お願いがありまして
来ていただいてありがとうございます!
夏休み前になるとクラスの話題は星まつりのこと一色になった。
「今年は誰と一緒にする?」
「何の曲をやろうか?」
「早く誘わないと取られちゃう!」
マーシーやノーラ、それにエイミーと一緒のグループに入れてもらえばいいかななんて、のんきに考えていた私は、ゲイルの希望を叶えるためにオルブライト様に何て切り出そうかまだ考えていた。だって話しかけようとしても最近はいつも女の子達に囲まれてて話しかける隙が無い。第二楽器の授業の時に頼めばいいかって思ってたんだけど、なんと夏休み前は授業がなくなって、全てが星まつりの準備に費やされることになってた。知らなかった。年間行事予定には書いてなかったよ、こんなの。ちなみに星まつりでの演奏は学園の評価にはあまり響かないけれど、秋の選抜チームへの推薦には影響があるから、みんなが仲間探しにかなり必死になってる。なるべく上手な人と組んだ方が有利だもんね。
星まつりは毎年星の聖地で行われる盛大なおまつりで、流星群のある夏に開催される。メインのイベントはもちろん岩のステージでの星の音楽団の定期演奏会。しかも数日間夜通し!それに合わせて星の聖地の街はたくさんの催しがあったり世界各地から行商人がやってきてお店を開いたり、それらを目当てにたくさんの観光客が訪れたりとそれはもう大騒ぎになる。
とりあえず先に星まつりの方を考えようと思って、ノーラとマーシーに声を掛けた。そしたらマーシーに断られちゃったんだ。マーシーに嫌われたかマーシーが何かで私に怒ってるかは確実なのかもしれない。
「ごめんね。やりたい曲にリュラ―のパートが無いから」
って素っ気なく言われてしまったんだ。しかもマーシーは私の方を見てくれなかった。
「ごめんね、マーシー。ひょっとして私何かしちゃった?」
「別に何も……ただリュラ―は演奏曲のレパートリーが少ないから。それだけ」
それは確かにそうだから、それ以上無理に一緒に演奏して欲しいって頼むことは出来なかった。
「マーシー!流石に態度悪いよ?」
ノーラが窘めてくれたんだけど、マーシーはそのまま教室を出て行っちゃった。
「ごめん、セシリー。あの子最近情緒不安定で変なんだ。セシリーは悪くないから気にしないで」
ノーラはそう言ってマーシーの後を追いかけて行った。
当てが外れてしまった私は取り残されて気が付けば、一緒に演奏する仲間が見つからなくなってしまった。星まつりはソロでも大丈夫だから、寂しいけどそれはなんとかしようと思ってる。でもゲイルの方は何とかオルブライト様に頼まないと……。ああ、色々と気が重い……。
「ごめん。今から個人練習だから。あともう一緒にやる人は決めてるから」
やや冷たく突き放す声が廊下に響いた。肩を落として歩き去っていく女の子達。うわ……。これはちょっと話しかけづらいかも。オルブライト様って練習の邪魔をされるのが嫌いなんだよね。でもあまり遅くなるとゲイルの機嫌が悪くなっていっちゃいそうだし、ここは勇気を出そう!私は意を決して小練習室のドアをノックした。
「……どうぞ」
あああ、なんかすごく大きいため息をつかれた気がする。不機嫌そうな銀髪の美青年がこちらを振り返る。
「何か用……ってなんだ、セ、オルコット嬢か!珍しいね、僕の練習室を訪ねてくるなんて。さあ、どうぞ」
良かった。そんなに機嫌は悪くなさそう。ドアは開けたまま中に入る。確か貴族の人達は未婚の男女が密室にいるのは良くないはず。最近エイミーに教わったんだ。
「オルブライト様、練習のお邪魔をしてごめんなさい。実はお願いがありまして……」
「何?」
なんかオルブライト様の深い青い目がキラキラしてる?戸惑いつつも事情を話すとしばらくの間何かを考え込んでしまった。やっぱり無理なお願いだったかな。
「一角の白馬の姿の精霊……か。セ、いやオルコット嬢とどういう関係なの?」
「えっと、実はリオ村の精霊の泉に住んでる精霊様で、私についてこちらに来てしまったんです。それで時々私の寮の部屋とかを訪ねてくるようになって」
「それで演奏を所望されたということか。にしてもクラス発表の時の演奏が不評だったのはいただけないことだな。確かに集まって来た精霊の数は少なかったけど……」
「はい。あとゲイルが不機嫌になると風が強くなるみたいで……。あまり大きな影響が出ないうちにあの子の希望を叶えてあげたいんです。何とかお願いできないでしょうか?」
「あの子か……。もちろんいいよ。選ばれて光栄だ。精霊の希望なら僕達が演奏しない選択肢はない。それに」
「?」
「約束したよね?いつかあの曲を一緒に演奏してくれるって」
「あ……」
忘れてた。
「でもあの曲は春の曲で……」
ゲイルが聞きたがってるのは風の精霊様を讃える曲なんだよね。今回は星まつりのこともあるから、とても練習してる時間がない。
「うん、わかってる。だから今回はその精霊のゲイルの為に選曲しよう」
何故かウキウキしてるオルブライト様。
「ちょうどいいから星まつりの演奏をそれで兼ねてしまわないか?」
それって二人でチームを組むってこと?クラスのご令嬢様達の視線が……。できればそれは避けたい。
「でも、オルブライト様には他にもたくさん声がかかってるんでしょう?私の方は星まつりの後でも……」
ゲイルにはきちんと練習してからって言えばわかってくれるかもしれないし。
「精霊の機嫌を損ねることは避けたい。話を聞く限りかなり力の強い精霊のようだし」
「それは……そうかもしれません」
確かにあの夜の強い風は少し怖さを感じるものだった。悩むけど練習時間を考えると確かにそれが一番効率がいいのかもしれない。うう……仕方ないか。
「ではよろしくお願いします。オルブライト様」
「うん。頑張ろう、オルコット嬢」
これでなんとかゲイルのご機嫌の方は何とかなりそう。明日からクラスのご令嬢方の視線が怖いけど。
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