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お城で演奏

来ていただいてありがとうございます!




楽しい気分で森から戻ったら、フィル様が夕方に私の部屋を訪ねてきた。なんだか不機嫌、というより怒ってるみたい。

「なんでセシリーだけこんな離れた場所にいるんだ」

フィル様の様子を見てメイドさん達が困ってる。どうやら私一人だけお城ではなくて離れのような場所に案内されたらしい。平民差別ってこと?フィル様やコリンナ様達と離れているのはちょっと寂しいけど、静かだし綺麗で豪華すぎるお部屋だし私には十分なんだけどな。それにしても離れもこんなに立派で豪華な場所だなんて王様ってお金持ちなんだね。うちにも離れ(お父さんの仕事場)はあったけど、こんなのを見ちゃったらただの物置にしか見えない。


「呼びつけておいてこの扱いは無いね」

後からここを訪ねてきたエクランド様もやっぱり怒ってる。笑ってるけど怒ってるのはわかる。メイドさん達が怖がってるみたいだったから、慌ててフォローした。

「でもここはものすごく素敵なお部屋ですよ。素敵な森も近くて!そうだ!さっき森の中で精霊様達と、それと大精霊様にもお会いしました!」


「は?一人で森へ行ったの?」

フィル様が眉をひそめた。心配しなくてもここは王様の家だし危なくないはずだよね。

「はい。お昼ご飯の後に。リュラ―の練習をしておこうと思ったので」

「ちょっと待って、セシリー!大精霊だって?」

「はい。森に長く住んでらっしゃるみたいですよ。緑色の……えっと全身が薄い緑色に輝くおじいさんでした」

「その大精霊の名前は?!何か言ってた?!」

エクランド様は何故かものすごく興奮してる。いきなり立ち上がったからテーブルの上のお茶がこぼれそうになった。

「ああ!失礼!」

「そういえばお名前を聞いていませんでした」

大精霊様にはお名前があったんだ。そういえばゲイルにも名前があるよね。星まつりの時に『月の竪琴』に触ってたあの女の子の大精霊様もお名前があるのかな?

「そうかぁ。王城の森に住む大精霊か。本当にいたんだな……」

エクランド様は遠い目をして考え込んでる。何でも王都の森には昔から守り神のような強い力を持つ精霊がいると噂されてきたそう。でもほとんどその姿を見た人はいなかったらしくて、エクランド様は子どもの頃からその姿を見たいと思ってたんだって。


「こんな所にいらしたのね!」

フィル様もエクランド様も夕食をここでとるとメイドさん達に伝えていると、今度はコリンナ様がやって来た。

「こちらの方が静かでいいではありませんか!」

何故かコリンナ様も一緒に夕食を食べることになって、静かな離れはとても賑やかになった。寮では練習時間の事もあって一人でご飯を食べることも多いから、こうやってみんなで食べるのは嬉しい。いい意味でお城の中を感じさせない雰囲気で緊張せずにすんだ。みんなが来てくれて良かった!






翌日の午後は王様と王妃様とお会いして、それぞれにお言葉を頂いた。私には「これからも頑張りなさい」と「頑張ってください」だったかな。そして演奏会が始まった。大きな広間の冷たい石造りの床の中央にしつらえられた舞台の上に誘導されて、周りにはずらりと貴族の人達が取り囲んでこちらを見てる。中には何かひそひそと話をしてる人達もいる。それを見てちょっと怖くなってきちゃって、思わずリュラ―を抱き締めた。ふいに肩に温かい感触があって隣を見上げるとフィル様が私の肩に手を置いてくれていた。

「大丈夫だ。一人じゃない。僕もいるから。それに僕達の演奏はあそこにいる貴族達の為じゃない。精霊の為だろう?」

フィル様の言葉にハッとなる。

「……はい。そうでした!」

昨日お会いした精霊様達や大精霊様の事を思い出して気合いが入った。そうだった。森を讃える曲じゃないけど、この曲も楽しんでもらえるといいな。


まずコリンナ様達の演奏が始まった。圧巻の演奏はあの星まつりの時のまま。迫力のある演奏でまるで音が体を打ち付けてくるみたいに響いてくる。たくさんの拍手が起こり、国王様も王妃様もとても喜んでいらっしゃった。次はフィル様と私の番。フィル様と目を合わせて頷きあう。大丈夫、いつも通りに弾けばいい。


最初の音を鳴らすといつも集中できてくる。演奏の途中で光が降って来た。たくさんの光。ああ、精霊様達が演奏を聞きに来てくれたんだ。周りの人達がざわめく声に顔を上げると、そこには昨日出会った大精霊様が立っていた。

「懐かしや……久しく訪ねておらぬ流星の地を思い出した。旧知の友に会いに赴こう。ありがとう、セシリー・オルコットと銀糸の少年よ」

緑の大精霊様は私達の演奏が終わると、大広間の床一面にキラキラと光る木の葉を落とし、他の精霊様達と一緒に消えて行った。

「我が名はウィリディス。遠き過去に友人が呼んだ名だ」

という言葉を残して。


しばらくの間、静寂が続いた。


突然、わっと大きな歓声と拍手が起こった。


「今のが昨日会った大精霊?」

「はい。ウィリディス様とおっしゃるんですね」

舞台を下りながらフィル様が話しかけてきた。

「ものすごい力の持ち主みたいだ。正直少し恐ろしかったよ」

「そうですか?優しそうなおじいちゃんに見えますけど」

「セシリーはすごいね」

フィル様は苦笑してる。

「それにしても、この後掃除が大変そうですね」

私は木の葉が散らばった大広間の床を見た。フィル様は堪えきれないって感じで吹き出し、珍しく声を出して笑い続けてた。


その後は王様からお褒めの言葉をいただいたり、私の部屋が離れからお城の中に移されたり、お城での滞在期間の延長を求められたりしたけど、元々演奏会が終わったらお城を去ることになってたしその許可もいただいてたから、予定通りに王都にあるエクランド伯爵家に行くことになった。

「さあ屋敷でゆっくり休んだら、明日は王都を見物して回ろう、セシリー」

「それが終わったら、星の聖地の街へ戻って選抜の練習だね、セシリー」

「フィル、遊ぶ時は何もかも忘れて思いっきり遊ぶべきだよ?」

「そうですね。じゃあ、僕も一緒に思いっきり遊ばせていただきます」

「王都を見物なさるの?!わたくしもご一緒してよろしいでしょうか?」

どこからともなく現れたコリンナ様が私の腕を組んできた。いつからいたの?廊下のどこから出てきたの??

「勿論ですよ、ハミルトン嬢」

エクランド様はコリンナ様の登場に嬉しそう。コリンナ様って美人だもんね。


演奏会の翌日、エクランド様とフィル様とコリンナ様と一緒に王都をあちこち見て回り、楽しい一日を過ごしてから星の聖地の街へ戻ってきた。









ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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