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第一話 始まりの記憶

静かで真っ暗な森の中に、大きな声が響いていた。

きょう!杏!」

声を荒げて叫んでいる、幼い少年の姿があった。

まだ五歳くらいだろうか…誰かを探しているようだ。

「杏!杏!」

少年の身体には、枝よ葉で切ったのか、たくさんの切り傷があった。

でも傷のことなど全く気にせず、走り叫び続けた。

「ハァーっハァーっぎ、ぎょう!」

声は嗄れ、ふらふらと今にも倒れそうになりながらも、踏ん張って歩き続けた。

少年はどれくらい歩いただろう。

だんだんと森も深くなり、道という道も無くなってきた。

それでも草を掻き分け、ゆっくりと進んでいった。

すると小さな川にたどり着いた。

今の少年にとってこの川は、天使からの贈り物、そのものだった。

水の中に顔を突っ込み、水をがぶ飲みし、汚れた顔や手足を洗った。

そこで少し休憩をとった。

少し心細くなり、涙ぐんだが、すぐに涙を拭いた。

立ち上がりまた進もうとした時、上流の方から泣き声のような音が聞こえてきた。

「!杏」

川の上流付近の滝のせいで、うまく聞き取れなかったが、少年はすぐさま上流の方へ走り出した。

簡単に進める道ではないが、少年はがむしゃらに走り続けた。

途中何度かつまずき転び、顔も手も足も泥だらけになったが、すぐに立ち上がり、走り続けた。

かなり上の方まで来て、立ち止まり耳を澄ました。

するとしっかりとさっきの音が泣き声だと分かった。

最後の力を足に、身体に、心に込めて思いっきり走った。

走り抜けた先は、小さな湖があった。

少年は辺りを見渡した。

一つの場所が目に留まり、思いっきり声を出した。

「きょっ・杏ー!」

そこには湖の浜辺の岩の上で泣いている、少女の姿があった。

「お・お・お兄ちゃん…」

少女は涙が溜まった目でこちらを見た。

「お兄ちゃん!」

さっきよりも断然大きな声で、少年に向かって叫んだ。

「杏!」

少年は、思いっきり、少女に抱きついた。

「杏!杏!」

少年の目からは涙が止まらなかった。

「お兄ちゃん!」

少女の目からも涙が溢れていた。

「お兄ちゃん?」

涙を拭いて少女が言った。

「ん?」

少年も涙を吹いて、少女を見た。

だが涙がすぐに溢れてきた。

「お兄ちゃん、ありがとう!」

少女の顔は満面の笑みで、輝いていた…。

少年はこの笑顔をいつまでも忘れないだろう…。


「起きなさい涼、起きなさい!」

どこからか声が…バシッ

「イタっうぁっ母さん」

イスの上に置いてあった雑誌で叩かれた。

「うぁって何!」

「ほら学校着いたわよ」

そこには真っ白で綺麗な大きな学校が建っていた。








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