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来ていただいてありがとうございます!




「不思議な場所……あの光って……」

馬車の窓から見えるのは不思議な景色。見渡せる場所にはたくさんの光の球体が飛び回ってる。

「ああ!あれは全て精霊だよ」

向かい合って座る馬車の中でエクランド様が教えてくれた。開いた窓から入って来る風がエクランド様の金色の髪を優しく揺らしてる。

「え……あれ全部?!」

「うん。ここは精霊達の集う場所。『星の聖地』だからね」


風が吹き渡る草原と花畑の中に大きな舞台のような岩。その上には石造りの建物がある。岩肌に沿って階段が設置されていて下に立つ大きなお城のような建物と岩の頂上が行き来できるようになってる。


「あの建物は通称『星音の宮』。星の音楽団の拠点だ。セシリーが通う学園も隣接した敷地にあるんだよ」

星の音楽団。私が目標とする場所。私は両手をギュッと握りしめた。緊張もあるけど自分の力がどこまで通用するか楽しみでもあった。馬車は程なくして岩を迂回して石造りの門を通り大きな街へ入った。岩の麓の建物群のうち、お店などが並ぶ街の中心に近い場所で私は馬車を下りた。門扉にはポロス学園と古い字体で記してある。どうやらここが私が入る学園らしい。

「じゃあ、僕はこのまま王都へ向かうから。後は頑張ってね」

「はい!ここまで送っていただいてありがとうございました」

「君ならきっと大丈夫だよ~」

窓から手を振りながら微笑むエクランド様を載せた馬車は王都への道を走って行った。私は鞄とリュラー(竪琴)の入ったケースを持ち上げ、大切な紹介状を握りしめながらポロス学園へ足を踏み入れた。




「つ、疲れた……。まさかいきなり試験を受けることになるなんて……」

ベッドに身を投げ出して私はやっと人心地ついた。古い木枠の小さな窓からは精霊達の舞う草原が遠くに見える。


ポロス学園の事務室へ通されて、紹介状を検分されて、楽器の種類を聞かれて別室に案内されて、いきなり演奏させられた。ここまで本当に流れ作業。後で聞いたら入学希望の人は後を絶たないみたいで、ポロス学園への編入試験は日常茶飯事らしい。リュラ―を弾く人は珍しいらしく、試験官の若い男の先生にとても驚かれた。試験官は私の演奏後「いいんじゃないか」の一言を残してすぐに部屋から出て行ってしまった。状況が飲み込めずに茫然としていると、案内してくれた事務の人に合格を告げられた。こんなに簡単でいいの?!ちょっとホッとしていたら今度はさらにまた別の部屋に案内されて今度は学力試験を受けた。…………こっちはギリギリだったらしい。別の試験官の今度はおじいちゃん先生がちょっと苦い顔をしてた。危ない危ない……。




「はあ……合格出来て良かった。寮にも入れたし、これで衣食住には困らずに勉強できるわ」

私にあてがわれたポロス学園の女子寮は一人部屋だった。授業中で寮に人がいないせいかしんと静まり返ってる。小さな部屋だけどベッドは清潔だし机もクローゼットもある。食事は食堂でとれるし、この街には身寄りもなく、持ち金も乏しい私にはありがたい環境だった。


「寮費は補助が出るけど、学費は貸付かぁ。落ち着いたら勉強しながら仕事しなくちゃ」

借金を抱えての生活にはなるけどきっと大丈夫。元々もし一回で合格できなくても、このくらいの大きな街だったら働き口はあるはずだから、街で暮らしつつ働きながらまた試験を受けようって考えてたんだよね。

「お父さんとロージー、ちゃんとご飯食べてるかな……。ううん!これからは自分の事をしっかり頑張るんだ……。あの二人は仲良し親子なんだから平気よね……。それにしてもここまで遠かったなぁ……リオ村って本当に辺境なんだ……あ、そうだ!手紙!エクランド様に試験の結果をご報告しなくちゃ……それから、教科書も読んで……リュラ―の練習も………………」

旅の疲れもあってか、つらつらと考え事をしてるうちにいつの間にかそのまま眠り込んでしまった。






目が覚めたのかそれとも夢なのかよくわからない。暗い部屋の中にたくさんの精霊達が飛び交ってるのが見える。その中にひときわ大きな白い光の球体がある。それは私に近づいて来て眠ってる私を覗き込んでいるようだった。

「早く聞かせてよ」

そんな風に言われた気がする。






「うー、変な夢を見た気がする……。結局夕食は食べ損ねちゃったし、お腹空いたわ」

翌朝、身支度を整えて支給された制服に着替えて女子寮の食堂へ行った。これから授業を受けるのにお腹が鳴ったら恥ずかしい。しっかり食べておかなくちゃ!教えてもらった時間に食堂へ行くと意外な事実を知った。なんと今この女子寮に入っているのは私を含めて五人だけなんだって。教えてくれたのは私と同い年の声楽科のエイミー。エイミーはこの春にポロス学園に入学した西の方の町出身の女の子だった。

「セシリーは器楽科ね。クラスが違うのは残念だけど、良かったら仲良くしてね」

「ええ。こちらこそよろしくね!すぐに友達ができるなんて幸運だわ!嬉しい!」

私はエイミーとおしゃべりしながら楽しく朝食をとった。うん。幸先がいいわ。楽しい学園生活になりそう!私はワクワクしながらエイミーと一緒に学園の校舎に向かった。あれ?そういえば他の三人ってどうしていなかったんだろう?


この時の私は色々スムーズにいってて、ちょっと浮かれていたんだと思う。








ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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