第六話 二人はカップル?
それから少しの間二人は抱き合っていた。
涼の目からも杏の目からも涙が次々と溢れていた。
それから二人顔合わせ、微笑み合った。
「ほらどいたどいた!」
ドアの方から図太く低い声がし、生徒をかき分け近藤が入ってきた。
「な!お前ら…?」
抱き合っている二人を見て少し引いている。
「先生!いや…これは…違うの!私たちは兄弟で…」
杏は抱きついていた手を慌てて離し、何とか言い訳を言おうとした。
「そうか!そういう関係なのか!」
近藤は納得したようだった。
「そう!先生勘違いしないでよ!」
まったく~というような顔をしていた。
「一瞬兄弟かと思ったが、そんなわけないよな~!」
「すまない!お前たちカップルの邪魔をして」
近藤の声は廊下まで響き渡り、杏の心も打ち破った。
「いや、だから…違うの…」
だが杏の声は、誰にも聞こえはしなかった。
「マジであいつが!鈴原の彼氏!?」
「えっ嘘!」
「だが、学校でああいう行為はけしからんな~!」
廊下では生徒達が聞いた噂をどんどん広めてるし、近藤も独り言を喋っている。
涼はいきなりのことにまた気絶しそうだった。
「だから違うって言ってるのに~~!」
杏がいくら大きな声で怒鳴っても、誰一人気が付く人はいなかった・・・。