表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
last letter  作者: level 43
4/22

第4話 引きこもり

君との死別に立ち直れず、暫くの間、部屋に引きこもる自分。

やっとの思いで外出した矢先、君の母親から電話がかかってきたのだった。

 君の告別式から数日間、僕は何もする気が全く起きず、俗に言う引きこもり状態になっていた。

 どちらかと言えばアウトドア派で、新しいモノ好きな僕は、以前なら2日間も外出しないと、身体がむず痒くなってきて、何かしら名目を付けては外出していた。

 それなのに今の自分は、情けない程精神的に落ちていて、僕が最も嫌いな僕になっていた。


 煙草の本数だけが増えていたせいか、お気に入りのステンレス灰皿がまるで、食傷気味だと言わんばかりにテーブルの上に淋しく佇んでいた。

 そのせいもあって、いつも小綺麗にしている8畳程の部屋には、むせかえる様な煙草の香りが充満していた。

 耐えきれなくなったのか、外の新鮮な空気を欲して、ようやく窓を開け換気をした。

 少し熱目のシャワーをいつもより長く浴びた後、今にも溢れ出しそうな吸殻を片付け、勿論その灰皿も流しで綺麗に洗い、定位置であるテーブルの真ん中に置いた。 そして本当に久し振りに外に出たのだった。


 雲一つなく、文句の付けようがない程のいい天気だったが、数日の間、引きこもりをしていた自分にとっては贅沢な話だが、少し迷惑に感じられた。

 外出したのはいいけれど、何の宛も無く、それでいて何かしらをしたい訳でもなかった。

 ふとお腹の虫が鳴いている事に気付いた僕は、とりあえず駅前のたまに顔を出す、小洒落たカフェに向かう事にした。


 店内はアイドルタイムだった事もあって、明らかに空席が目立っていた。

 奥にある大きなガラスに仕切られた喫煙席に座り、考える間もなく僕はカルボナーラとカフェラテを小声で注文した。

 煙草に火を付けたまではよかったが、空腹だったせいか、一口で気持ち悪く感じ、すぐに手入れの行き届いたガラスの灰皿に押し付けた。

 程なくして注文していたカルボナーラが目の前に到着した。

 僕の好物であり、かつ空腹も手伝ってか、ものの4、5分であっさりと完食した。


 やっと空腹感が消え、気持ち悪さも無くなった僕は、少し満足気に食後に届いた冷たいカフェラテを一口飲んだ。

 また煙草を吸おうかと思ったが、意味はないけれど、ただ何となく吸うのを止めた。

 その代わりという訳ではないが、もう一口カフェラテを飲もうとした瞬間、デニムの右ポケットに窮屈そうにしまわれていた携帯がバイブレーションと共に、控え目な音量で鳴った。


 ディスプレイには見知らぬ番号が表示されていて、一瞬躊躇ったが、小さな勇気を出して電話に出てみた。


 か細く、それでいて透き通った声の女性は、そう、君の母親だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ