表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

会いに行けるその日まで。

掲載日:2026/02/04

初投稿です!



生まれたその瞬間、私は普通ではないことを知った。

なぜなら、私は自分が「生まれた」と認識できたからだ。

普通であればそんな思考は存在しない。だってそんな高度な思考能力を持つのは、もっと後のことなんだから。


端的に言えば、どうやら私は転生したらしい。

とは言っても、前世の自分についてはまったくおぼえていない。

まぁ、知識などはしっかりと覚えているからさほど問題はないと思う。


自我を得てからしばらくして色々なことを知った。

例えば私の名前は「リン」だということ。この世界には魔法があるということ。

そして、今この世界は異界からの侵略によって滅亡の危機にあるということ。


何てディストピアな世界観なんだと最初は思ったけど、このあたりの生活はまだあまりかわっていないらしい。(最前線の方はひどいありさまらしいけど、、)

そんな世界だからか、近所の男の子は小さなころから剣の訓練だったりをさせられていた。

暇を持て余していた私も当然参加させられた。


最初こそ、いわゆる”転生ボーナス”で規格外な才能を持っていることを期待したけど、、、まぁ、世界はそんなに甘くはないらしい、、。


非力な女子だということもあってすぐに年下にも抜かされてしまった。


今更だが私は小さな農村で生まれた。

ディストピアな世界観とは裏腹に、平和でのどかな生活。両親にも恵まれ充実していたはずだった。



だけど、私はどこかこの生活に”しっくり”きていなかった。


”何かが違う”


そんな違和感を持っていた。



だからだろう。

私のその感覚は正しかった。

私はこんな所でのどかに暮らしているべきでは無かった。


神に”祝福された(呪われた)”私が、静かに暮らして言い理由など、、無かったのだ。



あれは、私が10才になる誕生日だった。


突然、今でいう異界の門(ゲート)が村に出現した。


今では特段驚くこともない。災害の一つだ。


ただ、当時は違った。


異界の門(ゲート)なんてものは、最前線でしか確認されていなかった。


人類が手をこまねいているうちに、奴らは前線から遠く離れた内地に攻める手段を開発したのだ。



それは、人類にとって悪夢の始まりだった。

この出現を皮切りに、世界各地で異界の門(ゲート)が確認された。


人類が対抗策を手にいれるまでに、実に7割の人類が犠牲となった。

もちろん、最初の被害者である私の故郷の村など、誰一人として助かるわけがなかった。


では、どうして私は生きているのか。

それは、私が呪われているから他ならなかった。





今日は私の10才の誕生日だ。


「思えばあの時からここまで、ずいぶん長かったな」


十年前、この世界に生まれ落ちたあの日。

不安でいっぱいだったのを覚えている。前世の記憶では、こんな状況に陥った主人公は嬉々としていたけど私には到底無理だった。


見るからに衛生観念の低い家は、赤子なんてすぐにでも死んでしまいそうだったし、前世のことがばれたら”悪魔憑き”なんて言われて処刑されるんじゃないかとびくびくしていた。

実際は、そんなものは杞憂で、魔法のおかげで赤子の死亡率は前世の中世ほど高くないし、前世の記憶がばれることも無かったのだ。


一年が過ぎたころには、のびのびと暮らしていた。

今日まで、近所の人にはたくさん親切にしてもらっていて、私は今とても幸せなんだと思う。

転生してよかったと、心から思う。


……時々、何か”違和感”を感じることもあるけどとても充実している。






「リンー!起きてるなら早く出てきなさーい!」



母の声だ。


十年も住んで慣れ親しんだ我が家。温かい家庭。



「本当に、この家に転生して(生まれて)良かった。」



そうつぶやいて、扉を開けた。



     グチョリ




目に映ったのは、巨大な手に上半身を握りつぶされた母親の姿だった。


飛び散った血が目に入って、視界は赤く染まっていた。

肉の腐ったようなにおいと、微かな温かい匂いが、目の前の光景が幻ではないことを訴えてきた。


半壊した家。

そこら中に広がる、血潮と臓物。

鮮烈に網膜に焼き付くこの光景を最後に、視界は黒く塗りつぶされた。


最後に聞いた音は、肉のつぶれる、乾いたような少し滑稽なものだった。




私は、激痛によって()()()()()()



一瞬呆けたのち、すぐに記憶を取り戻した私は吐いた。



盛大に吐いた。



鼻の奥に残る腐臭と受け入れがたい光景。



そして、自身の肉がつぶれる音と感触。



その全てを、わたしの体が、精神が、拒絶していた。



ようやく落ち着いたころ、先ほどの光景が夢だったのではないかという発想に思い至った。

心では、そうではない事を確信していたが、頭が納得していなかったのだと思う。


だけど、すぐに、納得してしまった。


全壊した村。


わずかに残る腐臭と、乾いた臓物。


どういう訳か自分以外は、先ほど見た光景の未来そのものだった。



疑問に思った。


その瞬間、頭に激痛が走った。


数秒だったのか、あるいは数時間だったのか。


もがき苦しんだ私は、頭痛が引いたころにすべてを理解した。


いや、理解させられた。と言った方が正しいのかもしれない。



私は、祝福されて(呪われて)いたのだ。


異界からの侵略者(アラストル)より、この世界を守るための最終兵器として。



私は、侵略者(アラストル)を敗走させるまで死ぬことが許されなかった。

死ぬと、ちょうど24時間後に復活するらしい。


だけど、死なないだけでは、ただの少女にできることはない。


だから神はもう一つ、絶望的な祝福を授けた。



神授(トリビュート)



自身の身体を生贄に、神の力を借りるというもの。


本来であれば物理的に回数制限が存在する。


でも、死ねばすべて元通りな私にはその制限が()()()()()


それに死ぬごとに借りられる力も増えるらしい。



この二つの祝福により、私は、世界を救う、神の人形となったのだ。


常に感じていた”違和感”はこれだった。


私は、ぬくぬくと平和を享受していい人間ではなかったのだ。





あれから一年。

私は孤児を装って、ある程度の実力がつくまで冒険者として活動した。


この一年で死んだ回数は百を超えた時から数えるのをやめた。

そして死ぬたびに、少しづつ強くなっていた。

どうやら、殺された相手の強さが私を超えていればいるほど、生き返った私のスペックが上がるらしい。

とはいえ、微々たるものだ。

精々ひ弱な少女が元気な少年になったくらいの変化。


それでも、私は死に続けた。

目玉がえぐれて、四肢が吹き飛び、内臓がこぼれて、オークに犯されて。

何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も。


私は死に続けた。

あきらめるわけにはいかなかった。

理由は、正直分からない。

たぶん、私が()()()()()()だから、だと思う。


そのおかげか、私は一応銀級冒険者となった。

等級としては大体真ん中くらい。

それでもベテランと言われる等級だ。


何度も死を経験することで、”死の予感”の様なものをとらえられるようになったのが大きい。

だけど一番大きいのはやはり”神授(トリビュート)”だろう。


あれは冒険者になってちょうど半年がたったころのこと。


”スタンピード”が起きたのだ。


率いるのは、”獣型”の侵略者(アラストル)


既に3つの町が滅ぼされていた。


その前線に、当時町にいた中で最高等級だった私が、一人で立ったのだ。





「運、悪いな。」


そうつぶやく。ちょうど金級パーティーが出払っているなんて運が悪い。


神授(トリビュート)


祝福(呪い)を使う。

最初は、代償の宣言。


「”血液”」


最も軽い代償でこの力を使う方法だ。

次は、対価の要求。


(ルーン)・神降ろし」


体を貫く様に魔法陣が現れる。

光って、消えた。

どっと力が抜け、ふらつく。


次の瞬間、世界の速度が落ちる。


「成功」


呟いて、全速力で駆ける。


制限時間は、”5分”。


「まずは大群からか。」


魔物の大群の強そうなやつを中心に間引く。

()()で十分だった。



「ふーーっ」


上がった息を整える。


「とりあえず、こんなものかな。」


死屍累々。


半数以上を殺した私は、()()に向かう。


「こうして相対するのは、初めてだね。」


侵略者(アラストル)を前にして、そう口にした。


もっと怒りでも湧いてくるかとも思ったけど、案外そんなことは無かった。


たぶん、もう、義務だから。


「グオォォォォ!!」


奴は、大の男の三倍はある尾で薙ぎ払う。


「っと。問答無用か。」


後ろに飛んでかわす。



「やるか。」


神授(トリビュート)

「”両脚”」

遺物(レリック)迅神(ヘルメス)-タラリア」



遺物(レリック)

(ルーン)とは違い、重たい代償を支払って、神そのものの力を借りる技。



両脚に魔法陣が現れる。



メシャ



音と共に、両脚がつぶれてなくなる。

痛みは、、もう、慣れた。


次の瞬間、倒れこむ前に、()()()()()


歪な形をした足は、しっかりと大地を踏みしめる。


神授(トリビュート)

「”両目”」

遺物(レリック)智神(オーディン)-フギン」

闘神(スサノオ)-アメノハバキリ」


両目を潰し、右目に神の眼を、手には神の刀を持つ。


「こんなものかな…。」

「いこうか。」



足に力を込める。


瞬間、侵略者(アラストル)の頭に()()を叩き込む。


ズガンッ


遅れて音が聞こえる。


「グガァァ!?」


吹き飛ぶ侵略者(アラストル)を尻目に呟く。


「やっぱすごいな。これは。」



「グオォォォォォォォォォォォォォッ!!」


視界が黒に埋め尽くされ、全身が衝撃を襲う。


「ガッ」


気がつくと、侵略者(アラストル)の攻撃を受けて吹き飛ばされていた。


いや、仮にも”神の眼”だ。目では完璧に追えていた。


ただ、反応が追い付かない。


「まだまだ使いこなせないなぁ。」


呟いて、立ち上がる。


「あら?」


バランスを崩した。


「……左手、無いなったな。」


「ガァァ!」


再び薙ぎ払い。

今度は受け、流す。


「ァァ?」


「尻尾…邪魔。」


流れるままに、刀を振り下ろす。



「グガァァァッ!」



「まぁ、及第点…かな」



試みは成功。

代わりに、はらわたを食いちぎられた。


「これは…助からないな。」

「終わらせるか。」



いわゆる、禁断の技。



神授(トリビュート)

「”生命(オール)”」

干渉(アクト)(グラトニー)





「グギョガアァァァガァァァ!!!」





傷から侵蝕して、対象の存在ごと抹消する。

文字通りの”必殺”。


干渉(アクト)の代償は、必ず”全て”。

発動したものと()()()()()()を受けて死ぬ。



最後の一体にしか使えない点を除けば、”最強”の技だ。



「ただし、あの世に行くのはお前だけだよ。」


消えてなくなる直前の侵略者(アラストル)に手を伸ばす。



「じゃあね――」




――ブツン









スタンピードは終息した。

被害は、想定からすると、ほぼゼロに近かった。


怪我人こそたくさん出たが、死亡者はたったの一人だった。


銀級冒険者”リン”。


ギルドマスターの独断により、一人で前線に送られて、帰らぬ人となった。


真実を知る者は、一人もいない。

ギルドマスターが失態を隠すために、リンが()()()前線に行ったことにしたのだと。



()()はもう役立ちそうにないな。」


そうつぶやいて、冒険者証を捨てた。


「どうしよっか。これから。」



そうして、しばらく旅をしながら侵略者(アラストル)を駆除して回った。


自身を使い潰して、殺し続けた。



私は、あれ以来いつも左目を武器に変えたまま生活している。

慣れるためだ。


だからか、巷では私は”隻眼の殺戮者”と呼ばれている。




そんな、ある時だった。



「君が噂の”隻眼”?」

「いやー、こんなちっちゃい子が侵略者(アラストル)を倒せるかなぁ?」



突然、二人組が声をかけてきた。



「…誰?」



そうつぶやく。


「あぁ、すまない。自己紹介がまだだったな。」

「僕たちは”勇者”さ。聞いたことくらいはあるだろう?」


「”勇者”」


そんなのもいたのか。


「はぁ、”ユウト”。自己紹介っていうのは名前を言うんだよ、、。」

「え、あぁ!確かに…。えっと、」

「こいつは勇者で名前はユウト。んで、私はハル。一応こんなんでも聖女をやってるのよ。」

「ちょっ、ハルー、、。」


二人の仲の良さがうかがえる光景だった。


「それで?何の用?」


声を掛ける。


「あぁ。すまない。実は、”隻眼”に侵略者(アラストル)狩りを手伝ってほしくってね。探してたんだ。」


なるほど。

メリットがないな。


「そう。残念だけど人違いだね。()()()()に倒せるわけないでしょう?」


突っぱねる。


「でもなぁ。僕の”直感”が()()だって言ってるんだよなぁ。」

「じゃあ確定じゃないの。どうして噓つくのよ。」


面倒だな。

「何だか知らないけど、私に関わらないで。」


そう言い残してその場を去る。




「あっ!ちょっと!…ってはやっ!?」

「あっという間に見えなくなっちゃったね。」

「ちょっとユウト!なんで追わないのよ!」

「うん。…たぶん、また会えるから。」

「はぁ、、。ならいいけど。」




「何だったんだ。」


しばらく移動して一息つく。


一緒に行動しても、どうせ死ぬんだ。なら一人の方が動きやすくていい。


「そろそろこの町も出ようかな。」



「んっ……きた。」


死にまくった副産物か知らないけど、最近は奴らが近くに来るとわかるようになってきた。


「行くか…。」






ガギンッ


「くっ!」


攻撃を何とか受けて後退する。


「ユウト!大丈夫?」

「何とか。けどやっぱり”人型”は次元が違うね…。」


侵略者(アラストル)は、その形態によって3つに分類される。

不定型、獣型、人型。

人型にいたっては知能を持つ個体も存在し、最も危険度が高いとされている。


「でも、ここで引くわけにはいかない。」

「そうね。ここが踏ん張りどころよ!”聖印(ストレングス)”!」


ユウトの体に光が満ちる。


「ありがとう。今度こそ倒す!」







「出遅れたか。」


少し離れた位置から勇者たちの戦いを眺める。

そこで一つの違和感に気が付いた。


「…人型じゃない?」


時折存在するのだ。

()()()()()()()()()”が。


少し前にやったときは、2()()死んだ。


一度は、不意打ちの触手。

二度目の死と引き換えに何とか殺した。


強化された私でも、辛勝という結果となった。


「…勇者、多分死ぬな。」


さっき、久しぶりに町に戻ってみたら勇者の話題で持ちきりだった。

私が知らないだけで、勇者は有名人らしい。


「ここで死なれるのは面倒…か。」

「仕方ない。」




強化によって、接戦を演じた勇者。

その死角に、侵略者(アラストル)の触手が迫った。


「ユウトっ!危ない!」

「何ッ!?まずいっ!」



「邪魔…。」


そうつぶやいて、触手を断ち切る。


「!?あ、あんたは!」

「”隻眼”!?…すまない、助かった。」



……違和感。

ヤツの動きは明らかに緩慢だった。


「何かを誘っていた…?」


「”隻眼”!すまないが、一緒に戦ってほしい。」


そう言われて、やっと顔を上げる。

…疲労困憊っていう顔だね、。


「嫌。」


「な、何言ってんのよ!!今は意地張ってる場合じゃ――」

「邪魔なだけ。」


「ッ…!」

「僕たちじゃ、力不足かい…?」


「?そう言ってる。」


「それでも僕らは――」



「グラアアアァァァァァァアアァァアアアッ!!!!」



「チッ…。」

「おしゃべりはおしまい。とっととどっか行って。」


そう言い残して、侵略者(アラストル)に向かう。


「な!?待って!」



神授(トリビュート)

「タラリア、フギン」


詠唱短縮。

激戦の中で、少しでも隙を減らすために開発した。


「さて、とりあえず左手。もらうよ。」




「「ヒュッ…。」」


二人は、目の前の光景に恐怖を覚えた。

“隻眼“と呼ばれる少女の足がつぶれたかと思うと、次の瞬間には歪な足が()()()()()


理解不能だった。

瞬きの後、彼女は侵略者(アラストル)に肉薄しその左腕を奪った。



「「……。」」



言葉が、出なかった。


先ほどまでとは比べ物にならない強さを見せる侵略者(アラストル)も、それを圧倒する”隻眼(少女)”も。


住む世界が違うのだと、そう、言われている気がした。





「…強いな。」


多分、今までで一番。


どうやら手加減されているらしい。


「仕方ない。()()か…。」


”肉を切らせて骨を断つ”。

いつも通りやるだけだ。



剣戟を続けてしばらく。

()()()隙をさらす。

案の定、奴は必殺の触手を打つ。


「かかっ――」

「危ないっ!!」


突然、背後から衝撃を受けた。


当然ヤツの攻撃の軌道から外れ、



――代わりに、勇者がそこにいた。



「――は?」

「ユウトっ!!!」


無残に放り棄てられた勇者に、聖女が駆け寄る。


「ねぇ!目を覚ましてよ!お願い!いかないでよ!」


死んでいるのは明白だった。

あれは、私を殺すためのヤツの攻撃。

勇者程度が生き残るはずもない。



理解できないことが二つある。


なぜ勇者がせっかくのチャンスを邪魔したのかと、聖女はなぜ戦闘中なのに武器から手を放し、敵からも目を離しているのか。


「…はやく()()を持って下がって欲しい。…邪魔。」


「は…?あんたそれ、本気で言ってんの…?」

「…?」


首を傾げた。


「ユウトはっ!!あんたを守るために死んだのよ!!!それなのに…いったいなによそのいい草は!!」

「助けた…?いったい誰がそんなこと頼んだの?」

「はぁ…?敵の不意打ちが当たりそうだったあんたを身をもって助けたんじゃないっ!!」

「…そんなこと頼んでないし、あれはそういう作戦。」

「は、はぁ?何言って――」

「つまり、勇者は私の邪魔をしたの。」

「そして、あなたも――」


「グラァァアアア!」


ガギンッ!!


「邪魔なの。わかった?」


聖女に迫った侵略者(アラストル)の攻撃を退ける。

聖女は泣き崩れた。


「そんなの、そんなの、あんまりじゃない…。」

「こんなことなら、あんたが死ねばよかったのに!!!」


「…っ」

「はぁ…。」


本当は、まだこの辺に潜んでるから使いたくなかったんだけどな…。



神授(トリビュート)

「”生命(オール)”」

干渉(アクト)(グラトニー)



闇より深い暗黒が、互いの体を飲み込む。



啞然と見つめる聖女に告げる。


「これで満足かしら…?悲劇のお姫様?」



――ブツン


その答えは、聞くことはなかった。





それからも、私は侵略者(アラストル)を殺し続けた。


殺して死んで殺して死んで殺して死んで殺して死んで殺して死んで殺して死んで殺して死んで殺して死んで殺して死んで殺して死んで殺して死んで殺して死んで殺して死んで殺して死んで殺して死んで………。



あれから多くの人間と出会ったが、どれも理解できなかった。

その行動理由も、私に侵略者(アラストル)に向けるものと同じ視線を向ける理由も。

それでもかまわなかった。

私の役割は、ただ、殺すだけ…。

彼らとは、根本から違うのだ。


どのくらいの時がたったのか分からない。


何日か、何年か、何十年か、何百年か。


祝福(のろい)を自覚したあの時から、私の外見は変わっていない。

()()らをこの世界から滅ぼすまで、私は神に縛られる。




「それも、これまで…。」



異界の番(ゲートキーパー)

この世界と、異界を繋げることのできる唯一の侵略者(アラストル)


これを倒せば、異界とのつながりは消滅する。


そして今、この世界に存在する侵略者(アラストル)はこいつただ一体。


「君で最後だよ、”異界の番(ゲートキーパー)”。」

「クククっ。よもや、”ニンゲン”にここまで追い詰められるとはな…。」


そう。

こいつ、喋るのだ。

少し新鮮。



神授(トリビュート)

「タラリア、フギン、メギンギョルズ」


全身を供物に、神の力を取り込む。


「ふむ。その異形の姿、まるで神のキメラだな。」


「そうかも――ねっ。」


先手。


相手の腕を奪いに行く。


「くっ!流石に速い!とはいえ、その程度ではこの俺は倒せんぞ!」

「……」


これまでの戦いで痛感した私の弱点。


それは、”火力不足”。

(グラトニー)”を使おうにも、そのための傷が作れない。


長い間、接戦を演じた。


いくつもの臓物はつぶれ、骨は砕け、肉は裂けていた。


それでも、お互いまだ本気ではない。


――出す機会が作れなかったというのが正しいか。


「まぁ、最後だし。…やるか。」


神に与えられた力。

それから作り上げた、私だけの”オリジナル”


神授(トリビュート)

「”魂”」

(カース)・誓約破棄」


魂を削り、私に対しても永続の代償を強いることで、神の契約を破る裏技。


「ぐっ!なんだこの光は…!?」


「唯一の勝ち筋だよ。」


干渉(アクト)(エンヴィー)


10秒間、相手の能力を自身の素の能力と同じにする。


これまでは完全に”死に技”だった。


だが”(カース)”によって即時復活が可能となった今なら使()()()



「ばかな!そんなばかな!」

「彼我の戦力差を無理やり消す魔法は存在する!!」

「だが!!こんなことが、こんなことがあっていいわけがない!!!!」

「こんなもの!!こんなものっ!!!!!!いくらなんでも()()()()っっ!!!!」


焦った叫びが聞こえる。

久方ぶりに、笑えた気がする。


「最後はダメ押しだよ。とっておきを、君にあげる。」


神授(トリビュート)

「”(オール)”」

干渉(アクト)(カース)獄炎(イラ)


無理やり神のすべてを引き出した、文字通り私のすべてをかけた()()()()




「ァァ――――」



叫び声をあげる間もなく、異界の番(ゲートキーパー)は消滅した。




それは、私以外の一帯すべてを焦土にした。










最後の異界の門(ゲート)が閉じられる。



先ほどまでが噓のように、突然、静けさが訪れた。



酷い疲労と、鈍い痛みが帰ってきた。



()()()以来、初めて空を見上げた気がする。



全身の力が抜けて、その場に倒れこんだ。



少しづつ、希薄になっていくのが、鮮明にわかる。



空に、手を伸ばす。



一度、目を閉じた。



再び目を開いて、呟いた。



「あぁ。これでようやく会いに行けますね。お父さん、お母さん。」

読んでくださりありがとうございます。


初投稿なのに、好きな要素を詰め込んでしまいました。


いつか長編にしてみたいな、という気持ちもあります。


よろしければ、評価・ブックマーク等おねがいします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ