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星まつり 虹のアイオルニア

来ていただいてありがとうございます!




「え?オルブライト様と?」

「うん。うちあげなの」

「その恰好で行くつもり?」

「うん。だって学園の演奏会のうちあげだし。制服がいいかなって」

「ダメよ!私のドレス貸してあげるから!」

「えー、いいよ、汚しちゃったら悪いし」

「いいから!とにかく今日は制服なんてぜぇったいにダメ!!」

星まつり最終日の朝、朝食の後にエイミーに部屋に引っ張って行かれた。



待ち合わせの中央広場にはもうすでにフィル様が待っていた。今日も人が多い。

「遅くなってすみません」

「全然遅くないよ。時間通りだ。今日のドレスも似合ってる。……それもエクランド様が?」

「いえ。エイミーが貸してくれたんです。演奏会のうちあげだから制服で来ようと思ってたんですけど、

オルブライト様は私服だからこれが正解だったんですね」

「いい友人だね」

「はい!エイミーとは寮で一緒なんですけど、いつも親切で色々教えてくれるんです!」

エイミーが貸してくれたのは外出用の少し丈が短い白いドレスで、レースのリボンが可愛い。同じレースのリボンまで髪に結んでくれた。今日はお礼にエイミーに何か買って帰ろうと思ってる。


「さて、じゃあ少し早いけどそこら辺の店で昼食にしようか」

「はい」

フィル様が選んだのは食事もとれるカフェで、昨日みたいな高級レストランじゃなかったからちょっとホッとした。本当は星降り亭に行きたかったけど、ノーラのことがあってまだ顔を出す勇気が持てなかった。夏休み期間中は星降り亭で働かせてもらう約束だったし、近いうちに行きたいとは思ってるんだけど。


「まずは乾杯しようか」

「は、はい!」

お酒じゃなくて冷たいお茶とレンレンのジュースがグラスで運ばれてきた。

「演奏会の大成功を祝して」

カチリと軽くグラスが触れ合う音が響く。ちなみに今日も以前のようにフィル様が個室を予約してくれていた。

「あの後ゲイルはどんな感じ?もう本当に機嫌を直してくれたのかな?」

「実はまだゲイルには会ってないんです。でも風も穏やかですし大丈夫だと思います」

冷たいジュースを楽しんでいたら、料理が次々と運ばれてきた。魚のフライやスモークしたハムと野菜が乗った小さなオープンサンド、付け合わせの酸っぱい青桃、星降り亭でも食べたような宝石みたいなカットフルーツのサラダ、そして小さな星を散りばめたような綺麗な青いケーキ。テーブルの上には夢みたいに美しい料理が並んでる。

「うわぁ!綺麗!美味しそう……」

でもこれってかなりお値段が張りそう。持ち合わせで足りるかな?

「あ、僕は男だからね。わかってるよね?」

フィル様は私の心を見透かしたように頬杖をついてにっこり笑った。

「はい、ありがとうございます」

いいのかな?いつか何かでお返しができるといいんだけど、貴族のフィル様にお返しできそうなものが思い浮かばない。

「さあ、食べたら街を見物に行こう。今日で最後だからゆっくり見て回ろう」

「はい。いただきます」

私達は食事を楽しんだ後、おまつりで賑わう街を歩き始めた。



「あ、これ!綺麗」

そしてお値段も手ごろ!私は小さな石のついたネックレスを手に取った。

「ああ、これはたぶん石じゃないね」

フィル様が私の手元を覗き込んだ。

「そうだよ!よくわかってらっしゃるね、坊ちゃん。これはアイオルニアという貝なんだよ!綺麗なもんだろう?」

少ししゃがれた声の露店のおじさんがニコニコと説明してくれる。

「だがね、質のいいもんだとそこらの宝石にも負けないくらいの値段で取引されるんだよ。おじさんのところではそんなのは扱えないがねぇ。わっはっは!」


「これが貝?こんな綺麗な虹色の貝、見たことが無いです」

「確か南の方の海で獲れると本で読んだ覚えがあるな」

「おお!さすがだね!そうだよ。遥か南の海で獲れたものを加工したものなんだ。お嬢さん達恋人同士だんだろう?ペアでどうだい?」

「いえ!私達は恋人同士じゃないです」

「…………」

「…………」

あれ?何?この沈黙……。私何か変なこと言った?まあいいか。気に入っちゃったから私へのご褒美はこれに決定!値段も星降り亭のランチ一回分くらいだし。

「これください!」

「おお!買ってくれるのかい!ありがとう!」

「それなら、僕が」

「いいえ!フィル様。これは自分へのご褒美なので、自分で買わせてください!」

「……そう」

男の人への配慮はわかってるけど、これは私のこだわりだから譲れないのだ。


「まいどあり!」

「ありがと!」

私はアイオルニアのネックレスをお日様の光にかざした。虹色の光彩がゆらゆら動いてとても綺麗だった。その向こうには星の聖地である岩のステージが見える。巨大な岩には白い鉱物がたくさん含まれていて、夏の日差しを反射してキラキラ輝いてる。三日間の定期公演は終わってしまったけど、団員の演奏は絶え間なく続いているみたいで時折風に乗って音楽や歌声が聞こえてくる。今日で流星の期間もおまつりも終わり。来年はどんな年になってるんだろう。もっとリュラ―を上達させてもっと精霊様達に喜んでもらえるようになれるといいな。


「…………じゃあこれを。頑張れよ!坊ちゃん」

「ああ。ありがとう」

「あれ?フィル様も何か買われたんですか?」

「えっ?!ああ、うん。母にお土産をちょっとね」

私がぼんやり考え事をしてる間にフィル様はお母さんにお土産を選んでたみたい。孝行息子だねぇ。なんて村のおばあちゃん達の口癖が頭に浮かんできちゃう。フィル様は本当に優しくて良い人だ。


その後も星まつりの街をフィル様と見て回って、エイミーには星のレースのリボンと星の形の焼き菓子を買って夕方にはフィル様に寮まで送ってもらった。

「それじゃあ、今日は楽しかったです。ありがとうございました、フィル様」

「ああ、うん。あ、ちょっと待って!この後の夏休みはどうするの?お父さん達と家に帰るの?」

「いえ、帰りません。これまでと同じですね。リュラ―の練習をして、勉強して、あと星降り亭で働かせてもらおうと思ってます」

ノーラと顔を合わせるのは気まずいけど、仲直りもしたいしお金も稼いでおきたい。今までは練習に集中してたけど、お金も大事だよね。頑張るぞ。

「そうか。星降り亭か……。うんじゃあまたね」

何故かすごく明るい表情になったフィル様は笑顔を浮かべて帰って行った。


その夜、ベッドに入って今日買った初めての星まつり記念のネックレスを眺めていたら、窓の外を小さな星が流れていった。

「名残り流星かな」

その時唐突に気が付いた。

「あれ?演奏会の反省ってして無くない???」

今日はただ遊んでただけだったような気がするんだけど、これで良かったの??








ここまでお読みいただいてありがとうございます!

明日(3/14)と明後日(3/15)は投稿をお休みします

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