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面会

来ていただいてありがとうございます!




「本当にスゴイわよね!お姉ちゃん!!」


さっきからやたらスゴイを繰り返すロージーは、よそゆきのワンピースを着てエクランド様のお屋敷の応接室の長椅子にちょこんと座ってる。


ここへ来る馬車の中から見た街の風景と比べて

「ウチの村とは全然違う!スゴイ!」

出されたお茶の茶器やお皿やお菓子を見て

「こんなのウチ村には無かった!スゴイ!」

私が着てるポロス学園の制服を見て

「ウチの村で売ってる服と全然違う!スゴイ!」

挙句の果てにはオルブライト様を見て

「…………はぁ、スゴイきれい……」


「もうやめなさいロージー」

「だって、お父さん」

「ロゼット!」

「はぁい」

はぁ。やっとおとなしくなった。私が言っても多分聞かないからお父さんが止めてくれて良かった。ロージーの気持ちはわかるんだけどね。私もこの街へ来た当初はこんな感じだったし。


「騒がしい妹ですみません。オルブライト様」

私は隣の席のオルブライト様に小さな声で話しかけた。

「いや。元気な妹さんだね。随分年下なの?」

「いえ。二歳違いです」

「えっ?そうなんだ。それは失礼した。初等科高学年くらいかと……」

確かにロージーは外見は年齢より幼く見える。それにいくらなんでもはしゃぎすぎだ。私は恥ずかしくなって下を向いた。

「すみません……」

それもこれもお父さんがロージーに甘かったせいなんだよね。私にはお姉ちゃんだからって厳しくしてたのに。


そんなお父さんは大きなお屋敷に落ち着かないのか、やたら周囲を見回してて私の方を見ようともしない。やっぱり私のことが心配で会いに来たって訳じゃなさそう。ロージーがわがまま言ってそれに付き添ってきただけなんだろうな。

「セシリーは随分変わったね」

反対にロージーの隣に座ってるデリクはやたら私をじろじろ見てくる。

「なんていうかあか抜けたよ。髪色も明るくなって」

「そうそう!お姉ちゃん、髪どうしたの?都会にはいい洗髪剤とかあるの?!」

「髪なんてそんなに手入れする余裕ないわ。リュラ―の練習で忙しいから」

前にも誰かに言われた気がするけど、この街へ来てから私の灰色の髪は銀に近い色に変わっていた。水とか食べ物が違うせいかなって自分ではあまり気にしてなかった。


「やあ!お待たせしてしまってすまなかったね。少し仕事が長引いてしまったんだ」

華やかな雰囲気と香りをまとってハーディー・エクランド様が応接室に入って来た。オルブライト様と私、そしてお父さんが立ち上がったのを見て、ロージーとデリクも慌てて立ち上がる。

「ご無沙汰しております。エクランド様」

「久しぶりだね。君はちっとも王都に戻ってこないとお母上が嘆いておられたよ?フィル」

「何分学業や練習などで時間が取れず……。面目ございません」

「いやいや、熱心なのは支援者としても喜ばしいことだ。君達の演奏会の話は王都でも評判だよ」

「そんなに……?」

エクランド様の言葉に反応したのはお父さんだった。眉をひそめて難しい顔をしてる。ああ、またこの顔だ。私がリュラ―を弾いてるといつもこんな顔をしてたっけ。


「さあ!座ってくれたまえ!久しぶりの家族の再会だろう?」

エクランド様に促されて座り直す。少しぎこちなくお互いの近況を軽く報告しあったけど、村の様子は特に変わりが無いみたい。ただ、作物の生育が少し遅れているのが唯一の心配事らしかった。そして驚いたことに三人がこちらに来たのはエクランド様の強い勧めがあったからだった。

「ほら、セシリーはこちらで大活躍だから、是非ご家族にもその姿を見せてあげたくてね」

「いつも気にかけていただいて感謝してます。エクランド様」

エクランド様は未成年の私が親元を離れて生活してるのを心配してくれたんだわ。


正直ロージーとデリクが二人でいるのを見ても全然胸が痛まなかった。どちらかというとお父さんが心ここにあらずといった感じなのに少し傷ついていた。二人に裏切られていたことよりもお父さんがどこまでいってもロージーの味方だったのが悲しかったのかもしれない。


「それで?君たちの出番はいつなんだい?」

「最盛期二日目の夕方です」

最盛期二日目は流星が一番たくさん流れる時期三日間のうちの中日の事だ。ポロス学園の生徒の演奏はその三日間の間の昼頃から夕方にかけて行われる。夕方から朝方にかけては星の音楽団が夜通しの演奏会を行うのでその間を繋ぐ形になる。

「楽しみだね。みんなで聞きに行くからね」

「はい。僕達はこれからまた練習がありますのでこれで失礼します。じゃあ行こうかセシリー」

「あ、は、はい」

オルブライト様、また私の名前……。学園じゃないからいいけど、お父さん達に誤解されないかな。


「おやおや!フィル坊やは随分リュラ―の姫君にご執心のようだね」

「え、お姉ちゃんにご執心?!姫君って……」

からかうようなエクランド様の口調に反応したのはロージーだった。

「ええ。彼女は大事な演奏仲間ですからね」

オルブライト様が表情を崩さずに答えるのを見て、何故かちょっとだけ寂しい気持ちになった。

「なんだぁ……仲間かぁ……」

なんでロージーがホッとしてるのよ。あ、デリクも。何なのよこの二人。


エクランド様のおかげで久しぶりの家族との面会は思ってたよりも和やかに終わった。勝手に家を出たことを責められるかと思ってたけど、案外心配されてなかったみたい。エクランド様がお父さんに説明をしてくれてたのもあったけど、お父さんも妹も私には関心が無かったのかも。私だって同じだからお相子だよね。うん。私はこれからも心置きなく音楽の道を突き進んでやるんだから!

「さあ!本番まであと四日、練習頑張りましょう!オルブライト様」

「フィル」

「……フィル様」

今は学園に帰る馬車の中だから誰かに聞かれる心配はないかな。フィル様呼びは相変わらず慣れないけど。

「うん、頑張ろう。お父上にもセシリーのスゴイところを見てもらいたいからね」

「……そうですね」

お父さんはそんなのを見てもたぶん喜ばないと思う。だから今回はゲイルの為に頑張ろうと思ってる。フィル様と私は星まつりの本番を目指して一生懸命練習を続けたんだ。













ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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