ハーレム作るのは良いんだけどさ、1人だけって選ばれないんだよ
名前を借りました
婚約者クヌムが、男爵令嬢のラーの逆ハーレム要員になった。
ラーは、婚約者がいる男子生徒ばかりを侍らせている、最近、学園に編入してきた女生徒だ。
病弱だったらしく、入学式には間に合わなかったらしい。
ゆるふわのピンクの髪を靡かせながら、男子生徒に絡みつく。
その1人が、私の婚約者だった。
「婚約者がいるのに、他の令嬢に侍るとは」
学園の廊下でしか会えないので、私セクメトは、婚約者としてクヌムに注意した。
「うるさい!」
毎回これである。クヌムに何度も注意して、半年以上経った。
「醜い嫉妬はやめてくれ迷惑だ」
クヌムがある日、言った。
他の生徒がいる学園の廊下である。
注目の的だ。
「婚約をどうお考えで?」
私は冷静に言った。嫉妬なんてしていない。その価値もない。
「ラーを愛している」
「なら婚約を白紙にしましょう」
「そうだな」
婚約は白紙になった。
婚約を白紙にしてからなら、好きにして良い。
学年が上がって、とうとうラーが王子を侍らせた。
複数の男を侍らせるなんで、マメねぇ…
学園の中庭を散歩していると、垣根の向こうから声が聞こえてきた。
「私が王子様と結婚しても、私のそばにいて…頼りになるのは貴方だけなの…」
ラーが、男子生徒にしなだれかかりながら言った。
垣根の隙間から見えてしまったのだ。
断じて覗きではない。
「勿論」
男子生徒は鼻の下を伸ばしながら答えた。
立ち聞きしといてなんだけど、酷いなぁ…
本当に良いの!?
ハーレム作るのは良いんだけどさ、1人だけって選ばれないんだよ?
ラーは王子と結婚するんだよ?
お前はハーレム要員として侍らせてるだけで、愛されてないんだよ?
ラーと結婚できないんだよ。
愛されてたら、お前を選ぶはずでしょ?
頼りになるのは貴方だけ…って言葉を信じて、一生独身でいるのか?キープされてるだけなのに。
永遠に、その他大勢のハーレムの一員なだけなのにね。
ま、いっか。
気付いた時には手遅れだから。
そもそも私には関係ない。
私は、アホな元婚約者から、よりを戻そうと言われる前に、さっさと新しい婚約をしていた。今の婚約者は、学園を卒業しているので、ラーに狙われることは無い。たぶん。そう願いたい。
私はラーから距離を取っていた。
それなのに、私のクラスまで、わざわざラーがやってきた。
「貴女の婚約者が私と仲が良いからって、恨まないでよ!意地悪するなんて酷いわ!」
ラーは寝言を言い出した!
私は無視して教室を出た。
それからも、何度もヒロインが絡んできた。
…面倒くさい。
私は、単位を取り飛び級した。
婚約者がいるとバレる前に卒業してしまえ。
ラーは、学年が違うから教室が離れているのに、わざわざ私の所までやって来た。
あまりにもしつこいので
「あ、もう婚約は白紙にしました」
と、ラーに言った。
卒業まで黙っておくつもりだったのに。
「は?」
「なので関係ないです。お好きにどうぞ」
私は即刻逃げた。
その後、元婚約者は、逆ハーレムから追い出されたらしい。
「婚約白紙になるなんて思わなかったのごめんなさい別れましょう!」
ラーが、目を潤ませながら言った。
「え!?」
「さようなら」
「待ってくれ!」
取り残される元婚約者。
周りの生徒達は、遠巻きに見ていた。
案の定、元婚約者がよりを戻そうとやってきた。
「やり直そう」
「嫌ですさようなら」
「待ってくれ!」
「向こうがダメだったからこっちって、節操ないですね最低」
「違うんだ!」
取り付く暇もない私に、慌てる元婚約者。
「もう婚約者ではないので話し掛けないでください」
「待ってくれ!」
「しっかり現実を見てください」
「だからやり直そう?」
「貴方は婿入り先を探さないといけないのですよ」
「は?」
やっぱり自分の状況を分かってないらしい。アホだから。
「ご両親の話をきちんと聞いた方が良いですよ。やり直す前に」
「…分かった」
元婚約者は去っていった。
クヌムは、廃嫡されたのを知らなかった。
既に弟が嫡男になっていた。
嫡男でなければ、他に継げる爵位もないから平民になるか、騎士か文官になるか、婿入りするしかない。
だがクヌムは、廃嫡されたのを知らなかったから、何も準備していなかった。
「愛があれば身分なんていらないだろう?」
元婚約者が、寝言を言った!
「愛なんてありませんが」
私は冷静に言った。
「は?」
驚く元婚約者。
「愛なんてありません」
「俺の事好きだっただろ?」
しつこいな。
「ただの政略結婚ですが?」
「そんなわけ…」
「婚約してすぐにヒロインに侍ったから、交流なんてしてません。愛も情も湧きません」
「そんな…」
むしろ、どうして愛されていると思ったのか?
「2度と関わらないでください」
「待ってくれ」
婚約者の役目を果たさないからだよ。何度も言ったのに。
「白紙って意味分かります?婚約は無かったって事です無関係なので話しかけないでくださいさようなら」
「待ってくれ!」
しつこいな…
「変質者に絡まれています!」
私とは無関係の男は、学園の警備の騎士に連れて行かれた。
元婚約者は、婚約者がいるのにラーに侍り、ラーから振られたら元婚約者に復縁を迫り、と、あまりの節操の無さに誰からも相手にされなくなった。
これ以上、余計な事をしないように、両親から領地に閉じ込められた。
ラーは、私に婚約者がいないと思い込んでいるから、私には近付かなくなった。
王子が、卒業パーティーで婚約破棄をして、ラーを婚約者にすると宣言した。
有頂天のラー。
だから私が、婚約者にエスコートされている事に、ラーは気付かなかった。
卒業してすぐに、私達は結婚式を挙げた。
もう、ラーに隠れる事なく夫と仲良くできる。
夫の領地に行き、王都のラーとは関わりが無くなった。
聞いた話では、王子と婚約したラーは、相変わらず男を侍らせているらしい。
…王子…よく認めたな。
侍っている男達は、ラーが知らないだけで、婚約者から婚約を白紙にされている。
もし、婚約者がいないとバレたら、ラーに捨てられる事が分かっているから、必死に隠しているらしい。
ラーにうまいこと言われて侍っているけれど、結婚もできずに老化していく男達。
王子も王子で、婚約破棄をしてまで婚約したので、男を侍らせているラーを放置していた。
それを問題視され、王族の仕事は何も任されていない。
もし、ラーと結婚して、ラーに子どもができた時に、誰の子どもか分からない為、王子と、将来生まれてくる子の王位継承権を剥奪した。
そんな事など知らないラーと逆ハーレム要員達は、離宮で楽しく暮らしていた。
だが、いつまで経っても結婚式は挙げられなかった。
そのうちに子どもができたが、生まれた子は、王子含めた逆ハーレム要員の誰にも似ていなくて、浮気をしたと全員から非難された。
結婚してなくて良かった、婚約破棄したいと王子は国王へ訴えたが、いい歳をした王子や逆ハーレム要員達に、新しい婚約者ができるわけもない。
任せられる仕事も無い。
お前達は王家の威信と信頼を落とす振る舞いをしたから、と、一生離宮に閉じ込められたのだった。
離宮には、言い争いの声が毎日響いていたという。
生まれた子は、孤児院に入れられた。
逆ハーレム要員の元婚約者の令嬢達は、さっさと新しい婚約者と結婚し、幸せに暮らしているという。
私も、子も生まれ、家族仲良く幸せに暮らしている。
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