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帰って来たゲイル

来ていただいてありがとうございます!





ぽかぽかと暖かくてよく晴れた青空の日。とうとうリュラ―とハープの演奏会の本番の日、星の聖地の岩のステージから少し離れた南の草原は様々な色や形の花が咲き競い、精霊達が飛び回っていた。


「わ、見てる人がいっぱい……」

「星の音楽団の演奏会だ。これくらいは普通だ。それよりも今日は、その……」

「どうかしましたか?オルブライト様」

「い、いや、今日は頑張ろう」

「はい。皆さんの足を引っ張らないよう頑張ります」

「あら、そんなに固くならないで。練習通りにやれば大丈夫よ」

「そうそう!こういうのは楽しんだもん勝ち!」

緊張でガチガチになってる私にジョディ―さんとクラークさんは優しく明るく笑いかけてくれた。みんなで頷きあって演奏が始まった。


今回の選曲は五曲で、内三曲は花の精霊様を讃える曲。それから春風の精霊様を讃える曲。最後に春の温かな光に感謝を捧げる曲。演奏の途中から精霊様達が集まって来てたけど、終わるころには無数の精霊様達の大乱舞になってた。

「すごい!綺麗」

「私達の演奏、お喜びいただけたみたいね、セシリー」

「そうですね、ジュディーさん」

「あなた達に声をかけて良かったわ」

「私も呼んでもらえて良かったです!とても勉強になりました。それに衣装もお借りしちゃってありがとうございました」

私は演奏用のドレスなんて持ってないから制服で出ようと思ってたんだけど、とても綺麗な若草色のワンピースドレスを貸してもらったんだ。こんな綺麗なドレスを着たこと無いからとても嬉しかった。

「いいのよ!私が若い頃着てたやつだけど、サイズが合って良かったわ。それにとっても似合ってる!ねえフィル、クラーク」

「うん。俺もそう思う!やっぱり女の子は華やかなのがいいね」

「はい。セシリーは着飾る必要はないですが、そういったドレスも似合うと思います」

「…………あ、ありがとうございます。お二人とも」

オルブライト様の言い方は、平民にドレスは必要ないって言われたみたいでちょっと引っかかったけど、似合うって言われたのは嬉しいかな。


「あははっ!真っ赤になってる。セシリーはかっわいいなぁ!」

「クラークさん、やめてくださいよぅ」

クラークさんは笑いながら私の頭を撫でた。年もそんなに変わらないのにクラークさんは私を小さい子みたいに扱ってくる。そんなクラークさんの手首をパシッとオルブライト様が掴んだ。

「クラークさん、女性にみだりに触れるのはマナー違反です」

「悪い悪い!俺平民だからさ、貴族様のルールはよくわかんないや」

あれ?一瞬二人の間の空気がピリついたような気がする。

「ほらほら!遊んでないで!撤収するわよ!」

ジュディーさんの声掛けでそんな空気も霧散した。何だったんだろう、今の。




「セシリー!!」

楽器をしまっていると光と花の草原を風のように白馬が走って来た。あれは……ゲイル!!


「え?!あれ何かしら?馬?」

「馬ですね、ジョディ―姉さん」

「角が生えていますし、馬は光らないし何より喋らないと思います」

「結構冷静に観察してるんだね、フィル」

 

「セシリー!!!」

ゲイルは一直線に私の元へやって来た。

「やっぱりゲイルだ!どうしたの?今までどこにいたの?」

「ちょっと精霊界に」

「精霊界?」

「うん。後で説明するよ」


「ちょっとちょっと!この精霊様、精霊様よね?何で馬の姿?どの属性の精霊様なの?セシリーの知り合い?」

「へええ!白馬の姿の精霊なんて初めて見るなぁ」

「…………」

驚いて質問攻めのジュディーさん、のんびりと見回すクラークさん、困惑したように私とゲイルを見比べるオルブライト様と三者三葉の反応だった。

「ええっと、私の故郷の精霊様で、なんか一緒についてきちゃってて……」

「僕もう行く!じゃあ後でね!セシリー」

「ちょっと、ゲイル?…………行っちゃった」

ゲイルは来た時と同じように風のように草原の彼方へ走り去っていった。

「本当に疾風のようね……」

ジュディーさんはほうっとため息をついた。




その夜、星降り亭でみんなで夕食のテーブルを囲むことになった。

「うちあげをするわよ!」

ってジュディーさんに言われて何のことかわからなかったけど、

「慰労会のようなものだよ」

ってオルブライト様が教えてくれた。

「そんなかたくるっしいものじゃないよ。お疲れ様会みたいな感じだよ」

クラークさんの説明で更に分かりやすくなった。私は仕事があるから不参加にしようと思ってたら、オーナーがお休みしていいって言ってくれた。

「今日の演奏も素晴らしかった。今夜はゆっくり休んでくださいね」

って笑ってくれて、今日も星降り亭のオーナーは神だった。


演奏会が無事終わった安心感もあってかご飯がとても美味しくていっぱい食べちゃった。明日からは節制しよう。ノーラやエイミーも演奏を聞きに来てくれてたみたいで、仕事の合間にテーブルまで来て口々に褒めてくれた。精霊様達だけじゃなくて観客の皆さんの反応も良かったみたい。ゲイルのことを質問攻めにあったのはちょっと困ったけど、私にとって初めての「うちあげ」は和やかに楽しく終わった。



「さすがにくたびれたわ……ん?」

夜に寮へ帰って来てお風呂に入って眠る支度をしていると窓の外に気配がする。ちなみに今日もオルブライト様は寮まで私を送ってくれた。お疲れだろうからって断ったのに。


窓を開けて外を見ると寮の中庭にゲイルがいた。

「どうしたの?ずっと姿を見せなかったね、ゲイル」

声をかけると嬉しそうに耳を動かして部屋の中へ入ってきた。

「言ったでしょ?挨拶しに行ってたんだよ。こっちの精霊にさ」

「ずいぶん遠くまで行ったんだね。もう何日も経ったよ?」

「えー?これでもすぐに帰ってきたんだよ?」

「そうなの?」

やっぱり精霊の世界って遠いみたい。ゲイルは風みたいに走るのにそんなに時間がかかるんだもんね。


「セシリー、また上手になったね」

「演奏、聞いてくれてたの?」

「うん。向こうから見てた。あれ?その曲は弾いてなかったよね」

ゲイルはリントン先生から借りた楽譜を私がうつしたものを机の上に見つけた。

「今から弾いてよ」

「今は夜だしダメだよ」

「いつ?いつ弾くの?」

「いつかね。オルブライト様と演奏する約束をしたけど……もしかしたらその日は来ないかも」

だって相手は貴族様だし、今回は特別でこの先一緒にしかも二人だけで演奏なんてことある訳ないし。なんとなくそう考えてちょっとだけ寂しい気持ちになった。今日はみんなで演奏してすごく楽しかったから。……そうか。星の音楽団に入れば今日みたいな演奏ができるんだ!私はますます星の音楽団に入りたい気持ちが強くなった。


「ええ?!だったら今!今弾いてよー」

「これは二重奏だから一人では無理かなー?別の曲なら明日弾いてあげるよ」

「しょうがないなぁ。それでいいよ。あした、あしたー!」

「ちょっと、ゲイル!夜なんだからそろそろ止めて!それに私の部屋は狭いんだから、そんなに動き回らないで」


その後もゲイルの話を聞きながら、心地よい声と疲れでいつの間にか眠ってしまった。その夜見た夢は起きた時に忘れてしまったけど、とても楽しい夢だった気がする。









ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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