星の音楽団の二人
来ていただいてありがとうございます!
「お二人は星の音楽団の方なんですか?」
なんと私を訪ねてきたのは星の音楽団の団員さん達だった。
「そうだよ!ほらジョディ―姉さん、先に自己紹介しないと。いきなりだとオルコットさんが驚いてるよ」
やせ型の背の高い眼鏡の男の人が立ち上がる。隣に座っていた小柄な銀髪の女の人もそれに続いた。
「初めまして、セシリー・オルコットさん。ジョディ―・オズホーンよ。ハープの奏者なの」
「俺はクラーク・リプセット。リュラ―を担当してる。オルコットさんと同じだね」
「初めまして。ポロス学園一年のセシリー・オルコットです。あの、どうして私の名前を?」
戸惑う私の前で二人は顔を見合わせて笑いあった。
寮母さんが運んできてくれたお茶を飲みながらオズホーンさんとリプセットさんのお話を聞いた。
「学園の演奏会聞かせてもらったわ」
「え?」
「俺は新年の広場での演奏も聞かせてもらった。実はあの時から目を付けてたんだ」
「そ、そうなんですか?」
たくさんの観客の中にこの人達もいたんだ……。それはそうか。だってここは星の聖地で星の音楽団の本拠地があるところなんだから。
「こら!言い方!!」
「すんません、ジョディ―姉さん」
「ご姉弟なんですか?」
「ううん、違うよ。姉弟子みたいな?師匠が一緒なんだ」
「ああ、なるほど!」
オズホーンさんは年齢を教えてくれなかったけど、リプセットさんより年上らしい。そんなリプセットさんは今十九歳でポロス学園出身ではなく、支援者からスカウトされて直接入団試験を受けて合格した天才なんだって。
「天才なんて照れるなぁ」
「それで本題なんだけど、今度の私達の演奏会に参加してくれないかしら?」
「俺達星の音楽団では定期演奏会の他に団員が有志でグループを結成して星の聖地でミニ演奏会をしてるんだよ」
「はい。それは知っています。けどどうして私を?私はただの学生で……」
「それは将来有望だと思ったからよ!」
オズホーンさんが指を立ててウィンクした。かわいいっ!それに褒められて嬉しい。
「実はね、結構リュラ―の奏者って貴重なんだよ。楽曲が少ないせいか選ぶ人が少ないんだよね」
「そうなんですか?」
私にとってもそれは深刻な問題だ。楽曲が少ないってことは星の音楽団に入れても演奏会に参加する機会が減ってしまうかもしれないんだ。
「そこでよ!私達少数派の楽器の奏者で演奏会をして存在を示したいの!!そうすれば作曲家も私達に注目するはず!!」
「そう!俺達も目立ちたい!!」
あれ?そんな理由?この人達大丈夫な人達?正直、春の準備休みは星降り亭で仕事もあるし、どうしよ……。
「もちろん演奏代としてお給料も出るわよ!星の音楽団の依頼の仕事なら学園も許可してるはず」
「是非やらせてください!」
「ははは!げんきんだねぇ。いいよ!そういうの。俺好きだなぁ」
「よかったわー。楽しみね。はい、これ楽譜ね。練習は星音の宮でするから春休みに入ったら朝から来てね」
陽気で明るい音楽団の二人はそう言って帰って行った。って休み初日の朝から?!私はその後外出許可を貰い、星降り亭へ急いだ。オーナーに事情を説明して仕事は夕方からにしてもらった。オーナーに謝ると
「すごいじゃないか!星の音楽団員から声がかかるなんて!私も嬉しいよ!」
ってまるで自分のことのように喜んでくれた。オーナー、本当にいい人だ。
オズホーンさんとリプセットさんが来た日から、渡された楽譜の練習を始めて、何とか形にして練習へ向かった。星の音楽団の本拠地は巨大な岩のステージにくっつけて建てられてるお城のような建物で、近づくと色々な楽器の音が聞こえてくる。どうやら外で練習をしてる人達も結構いるみたい。エントランスではリプセットさんが待っていてくれた。
「やあ!オルコットさん。よく来たね!」
「おはようございます。リプセットさん」
「ははは!クラークでいいよ!はい。これ入館証。明日からはこれで入れるからね」
リプセットさんは星の音楽団のローブについてるエンブレムと同じ模様のバッチをくれた。笑うとクラークさんの無造作に伸ばした薄茶色の髪がさらさらと揺れた。朝日を浴びて時々金髪にも見える。
「ありがとうございます、クラークさん。じゃあ私もセシリーと呼んでください」
「うん。もうちょっと待っててね、セシリーさん。もう一人来るから」
「え?もう一人ですか?」
「うん。オルブライト君にも声をかけたんだよね。言ってなかったけ?」
聞いてない!
「……ええ?!オルブライト様ですか?でもあの人はクラヴィーアの奏者ですよ?」
「そうだけど……おっと来たみたいだね!」
「え……あ、本当だ」
門から入って来るのは間違いなくオルブライト様だった。朝日に銀髪が眩しい……。
「遅くなりました。おはようございます」
「おはよう!オルブライト君」
オルブライト様、ケース入りのハープを載せた台車を引いてる。自分で持って来たんだ……。いや私も自分の楽器は持ってきてるけど。貴族なのに従者とか召使に持たせないんだ。私はかなり意外に思った。それにしても私と一緒に演奏なんてよくこの依頼を受けたなぁ。星の音楽団の依頼だから断れなかった?うーん、やっぱり私断れば良かったかな?空気悪い中で演奏しても精霊様が喜んでくれるような演奏ができない気がするし……、でも今更辞めますなんて心証悪いよね。
「さあ、行こう!ジョディ―姉さんが待ってるから」
「何してる?練習が始まるから、行こう。オルコット嬢」
「え、は、はい」
ぐるぐると考え込んでたら、クラークさんとオルブライト様に促されてそのまま練習室まで行ってしまった。
「来たわね!!さあ、始めるわよ!!」
気合の入ったオズホーンさんの笑顔を見た私は、結局何も言い出せずにリュラ―の入ったケースを開けたのだった。
ここまでお読みいただいてありがとうございます!




