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初雪の演奏会

来ていただいてありがとうございます!




「村では多くて四人くらいだったもんね……。凄かったなぁ……」


全部で四十人位の合奏だったけど、村ではこんなに大勢の人達が一つの曲を演奏するところを見たことが無かった。みんなの音がひとつの塊の風みたいになって体に打ち付けてくるみたいだった。後日、星の聖地で行われたポロス学園の選抜チームの本番の演奏も更に凄くて圧倒されてしまった。私はすっかり選抜チームの演奏に魅了されてしまった。一人で頑張るって意地になって村を飛び出してきたのにね。だからその日から私の目標は選抜チームに選ばれることになったんだ。




「ねえ、今日は一緒に街へ行ってみない?」

季節が冬へと移り変わったあるお休みの日の朝、エイミーが私の部屋を訪ねてきた。

「勉強を頑張るのもいいけど、たまには息抜きも必要よ?」

「そういえばまだ街へは行ったことなかったわ」

ポロス学園に来たときに馬車で通りかかっただけだった。

「私、お買い物がしたいの。ノーラとマーシーが住み込みで働いてるお店にも行ってみましょうよ」

「ノーラとマーシーの?」

そういえばノーラとマーシーは寮に入ってないんだよね。どうしてだろう?寮費は補助が出るはずなのに……?


外出許可を貰ってエイミーと一緒に外に出た私はちょっとはしゃいでいたと思う。だって村のお祭りの時よりもずっとずっと人が多くて賑やかだったから。

「お店がいっぱい!お祭りでもあるの?」

「ううん。お祭りは夏よ。ここは星の聖地に一番近い街だから観光名所になってるのよ」

「へえ、そうなんだ。だからこんなに人が多いんだね」

よく見れば星の形をした飾りとか星の聖地って書いてある小物とかがたくさん売られてる。お祭りでも無くて、これがここの日常なんだ……。

「夏の星祭りの間はこんなの比じゃないくらいたくさんの人が来るわよ」

「これ以上?!」

エイミーと一緒にアクセサリーお店を見て回りながら色々教えてもらった。そんなにお金を持ってないから買えるものは無かったけど、初めてのものばかりで見てるだけで楽しかった。エイミーは新しい髪飾りが欲しかったみたいでいくつか買い求めてた。


「あれって何?」

街の所々に台のようなものが置かれてるのが気になった。噴水のある広場には石できたステージのようなものがある。

「ああ!あれはステージよ」

やっぱりステージなんだ。

「誰でも好きな時に歌ったり演奏していいことになってるの。聖地から精霊様が飛んでくることもあるのよ」

「へえ!みんな音楽が好きなんだ。さすが星の聖地の街って感じだね」



お昼過ぎにノーラとマーシーと合流して四人で昼ご飯を食べることになった。この地方の特産品のレンレンという果物を使ったジュースとサンドイッチ。それを持って星の聖地が見える広場のベンチでみんなで食べた。

「寮費の補助?そんなの私達には出ないよ」

ノーラとマーシーは宿屋で住み込みで働きながら学校に通ってる。宿屋の一階はレストランになっていて、ランチタイムの忙しさが一段落ついたころにノーラとマーシーも休憩を貰えた。

「え?そうなの?」

「セシリーはどうやってここへ来たの?」

マーシーは不思議そうに私に尋ねた。

「えっと、領主の息子さんの紹介で」

「ああ!成程ね!貴族様の紹介なら納得だわ」

エイミーの実家は割と大きなお店を営んでいて、学費も寮費も出してもらえてるそうだ。


「たぶんその方が支援者をやってるんじゃないか?」

ノーラからまた聞き慣れない言葉が出てきた。

「支援者?」

「星の音楽団には支援者と呼ばれる人達がいて、寄付をしたり各地から優れた人材を集めてきたりしてるのよ。その他に演奏家や歌い手を支援する活動もしてるわ」

「へえ、そうなんだ……」

じゃあエクランド様がその支援者ってことかぁ……。

「セシリーはそのエクランド様によっぽど見込まれてるのね。寮費を補助してもらえるなんて羨ましいわ」

「そうだったんだ。学費は奨学金だけど本当ならもっとお金がかかってたんだね。…………知らなかった。もう一度エクランド様に感謝のお手紙を書かなくちゃ」

「それが良いと思うわ」

「それにその方の期待に応えて星の音楽団に入れるように頑張らないとね」

「それは私達も同じだよ」

「そうね」

「みんなで頑張りましょう!」

「うん!」


今日のお出かけはとても楽しかった。またみんなと出かけられたらいいな。できればお父さんとロージーに何かお土産を……っていやいや。あの二人は私からの贈り物なんて要らないわよね。それに家から持って来たお小遣いももう残り少ないし、私も何か仕事をしないとだわ……。もうすぐ冬のお休みがあるからその時にどこかで働かせてもらおう。とにかく今は勉強と練習を頑張らなくちゃ!







「どおりで寒いと思った……。雪が降ってる。ん?なんか外で人の気配がするみたい」

初めての雪が降った朝、外の騒がしい気配で目が覚めた。部屋の窓から外を見ると星の音楽団の本拠地、星音の宮からたくさんの人達が岩のステージに上がっていくのが見えた。星音の宮の屋上から岩のステージへ続く階段があってそこをお揃いのローブを着た男女が楽器を持って登っていく。


「初雪の演奏会だ!」

誰かが叫ぶ声が聞こえた。


「初雪の演奏会?」

って何?不思議に思ってるとエイミーが少し興奮気味に私の部屋へやって来た。

「星の音楽団の演奏会が始まるわ!急いで行きましょう!」

「え?でも学校は?」

「そんなの演奏会の方が優先よ!」

「そんなのって……」

私は急いで着替えを済ませ、朝食もそこそこにエイミーに外に連れ出された。


星の音楽団は精霊様に捧げる音楽を奏でる集団だ。定期演奏会の他に、一人から二十人ぐらいのグループで個別に演奏をすることもある。そして今回の演奏会は年に何度かある不定期の演奏会だった。これは本当にいつあるかわからない演奏会で今日みたいに初雪が降った日とか、大雪の日とか、咲き始め日とか、大風が吹いた日とかに行われるんだって。その日が来そうになると団員達は準備を始めるそうだ。


「今回のは雪の精霊様を讃える楽曲が演奏されるのよ」

エイミーと一緒に星の聖地近くの広場まで行くともうすでに大勢の人達が集まっていた。ノーラやマーシーも来てる。学校の他の生徒達も見に来てるみたいだった。雪が降るほど寒いのにみんなそれもものともしてない。


やがて岩のステージから聞こえてくる美しい音楽と声。


もちろん演奏も凄いけど、特に歌が印象に残った。どこかで見たことがあるような豪華なたてロールの銀髪の歌姫様なんだけど、よく通る澄んだ歌声が素敵だった。歌い終わるころには集まった精霊様に周りを囲まれて光の渦の中にいるみたいだった。すごいすごいすごい!


やがて演奏が終わるかと思われる頃、不思議な現象が起こった。岩のステージの少し上空に顕現するふわふわ白髪の女の子。白いドレスを着てる。人間は空に浮かんだままいられないからあれはきっと精霊様なんだろう。歓声がひときわ大きくなる。私は初めて人と同じ姿の精霊を見た。たぶん雪の精霊様だよね。雪の精霊様は歌姫様の頭をなでなですると、楽しそうに笑いながら消えていった。


「あれが精霊様……」

「大精霊様ね。動物の姿をしてる精霊もいらっしゃるのよ」

エイミーの言葉に驚いた。私の記憶の中であの角の生えた白馬が蘇る。あの馬ってもしかして精霊だったんじゃ……。


その日は一日中見た光景が頭を離れなかった。午後からはちゃんと授業に出たんだけど、相変わらず私は一人で自習で与えられた楽譜を黙々と練習する。時々エルベ先生が見に来てくれるだけ。オルブライト様のことは「しょうがないなぁ」の一言だけで終わって何も無し。


「ああ、素敵な演奏会だった……」

綺麗な声、圧倒的な表現力。そして何よりも精霊様を大切に想う気持ちが伝わって来る。お揃いのローブに星をかたどったエンブレムがカッコいいし、周りを精霊様達がたくさん飛び回ってるのも幻想的だった。私は思い出しながら雪の精霊様を讃える曲をリュラ―で弾いてみた。

「こんな感じの曲だったっけ。精霊様達、なんだか楽しそうだったなぁ。踊りを踊ってるみたいで。私もあんな風に演奏出来たらいいな」



「ずるいなぁ。雪の曲ばっかりそんなに楽しそうに弾いて」

突然かけられた声は窓の外から聞こえてきた。ここ、四階の練習室なんだけど……??









ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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