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星まつり ①

来ていただいてありがとうございます!

※フィル視点があります




「本当に外部犯だと思うかい?」

「いいえ」

エクランド伯爵家の応接室は人払いがされている。セシリーの妹とその婚約者は星まつり見物に行って今は不在だ。父親も古い知り合いに会うとかで屋敷にはいない。正直セシリーが二人と一緒なら自分もついて行きたかったが、今はこちらの用件の方が大事だった。


「セシリーのリュラ―を盗み出したのは恐らく学園の誰かかと」

セシリーを動揺させないためにも事務員の言葉を否定せずにいたが、ただ楽器を盗み出すだけならともかく、弦を切って放置するのは盗賊にはあり得ない行動だ。大きなまつりだからおかしな盗人が入り込んでいる可能性もあるが、それはわずかだろう。

「家の者に調べさせたけど、当日はあの天幕に関係者以外が近づいたという情報はまだ出て来てないよ」ハーディー・エクランドはあの後すぐに調査を指示したようだ。

「こちらも同じです」

オルブライト家の家人にも調べさせているが、当日は学園関係者以外の大人は近づいてなかったようだと聞いている。


「…………昔からよくあることなんだよね、才能に対する嫉妬なんてものは。心底くだらないねぇ」

「はい」

ハーディー・エクランドは呆れた口調で話しているが、内心かなりの怒りを抱えているように思えた。自分も同じ思いだった。

「あのような卑怯で卑劣な真似は許せません。セシリーがすぐに立ち直ってくれたから良かったですが……」

テーブルの下で拳を握り締めた。気丈に振舞っていたが、舞台に上がる直前まで彼女の体がふるえていたことを忘れられない。


「愚かだね。普通の音楽家であったなら、ライバルを追い落とせば自分が上にあがれるかもしれないけれどねぇ」

「はい。僕達の音楽は精霊に捧げられるもの。汚れた心で奏でられる曲を精霊は好まない」

「ああ」

「ここは星の聖地。精霊のすまう聖なる土地ですから」

「リュラ―の姫君は大精霊のお気に入りらしいし、きっとただじゃ済まないね」

「せめてこれ以上のことを起こさずに大人しくしておいて欲しいですね……」

これ以上セシリーを傷つけることは許さない。そして犯人は必ず炙り出される。心は音楽に映し出され、精霊達はそれを敏感に感じ取るのだから。

「そうだね。まあ、僕達がやるべき事は決まってる」

「はい。必ずセシリーを守ります」

セシリーには気にしないように言ってあるけれど、さぞ傷付いたことだろう。

「せめて星まつりを楽しめていればいいのですが」







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「いやー、なんかたくさんもらっちゃった!楽しいー!」

あの後も歩いてたら他のお店の人からも声をかけてもらって、焼き菓子や飴を貰ってしまった。

「やっぱり私って有名人?あはは」

…………でもこの人達の中に私のリュラ―を傷つけた人がいるんだ。私は楽し気におまつりの街を歩く人達を眺めた。


なるべく気にしないようにしてたけど、ポロス学園の舞台に近づくにつれて少しだけ怖くなってきた。

「やっぱり一人歩きは止めた方が良かったかな」

ロージーは昔から他の人の演奏には興味が無いし、私は学園のみんなの演奏が聞きたいから別行動するのは仕方ない。せめて誰か知り合いを探そうと天幕の方を見た。あ!マーシーとノーラがいる!今日は二人の演奏日だから楽器を預けに来たのかな?確か二人は夕方に近い時間に演奏予定だったかな。もう見張りが付いてるから私の時みたいにはならないよね。


「マーシー!ノーラ!」

ロープで区切られた観客席から手を振った。ノーラが気が付いてくれて手を振りながらこちらへ来てくれた。その後からマーシーもついてくる。

「セシリー!なんか久しぶりだね」

「うん。ずっと練習ばかりしてたからね。今日の演奏頑張ってね!」

「ありがとう!それとごめん!セシリーを疑ったりして。白馬の精霊って本当にいたんだね」

「あ、私達の演奏、聞きに来てくれたの?」

「星降り亭は近いから少し仕事を抜け出させてもらったんだよ」

「そうなんだ。どうだった?私達の演奏」

「すごかったよ!精霊様もいっぱいで!」

ノーラはいつもより大きな手ぶりでちょっと興奮気味。この後演奏だから少し緊張してるのかもしれない。


「でもいつもと違う楽器だったみたいだけど、あれどうしたの?」

マーシーは緊張のせいか、少し顔色が悪かった。この二人ってなんだか色々正反対な感じ。

「ああ、えっとちょっと色々あって、実家からお父さんと妹が来てて、もうひとつのお母さんの形見のリュラ―を持って来てくれたの。なんかとても良い楽器なんだって。そんなのがあったなんて知らなかったから驚いちゃった」

「高そうな楽器だったね!セシリーのお母さんってどんな人?リュラ―の名手だったとか?」

「うーん。小さい時に亡くなったから私も良く知らないの。お父さんも何も話してくれないし」

「そっか……」

「音がいつもと違ってた。とても良い楽器を持ってるのね。だから精霊様もあんなに喜んでたのね」

そういえば、あの青白い精霊の女の子はリュラ―に触れて懐かしそうにしてたっけ。精霊ってものすごく長生きだって言うし、もしかしたらお母さんと関係があったりして?お父さんに聞いてみようか。……教えてくれない気がする。

「そうかも。きっとそうだわ。演奏が上手くいったのはオルブライト様とお母さんのおかげだと思う。ありがとう、マーシー!二人も演奏頑張ってね!楽しみにしてる!」

「うん。ありがとう」

「じゃあ、後でねー!」

私は二人と別れて観客席の後ろの方へ戻った。置いてある椅子には座らずに噴水の縁に腰掛けて、もらった飴を一つ口の中に入れた。


「ん、美味しい!もうすぐ最初の演奏始まるかな。今日は星の音楽団の定期公演も最終夜だし、絶対朝まで起きていたいな」

夏だから日差しは強いけど、日陰に入れば涼しい風が吹いて来て過ごしやすい。リオ村と比べて気温が高くて夏はかなり暑いって聞いてたけど、実際はそうでもなかった。しばらく待っているとあっという間に観客席は人でいっぱいになり、一組目の演奏が始まった。










ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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