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夏休み

来ていただいてありがとうございます!




王都から戻った星の聖地の街はいつもの顔に戻っていた。穏やかで静かな街の中を時々精霊様が飛んでいく。

「暑い……」

夏の日差しが降り注ぐ昼間は動くと汗をかくほどで、休憩時間にはオーナーが氷入りのジュースを飲ませてくれた。

「ノーラとマーシーは練習頑張ってるかな。二人の分も頑張ろう!」


最近ノーラとマーシーは交代でお休みをとっていて、今日は偶然二人ともお休み。もうすぐ秋の選抜チームの選考会があるから課題曲の練習で忙しいんだ。私は二人の代わりにシフトを増やして星降り亭で働かせてもらってる。二人には私が秋の選抜チームに入ったことをきちんと伝えることができた。

「へえ!やっぱり大精霊が出てきたのが大きかったんだね」

「良かったわね、セシリー。私達も頑張らないとね?ノーラ」

「そうだね。選考会は十日後だから、きっちり練習しないとだね」

私に学園から手紙が来た日に、ノーラとマーシーにも選考会のお知らせが来てたみたい。

「二人の分も働くから、選考会に集中してね」

「本当かい?助かるよ!中々練習時間が取れなくて困ってたんだよ」

「あしがとうね、セシリー」

二人とも私の選抜入りを喜んでくれた。そんな二人の為にも私は星降り亭で頑張ってるんだ。絶対一緒に選抜チームで演奏したいから。


朝、早く起きて寮の練習室で練習をして、美味しい朝ごはんを食べてから星降り亭に出勤。開店準備を終えて一番忙しいランチタイムを走り回り、遅い昼ご飯を食べさせてもらって、ティータイムの営業。お茶の時間はゆったり過ごすお客様が多いからそんなに忙しくないけど、夕方はその後にくるディナータイムの準備が始まる。休憩時間はその間にあって、星降り亭の近くの広場の木陰のベンチでジュースを飲みながら一休み。それから目まぐるしくディナータイムが始まる。朝からの出勤の時はディナータイムの準備を終えたら寮に帰れる。昼すぎからの出勤の時はディナータイムが終わるまで。そういう時はお昼までリュラ―の練習をする。


「フィル様!いらっしゃいませ」

ティータイムに入ると時々フィル様が星降り亭にやって来るようになった。フィル様はポロス学園でハープの練習をして帰りがけにお茶を飲みに来てる。フィル様だったら、星降り亭じゃなくてもっとおしゃれなカフェに行った方がいいんじゃないのかな?

「お疲れ様、セシリー。今日も暑いね。いつもの貰えるかな?」

「はい!ただいまお持ちします!」

フィル様の注文は決まって氷入りのアイスティーと今日の焼き菓子。焼き菓子は日替わりで近所のケーキ屋さんから仕入れてる。そのケーキ屋さんは安くて美味しいって評判のお店だから、私も時々帰りに寄ったりしてるんだ。小さなクッキーを買うこともあるんだけど、どれも美味しかったなぁ。


「今日は夜まで?大変だね」

「はい。でももうすぐ選考会ですし、それまではノーラとマーシーの分も頑張ります」

「そうか。二人とも選ばれるといいね」

「はい!きっと大丈夫です」





「あ、月が出てる。今夜は明るいな」

仕事を終えて寮までの帰り道、街の通りは人影もまばら。怖くないと言えば嘘になるけど、街灯もあるし精霊様がついてきてくれたりするからそこまでの恐怖感は無い。それでも早足で寮への道を歩く。

「今日もいっぱい働いたーっ!汗いっぱいかいちゃった。早くお風呂に入りたい」

まだ灯がついてる通り沿いの洋服屋さんのウインドウが目に入った。

「可愛い……王都のドレスショップも素敵だったけど私はこっちのほうがいいな」

お店のショーウインドウには秋色の長袖ワンピースドレス。同じ生地の帽子も可愛い。なかなかのお値段だからとても手が出ないけど、いつか買えたらいいな。忙しいのは大変だけど、お金を稼げるのはありがたい。早く自分で生活できるようになりたいな。


「ん?」

お店を通り過ぎて歩き出すと違和感に気付く。誰かが後ろをついて来てるような気がする。勇気を出して勢いよく振り返ると後ろには誰もいない。

「なんだ……気のせいか。びっくりした」

銀色の光が一瞬見えた気がする。きっと精霊様が横切ったんだろうね。途中で何度か後ろを見たけど、やっぱり誰もいなくてほっとした。でもちょっと怖くてその夜は駆け足で寮に帰った。


夕食は星降り亭でまかないをいただいたから、急いでお風呂に入って練習室へ行った。寮の中は外よりも涼しくて過ごしやすいんだ。寝る前にリュラ―の練習をして部屋に戻る。

「今日はゲイル、来てないんだ」

自分の部屋のドアを開けると時々ゲイルがいて、演奏をせがまれることがある。そんな時は練習室へ戻って何曲かをゲイルの為に弾くこともある。今日はいなかった。ゲイルって神出鬼没なんだよね。いつもはどこでどうしているんだろう?精霊の世界にいるんだろうけど、そこで何をしてるのかな?

「今度聞いたら答えてくれるかな?」

窓を開けて月と星を眺めてたら、涼しい風が入って来る。

「そろそろ夏も終わっちゃうのかな…………って!まだ終わっちゃダメだ!夏休みの課題がまだ終わってないんだから!」

私は勉強が苦手。本を見てると眠くなってくるから。

「楽譜だったら何時間見てても眠くならないのに」

でもきちんと課題もやらなくちゃいけない。だってポロス学園に留年は無いから。落第したら即退学という厳しい学園なんだ。なんとか今日の目標まで頑張って課題をこなし、やっとベッドにもぐりこんだらすぐに眠りに落ちる。そして朝が来てリュラ―の練習をする。そんな忙しいけれど充実した私の夏休みの日々。









ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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