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二通の手紙

来ていただいてありがとうございます!




机の上には二通の手紙。一通はポロス学園のエルベ先生から。そしてもう一通はなんと王家から!




「さてセシリー、実は君に王家から招待状が届いているんだけど」

「え?」

お父さん達の馬車を見送った後、エクランド様のお屋敷から帰ろうとしたら呼び止められた。エクランド様の書斎に案内されて戸惑ってると、机の上には綺麗な金の文様の入った質の良い紙の封筒が、銀のトレーに乗せられて置いてある。これが王家からの招待状???

「私にですか?どうしてでしょうか?」

「君達に是非王都でも演奏して欲しいらしいよ」

「私達?」

「君と恐らくフィルにだね。どうやら誰かが国王陛下に伝えたらしいね」

ふふっと笑うエクランド様はとても楽し気に見える。もしかしてこの人が王様に話したりしたのかな?小さな疑いが浮かんでくる。確かアクロアイトの王様は星まつりの星の音楽団の定期公演にもいらしてたはずだから、話をする機会もあったのかもしれない。


「まあ、招待状といってもほぼ命令状だけどね」

「命令……」

「国王陛下の招待を断る人なんていないよね」

「そうですね」

つまり王様の前で演奏しなくちゃいけないってこと?何だか怖い。

「そんなに不安そうな顔をしないで。学生の演奏会に第精霊が現れたとなれば話題になってしまうのは当然だ。ポロス学園の演奏会は数えるほどの貴族しか聞きに来てなかったからね。皆興味津々なんだよ。僕が一緒にいるから、大船に乗った気でいてくれたまえ」

皆って他の貴族の人達もいっぱいいるってこと?ますます嫌かも……。

「終わったら観光もしようか。王都にはまだ行ったことがないだろう?」

「はい。ありがとうございます。楽しみです。よろしくお願いします」

エクランド様の気遣いはとてもありがたかったからなるべく明るく答えたつもりだけど、気分は上がらないままだった。私は見た目よりずっと重たい手紙を受け取って寮に帰った。





「セシリーさん、お帰りなさい。昼食の準備ができてますよ」

「ただいま帰りました。ありがとうございます。マーガレットさん」

「そうそう!朝の便でお手紙が届いてますよ」

マーガレットさんは一通の封書をエプロンのポケットから取り出して渡してくれた。

「ポロス学園から?何だろう」

その場で手紙を開けて確認すると、なんとエルベ先生からで、秋の選抜チームに選ばれたという知らせだった。

「へえ、エルベ先生が今度の演奏会の指揮をするんだ……え?選考会に出るんじゃなくて、もう選ばれたの?どういうこと?」

手紙には演奏曲のタイトルがいくつか書いてあって、夏休みの間に練習しておくようにって言われた。


「あ!やっぱりセシリーにも手紙が来たのね」

「エイミーにも来たの?」

「ええ。星まつりの演奏会は選抜チームの選考会も兼ねてるから、こういうことはあり得るのよ」

エイミーとクラヴィーアを伴奏してた男子生徒、確かオリバー様だったかな、その人も選ばれるだろうってエイミーは嬉しそうだった。


私はエイミーの隣に座って昼食を食べた。寮の食堂には珍しく他の三人の先輩達もいて、それぞれに食事をとってる。……一緒に食べたりしないのかな?ふとお父さんの言葉が思い出されて怖くなる。他の人のことをライバルって思ってるのかもしれない。みんなで楽しく、はやっぱり無理なのかな。無残に弦を切られたリュラ―を思い出して気分が暗くなる。


いやいや駄目だ!せっかくの美味しいご飯が台無しになっちゃう。今日の昼食はレンレンの果汁を使ったドレッシングがかかったたっぷりのサラダに、蒸し鶏のサンドイッチ、冷たいお芋のスープ。寮の食事は豪華で美味しいから毎食楽しみなんだよね。今朝は甘いショコラのパンもオムレツも出たし。

「うーん!今日のご飯も美味しい!」

「セシリーったら!毎回それ言うわよね」

エイミーがクスクス笑ってる。

「だって本当に美味しいんだもん。村じゃこんなに美味しいの毎日食べられないし」

誰に嫌われてるのかわからない。とにかく自衛をしっかりしよう。今後はリュラ―から目を離さないようにして、鍵もかけて。そうだ!今日は街へ鍵を買いに行こう。星降り亭にも行かないと。王都に行くなら、またしばらく仕事に行けなくなってしまうから。


「セシリーは午後からまた練習?選抜チームの曲目も手紙の中にあったわよね?」

「うん。それもやらなきゃなんだけど、まず星降り亭に行かないと」

「そっか。私は一度家に帰るけど、セシリーはお仕事があったんだったわね」

「うん。実は……」

ちょっと怖かったけどエイミーには王都行きのことを話しておこうと思って少し声を落とした。

「え?そうなの?それは……なんだか大変なことになったわね。私達の演奏は精霊様の為のものなのにね」

意外にもエイミーの反応は同情的だった。そのことに少し安心しつつも、やっぱり他の人には聞かれたくなくてなるべく小さな声で話を続けてしまった。

「うん。だからしばらく星降り亭には行けそうもなくて、オーナーに話しに行こうと思ってる」

「そうね。選抜チームの練習もあるし、なかなか落ち着かないわね」

「そうだね」

「夏休みの課題もあるしね」

「…………ああーっ!そうだった!」

そうだった。音楽学校とはいえ、普通の学生なんだから普通に課題も出てるんだった。

「やだ、セシリーったら忘れてたの?」

「ちょっとはやったけど、色々あって最近は忘れてた。それも急いでやらなくちゃ……ああ……」


私は急いで食事を終わらせて、寮の部屋に戻って課題にとりかかった。どの道ランチタイムは忙しいからオーナーに話をする時間はない。星降り亭には夕方の空いてる時間帯に行くとして買い物はその前にしよう。出かけるまでは課題を進めておかなくちゃ!とりあえず二通の手紙は机の上の隅っこに置いておいた。









ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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