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選抜チームに入れた!

来ていただいてありがとうございます!




「あっという間に冬休みが終わっちゃったな……」

ポロス学園は三学期制で私が編入したのが一年生の秋の学期の途中。それから二十日間ほどの冬のお休みの後に冬の学期が始まり、準備休み、春の学期、夏休み、また秋の学期へと続く。

「ほとんど仕事とリュラ―とハープの練習で終わっちゃったけど、少しまとまったお金が入ったから、選抜のコンテストが終わったらちょっとだけ買い物をしちゃおうかな」

星降り亭のオーナーは私のことを気に入ってくれたみたいで、また人出が足りない時に働いて欲しいって言ってもらえた。少しづつお金を貯めて奨学金を返せるようにしよう。これからの事を考えながら一人きりの練習室で灰色の空を見上げた。また今にも雪が降りだしそう。

「もちろん、選抜チームに入れたらね。ご褒美ってことで。よし、もっとやる気出てきた!」

私は放課後の練習室での練習を再開した。


冬の選抜のコンテストは春の演奏会のメンバーを選ぶためのもので、演奏会の形式でポロス学園の講堂で行われた。すごく緊張したけど練習通りに課題曲を弾けたと思う。後日張り出された合格者のリストの中に私の名前は……ちゃんとあった!!やった!選抜チームに入れた!





合格発表のわりとすぐ後、今回の選抜チームを指導する先生に呼び出された。アナベル・リントン先生は声楽科の先生で柔らかそうな薄い茶色の髪の三十代半ばの女の人だ。選抜チームを指導する先生は当番制なんだって。


「何の用だろう?もしかして今回の演奏曲の中にリュラ―のパートが無かったりして……。もしそうだったらどうしよう……」

不安になりながら職員室に入ると、リントン先生と一緒にオルブライト様が立っていた。なんで?理由はすぐにわかった。


「二人とも呼び出してごめんなさいね。これを見て欲しいの」

にこにこと笑う先生は私達に楽譜を見せてきた。

「これは……」

花と清らかな川のせせらぎを表現した楽曲だった。ハープの二重奏が組み込まれてる。花の精霊様と水の精霊様を讃え、春の到来を喜ぶ曲。

「その曲をね、今度の選抜チームの演奏曲の一つに入れたいの!せっかくハープとリュラ―の奏者が選ばれたんですものね」

先生は嬉しそうに両手を合わせた。

「どうかしら?」


「あ、僕は……」

私は別にいいけど、オルブライト様はきっと私と合奏なんて嫌なんだろうな。その証拠に困った顔をしてるもの。仕方ない、ここは私が断ってあげよう。私だってマーシーに嫌味を言う人と二人で演奏なんてしたくないしね。

「リントン先生、オルブライト様はクラヴィーアを専攻されてますし、私は編入したばかりで皆さんと合わせて演奏するのは初めてなので、少し荷が重いです。ですので申し訳ありませんが……」

「え…………」

戸惑うような声をあげたオルブライト様をちらっと見ると、何故か私の方を見ていた。何よ、なんか文句でもあるの?どうせ私みたいな平民となんて一緒にやりたくないんでしょ?


「まあ、そう?残念ね……。せっかく今までにやったことがない楽曲ができると思ったのだけど……。じゃあこれは次の機会に回しましょうか」

リントン先生が楽譜をしまおうとしたので私は慌てた。

「あ、あのっ!その楽譜!お借りできないでしょうか?練習してみたいんです!」

「まあ!熱心なのね!もちろんいいですとも」

「ありがとうございます!」

わーい!新しい曲だ。私はホクホクしながら楽譜を胸に抱いて職員室を後にした。オルブライト様?知らないよ。


実際問題、四十人もの人と気持ちを合わせて演奏するなんて未知の体験だから。とてもそんな余裕ないわ。ましてや平民を嫌ってるオルブライト様と二人で練習なんてとんでもない。大体、以前はっきりと断られてるんだもの。練習室に戻って早速練習を始めなきゃ。リュラ―のパートはそんなに多くないけど全体練習の前に完璧に弾けるようになっておきたいから。


「ちょっと待って!」

廊下を早歩きしていたら、後ろから声をかけられた。振り返るとそこには意外な人がいた。

「オルブライト様?!…………えっと何か御用でしょうか?」

私にも嫌味を言うつもりなのかと身構えた。何か言われたら言い返してやるんだから。丁寧な言葉でね。私は銀色のまつ毛にやや伏せられた青い瞳を睨み返した。オルブライト様は最初は不思議そうにその後、困ったように私を見ている。もう!一体何なの?


「あの、選抜チームの演奏はちゃんとやりますのでご安心ください」

「え?ああ、君がきちんと練習してるのはわかってるから……そうじゃなくて……」

何か文句があるんじゃないの?じゃあ、なんなの?はっきりしないなぁ。

「ではその練習がありますので失礼します」

「あ、あの、君が練習室で……それとあの広場での演奏の時……いや、何でもない。よければ僕にもその楽譜を貸してもらえないだろうか。君の後でいいから。リントン先生には許可を貰ってあるから」

「わかりました」

オルブライト様はクラヴィーアなのにこの楽譜が必要なの?まあいいや。それなら

「ではお先にどうぞ」

私が楽譜を渡そうとするとオルブライト様は焦ったように断ってきた。

「いや、いい!僕の方が後で!」

「そうですか。では」

私はあっさりと楽譜を引っ込めた。だってもともと私が先に借りたんだからね。

「うん。ひきとめてごめん」

オルブライト様はそう言うと廊下を走り去っていった。

「?!」

え?今、謝った……?貴族が平民の私に?私は呆然としてオルブライト様の背中を見送った。









ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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