避けられてる気がする
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☆フィル・フィランダー・オルブライト視点です(モノローグです)
どうも避けられてるような気がする。というか嫌われてるまである気がする……。
自慢じゃないけれど、この容姿のせいか女性からは無理やり優しくされることが多かった。だからずっと余計な好意を持たれないように行動してきた。
ポロス学園に入っても、特にクラスメイトや選抜チームで親しげに話しかけてくる女子生徒は身分を問わず多かった。なるべく必要最低限の会話で済ませ、関わらないようにはしていた。どうせ父親に決められた縁談の話が入ってくるのだから。
それでも女性から敵意を持たれるようなことはなかったのに……。
セシリー・オルコット。支援者にスカウトされた中途編入者でリュラーの奏者。好きな楽器を選択できる彼女が羨ましかった。星の音楽団の定期演奏会ではメインの楽器になりづらいハープの奏者。それを目指すことを許されない僕は父の命令でクラヴィーアを選ばざるを得ないから。何人もの偉大な奏者が現役で活躍しているクラヴィーアで僕が芽を出すのはかなり難しいというのに。
ポロス学園は星の音楽団を目指すための音楽学校だ。でも団員になれるのは卒業生の中でも毎年一握り。そのせいか、学園を将来の相手を見つけるための場だと考えてる人間も多いようだ。もちろんある程度の演奏技術を持った者達が集まってきているはずだから合奏のレベルは高い。しかし僕達の音楽は精霊に捧げられるもの。精霊に気に入られるような音楽を奏でられなければ意味が無い。そのことを失念している生徒が多いような気がする。なんとなくだけど、本当に自分の音楽が好きで演奏や歌を楽しんでいる者の所へはたくさんの精霊が集まって来るように感じてる。
あの時の彼女の演奏はそうだった。演奏の前にハミルトン嬢があんな騒ぎを起こしたというのに、それをものともしないで演奏しきった彼女は素晴らしかったと思う。あの時は聖地近くの広場で友人のヴィオラ奏者が星の音楽団の演奏会に招かれており、たまたま一緒だったハミルトン嬢や他の生徒と学園の近くまで帰って来たところだった。ハミルトン嬢は姉上が星の音楽団の歌姫を務めているせいか、自分にも他者にもとても厳しいところがある。そんな彼女も帰り道ではオルコット嬢の演奏を絶賛していた。
今回の演奏会に誘われたのは本当に嬉しかった。堂々と好きな楽器を演奏できる。音楽団からの依頼であれば、面子重視の父からもすぐに許可が下りた。それどころか数年ぶりに一族の中から星の音楽団へ入団可能性のある者が現れたと喜ばれたほどだ。しかも自分の息子が星の音楽団へ入るとなればオルブライト家への国王陛下の覚えもめでたくなるのだから。それと同時に父や家族からのプレッシャーも大きくなったけれど。
せっかくの機会だしリントン先生から借りた楽譜も演奏してみたい。あの曲は祖母が生前好きだと言っていた曲だから。前は断られてしまったけど、今回また演奏仲間になれたし、オルコット嬢のリュラーは素晴らしいから一緒にやってみたい。でも一度断ってしまった手前、中々言い出すことができずにいた。女性の一人歩きが心配だったのもあるけれど、きっかけをつくりたくてオルコット嬢を仕事先まで毎日送っていった。
警戒感。僕が彼女から感じた感情はそれだった。それも仕方がないだろう。恋人でも婚約者でもない男につきまとわれては、不審がられて当たり前だ。彼女とは会話も無くただ一緒に歩くだけ。大体いつも女性の方から話題を振ってもらっていたので、どんな話をすればいいのか分からない。差別とかではなく彼女は貴族令嬢でもないから、お茶会やダンスパーティー、ドレスの話題なんてできない。それに女性の興味のあることなんて僕もよく知らない。本当に困った……。
演奏会まであと三日という日。僕は意を決してオルコット嬢に話しかけた。あの曲を一緒に演奏して欲しいと。何故か僕が身分の低いものは音楽団に相応しくないと考えてると思われていたようだ。酷い誤解だった。どうしてそう思われたのかは不思議だったけど、誤解を解くことができてよかった。しかもいつか一緒に演奏してくれる約束まで取り付けることができた。恐らくオルコット嬢は試験をパスして星の音楽団に入るだろう。厳しい道だけど僕もそれを目標に頑張ろうと思う。浮かれてばかりはいられない。とにかく今は演奏会を成功させることが大切だ。星の音楽団の入団試験を受けるための推薦を勝ち得るにはこういったチャンスを確実にものにしていかなくてはならないのだから。
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