォーンで結構ですよ?」

「それはダメです。琉璃?このお兄さんは?」


 琉璃は首を傾げるが、すぐに、


「んっと……リフォーンおにいしゃん!!ヴァーセルおにいしゃんの」

「琉璃もそう言っています。ですので、どのも堅苦しいですし、さん付けで宜しくお願いします」

「解りました。では、姫様、亮さん。ご案内致します」


進んでいく……その道が、吉と出るか凶と出るか……それは運命の神ですら解らない定め……。

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