第二話 家族と新しい学校
一話につながっていますので、まだ一話を見ていない人は一話をどうぞ。
「涼!何ボーっとしてるの!早くしたくして」
車の窓からボーっと学校を眺めていた涼を母(知恵)が我に返した。
「えっ!うん…」
涼は元気なさげに答えた。
「今日から新しい学校なんだから元気出してっ!きっと楽しいわよ」
知恵は、涼の気持ちとは裏腹に、気分は上場だった。
再び家族と一緒に暮らせるのがよほど嬉しいんだろう。
涼が五歳の時に、父(良夫)は仕事の都合で、東京に行くことになった。
家族皆で引越すのかと思ったのだが、
知恵も仕事の都合でどうしても大阪を離れるわけにはいかなかった。
なので家族別々に暮らすことになってしまった。
良夫だけ東京に行くもんだと思ったが、
たまたま東京に住んでいる叔父の勧めで、
受験した私立白銀小学校に杏が合格したと通知が来た。
白銀小学校は有名な私立校で、エスカレーター式で大学まで上がっていける。
なので、良夫と杏が大阪に行き、知恵と涼が大阪に残ることとなった。
父と母はたまに会っていたみたいだが、涼と杏はお互いの都合で、
小学校三年生のお正月以来、一度も会うことはなかった。
しかも涼は小学校の時の出来事で、内気で、弱気な性格になってしまっていた。
今の涼には、いきなりの家族との再会や、いきなりの転校は、
とても精神的に参るとこだらけだった。
いきなりのことだったので、どの学校に入ろうか迷ったが、
杏も行っているし、東京の家から近いので、私立白銀中学校の転入試験を受けることにした。
勉強はできるほうなので、あっさりと受かって、あっさりと入ることになった。
学校の二学期の始業式がある一日前に、東京の家に行けるように、大阪の家を出たのだが、
道を間違え、乗る高速道路を間違え、しまいには途中で車が止まってしまった。
学校の始まるギリギリの時間に学校まで来れたので、
家に行く前に、先に学校に行くことになってしまった。
それで今に至っている…。
「上靴はちゃんと持った?名札もちゃんとつけた?」
知恵は口うるさく何度も同じことを聞いてくる。
「うん…」
涼はかなり緊張していて、頭の中が真っ白になっていた。
「バシッ!しっかりしなさい!」
「イタっ!はい!」
知恵は涼の背中を叩いて、元気付けた。
涼は覚悟を決めて、車のドアを開けた
「じゃあ…行って来る…」
やっぱり元気になれる気分ではなかった。
「あ!まず最初に職員室に行きなさいね!先生には言ってあるから」
「確か…近藤って言う先生だから…」
ドアを閉めようとした時に知恵が言った。
「分かった…じゃ…」
小さな声でそう言うと、涼はドアを閉め、ゆっくり歩いていった。
「大丈夫かしら…」
知恵は涼の後ろ姿を見ながらそうつぶやいた。
三話に続く…。