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問題解決?

来ていただいてありがとうございます!




「駄目だな。ヴィオラ、もっと呼吸(いき)を合わせろ。できないなら、今からでももっと簡単な楽曲に変更した方がいい」

指揮棒を置いてエルベ先生が大練習室を出て行ってしまった。相変わらずクラスでの演奏が上手くいかない。


雨の季節は終わりを迎えつつありクラス発表の時期が近づいていた。


「ちょっと来てくださる?」

コリンナ・ハミルトン様がマーシーとノーラに向かって仁王立ちになった。え?え?これってまずいんじゃ……。不安になった私ハープを置いて二人に近づこうとした。

「待って」

オルブライト様に止められた。

「でも……」

「ヴィオラのことはヴィオラの中で解決すべきだ」

険悪そうな雰囲気を放っておくのは良くないと思ったんだけど、オルブライト様の言葉で踏みとどまった。


しばらくの後、ハミルトン様に連れられてヴィオラのチームが大練習室に戻って来た時には何故かしっかりと音を合わせることができていた。クラス発表の練習は滞りなく進んで、なんとか発表に間に合いそう。練習後、ノーラがこっそり教えてくれたんだけど、ハミルトン様がマーシーに今までの態度の事を謝ったそうだ。その他にも二人だけで少し話し合った結果、仲直りができたんだそう。気になるのはマーシーが練習後に私達と顔を合わせもせずに大練習室を出て行ってしまったこと。バツが悪いんだろうってノーラは苦笑いしてたけど、私は最近マーシーとほとんど話せていないことにその時に気が付いた。



放課後、もう少しクラス発表の練習をしようと居残っていたら、練習室にオルブライト様が入って来た。

「まだ練習するの?」

「はい。ハープはまだ全然練習が足りてないので」

今回の楽曲での出番はほんのわずかだけど、だからといってそこを失敗する訳にはいかない。絶対にみんなの足を引っ張りたくない。

「いつも真面目だね」

オルブライト様は時々ハープのアドバイスをしに来てくれる。今回はクラヴィーアの担当だけど、やっぱり自分の楽器のことだから心配になるんだろうね。でも、いつまでいるんだろう?私の練習に最後まで付き合ってくれるつもりなんだろうか……?やっぱり楽器を貸し出してもらって寮の練習室で続きをやろうかな。今日は終わりにすることを告げて楽器や譜面台を片付け始めると、オルブライト様は嬉しそうな顔を見せた。用事があるなら無理しなくてもいいのにね。私って信用無いのかな?


「そういえばクラス発表、上手くいきそうで良かったです。ハミルトン様は凄いですね!クラスの為に率先して動かれて、みんなを説得なさって。さすがはオルブライト様の婚約者様ですね」

「え?」

「それに星の歌姫様の妹さんなんですよね。本当にすごいです!」

「ちょっと待ってセシリー、それどういう意味(こと)?」

あっ、呼び捨て?ここ学園内なんだけどな。私は慌てて練習室の扉の方を見た。人の気配は無さそうだし、一応防音室になってるから大丈夫だよね?


「え?ですから、コリンナ様はクララ・ハミルトン様の妹さんなんですよね?」

違ったっけ?その威光を笠に着て威張ってるってマーシーがこぼしてたことがあるんだけど。

「違う!その前!ハミルトン嬢が誰の婚約者だって?」

「オルブライト様の婚約者なんですよね?」

「違う違う!ないよ!絶対に無い!」

「…………」

オルブライト様の迫力に言葉が出なかった。

「そんな縁談(はなし)は無い。僕は星の音楽団を目指してる。父もそれを了承して全ての縁談は凍結したと言ってくれてる。だからあり得ない!」

オルブライト様はハァハァと息を切らしてる。


じゃあ二人が婚約間近だというのは単なる噂?どちらにしてもこんなにむきにならなくてもいいのに。

「オルブライト様……」

「フィルだ!」

「そのことなんですけれど、やっぱり私がお名前でお呼びするのは良くないと思うんです」

「何故?」

「私は平民です。身分が違いすぎますから。いくらなんでも恐れ多いです」

「しかし、星の音楽団では身分の差は……」

「ここはまだポロス学園です。貴族の方々のほうが圧倒的に多いこの場所で、私達が身分を気にしないというのは難しいです」

「……そうか。無理を言ってすまない」

わかってくれたみたいでホッとした。さすがにこれ以上クラスのご令嬢様方に睨まれるのは避けたいもんね。

「いえ。では私はそろそろ……」

「これから時間あるよね?」

「へ?」






「学園の外ならいいんだよね?セシリー」

「…………」

何でこうなるの?


目の前にはにこにこ顔のオルブライト様。そしてレースのクロスがかかったテーブル。品の良いお花の柄の茶器のセット。銀のトレーの上にはそれぞれ違う種類のフルーツがのったケーキが三個。しかもケーキは割と大きめ。

「約束したよね?フルーツケーキの美味しい店に行くって」

うん。確かにそんなことを言ってたけど、それって有効だったんだ。


オルブライト様が楽器の手入れ用品が安く買えるお店を教えてくれるって一緒に街へ行くことになった。それはまあ確かに安かったし助かったから良かったんだけど、問題はその後。まだ明るいし一人で帰ろうとしたら、引き留められてこのカフェに連れて来られてしまった。どうやら予約をしてあったみたいで、店の奥の半個室みたいなところへ通されて驚いた。


「僕が誘ったんだからここはごちそうするよ。僕はいいから好きなだけ食べて」

ちょっと待って?これ全部私の分?!オルブライト様はケーキに全く手を付ける気配が無くて優雅にお茶を飲んでる。

「後からもっと持ってこさせるから」

「い、いえ!もう十分です!!」

練習終わりでお腹は空いてるけどさすがにこの量は多すぎない?とりあえず目の前の赤い果物の乗ったショコラのケーキをお皿にとった。一口食べると甘さと甘酸っぱさが口の中に広がって幸せな気持ちになった。ただ、やたらオルブライト様が見つめてきて緊張してしまう。

「美味しい?」

「は、はい。とても美味しいです」

「……そう」

なんで少し残念そうなんだろう?よくわからないけど、せっかくご馳走してくれるんだから残しちゃいけないって思って、三つともケーキを食べてしまった。お腹が苦しい。もちろんその日は寮での夕食は食べられなかったよ……。









ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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