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last letter  作者: level 43
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第10話 宛の無い旅

あの不思議な体験から、自身を制御する事が難しくなってきた僕。

このままじゃダメだと思い、何の宛もなく気分転換の旅へと向かう。

 あの不思議な出来事に遭遇してから、僕はもう一度君に逢いたいという気持ちが日に日に強くなっていた。

 絶対に不可能で、有り得ない事だというのは十分わかってるつもり。

 でも、どうしてもあの出来事が夢だとは思えない自分がそこにいた。

 君への想いが深く募り、そしてそれがカタチとなって僕の夢に現れた。

 理屈ではただそれだけ。

 でもあの目覚めた時の香り、そう、君の香り。

 決して幻香なんかじゃない、あれはどう説明するのか。

 自分でも容易に導く事が出来ない解答に、僕はしばらくの間もがき、葛藤し続けるのであった。



 数える事3日、延々とあの出来事を頭の中で考え過ぎたせいか、僕の思考回路は麻痺する寸前だった。

 別に自分を追い詰めなければならない理由なんて何処にも存在しない。

 ましてや君が折角現れてくれたのに、それが元で自分自身がノイローゼになっては元も子も無い。


 

 気分転換でもしようか?



 そんな事を漠然と思った。

 そういえばここ数週間、沢山落ち込んで、沢山哀しんで、そして沢山の涙を流して。

 ただそれだけだった。

 正直いってかなり煮詰まっていた。



 よし、日帰りでもいい、小旅行に出よう



 この煮詰まった気分を転換する為、そして何よりも自分自身を見つめ直す為に僕はとりあえず出掛ける事にした。



 桜の花びらもすっかりと消え、大分暖かくなってきたとはいえまだ薄暗く肌寒い明け方の4時。

 少し大きめのポーターのバックに2日分の適当な着替えとタオルを無造作に押し込み、僕は家を出た。


 駐車場迄の5分の間に唯一ある自販機で、眠気覚ましの意味も大いに込めてブラックを買い、お気に入りの少し古くなってきた車に乗り込む。

 エンジンを掛けて車の暖気を待ちながら、買った冷たいブラックを飲み、続けて今日初めての煙草に火を付ける。

 丁度1本吸い終わり車の灰皿に押し付けた頃には、暖気完了と言わんばかりに水温計のメーターは中程を指し示していた。

 しばらくの間行先を何処にするか考えてはみたけれど、全く思いつかない。

 愛車は既に準備万端でも、肝心な僕がウダウダしていては始まらないと思い、目的地の無いままとりあえず走り慣れた甲州街道に出る事にした。


 思いの外、甲州街道は結構混んでいた。

 渋滞が何よりも大嫌いな僕は、その連なった車列を避けたいが為に、予定外な環八へと入っていった。


 勘は当たった様で、さっきの渋滞がまるで嘘の様に環八は何不自由なく流れている。

 幸い信号にも捕まる事なく数キロ走り続けたその時、ふと大きな看板が目に入った。


 関越道 大泉入口


 やっとの事で信号に捕まった僕は、バックの中にある財布の中身を急いで確認してみる。

 いいのか、それとも悪いのか、1万円札が5枚程中に入っていた。


 目的地も何一つ決まってないまま、まるで何かに引き寄せられるかの様に、僕は全く躊躇する事なく関越道に乗ったのだった。

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