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last letter  作者: level 43
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第13話 君との足跡

戸隠を十分満喫した僕。

でも何だか物足りなさを感じ、別の君との思い出の地を目指して車を走らせて行く。

 趣がありかつ歴史を感じさせる店内は、数年前と何ら変わる事はなかった。

 全部で5人程の先客がいたが、以前訪れた時に比べれば目に余る空席。

 やはり閑散期だからか、と自分なりに解釈しつつ待つこと数分、幾度となく食した事のある、美しく水々しい蕎麦が運ばれてきた。

 空腹に耐えきれぬ僕は、何の躊躇いもなく運ばれてきたその蕎麦を手繰り始める。

 

 相変わらず美味い


 勿論空腹が最大の調味料になっている事も否定出来ない。

 だが、コシがありかつ鼻に抜ける蕎麦の香り。

 新蕎麦の時期では決してないが、それでいてもこの風味。

 辛味大根のツンと鼻にくる辛さもまたいい。

 僕はあっと言う間に一人前をたいらげた。


 愛想のいい店主に会計を済ませ、軽く会釈をし店の外へ出る。


 やはりここに来て良かった


 そう思った。 

 出来る事ならやっぱり君と来たかったと無理難題な事を僕は思った。


 さっき降りてきた石段を今度は登り境内を眺めつつ車に戻ってきて、車のエンジンを掛け、煙草に火を付けながら考える。


 次は何処に行こうか?


 折角長野まで来たのに、蜻蛉帰りは勿体無い。

 そう思った僕は、以前君と一緒に行った場所を思い出そうとしてみた。

 しばらく考えた後、ふと2人でよく行った温泉の存在が頭の中をよぎる。 左腕にしてあるオメガを確認してみるとまだ12時にもなっていない事に気付く。

 ここ、戸隠からではかなり距離があるけれど、時間もまだまだ早い。

 そう思った僕は戸隠神社、そしてうずら家に別れを告げ、かなり遠い思い出の温泉へと向かう事にした。


 

 新緑のすがすがしい空気がこの上ない程心地良く、車の窓を全開にして走っていた。

 目と鼻を突く排気ガスまみれの都内では、決して窓を全開にする事など皆無であるが、ここではそれが当たり前の様に出来る。

 それがまた尚更気分を心地良くさせ嬉しかった。


 苦手な七曲を慎重に下り、ようやく市街地に戻ってくる事が出来た。

 別に急ぎの旅ではないから、下道をひたすらに走っても構わなかったが、多少道路が込み合ってきた様に思われ、渋滞が大嫌いな僕は精神安定の為に高速を使う事に決めた。


 少し渋滞に巻き込まれながらも、なんとか行きに降りた長野の入口に着き、そこから新潟方面へと進んで行く。

 高速は相変わらずの空き具合で、難なく信州中野へと辿り着いた。


 ここから思い出の温泉までは山道をかなり登らなければならないのは分かっていた。

 君と一緒に来た時は別段苦にも感じなかったけれど、今は僕一人。

 長い距離を一人で走ってきたせいもあって、僕は信州中野の出口横に車を停車させて、少しだけ休憩する事にした。


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