退魔の聖女2
「神様…」
「君には迷惑をかけるね。すまない。せめてもの償いとして、聖女という力を渡させてもらったよ。」
「ですが、私の以前の世界には退魔の聖女なんて…」
「実は、世界の時を戻したことにより魔王というものが復活してしまった。君の旦那様と聖女の怨みつらみが集まって魔王へと。この世界ができた頃、魔王が誕生し、退魔の聖女が産まれた。だが、古の歴史過ぎて消えてしまい、結界の聖女と魔物だけが残った。知らなくて当然だ。」
「ですが、今まで結界の聖女が産まれ続けたのに、なぜ退魔の聖女は生まれなかったのですか。」
「魔と聖は鏡のようなものだ。片方のみがかけることは決してない。魔物は魔力が世界にある限り産まれ続ける。だが、魔王は違う。魔力が時空の歪みによって尋常ではない量が集まると産まれる。そしてそれに呼応して聖女を作る条件が揃うと我々神が聖女を人間から選ぶ。」
「それで選ばれたと。そもそも、そちらの人選ミスですよね?それなのに私が苦労するのは…」
「わかっている。だが、我々も世界に干渉はできても、人間の精神にまでは干渉できないのだ。」
神はどうやら、全知全能ではないようだ。だから、その尻拭いを私がさせられているわけだ。
「…めんどくさ。あ、ヤバ。」
ついつい本音が出てしまった。一度あんな殺され方をしたのだ。もう神だろうが魔王だろうが怖いものなしだ。
「…すまない。ビビナ。本当に。我々神々が、全知全能なら。だが、安心してくれ。魔王は君を殺すことはできないように制限をかけたから。」
「なら、聖女にもかけときなさいよ。他人殺せないようにって。」
「普通ならできないはずなんだが…実は聖女を作るときに他の神々のいたずらでね…えぇーと。その。他の次元の魂が入ってしまって…」
「…とりあえず殴っていいかしら。」
「ご遠慮いただけると…」
「ひとまず分かったわ。魔王を倒せばいいのね。んで、聖女を止めろと。命の保証はしないわよ。」
「貴女は今聖女なので、他者を傷つけれませんよ。笑」
ゴツンと鈍い音が響いた。
「神を殴った者は初めてですよ。」
「変な扉を開かなくて結構よ。まぁいいわ。まずはアイツが私を妬むことすらおこがましい、ということを教えてあげるわ。」
頼みます、と言うと神はいなくなり、目を開けると先ほどの部屋にいた。
扉を開けると大神官様が待っており、聖剣の封印を解くと、聖剣の部屋へ案内された。
「意外と、普通の部屋なのね。」
「聖剣は退魔の聖女が現れない限り、封印は解けず、封印を解けるのは私、大神官と退魔の聖女様が揃って初めて解けるものですから。」
大神官様に案内され、部屋に入ると二つの輪っかのような模様が地面に書かれ、そこに立つよう促された。指示のまま立っていると大神官様が何か唱え始めると、聖女の証が光り、熱くなったと思ったら聖剣が目の前に降りてきた。
まるで、手にしろと言うように。
手を伸ばすと、すっと手に馴染んだと思ったら聖女の印の中へ、吸い込まれてしまった。
「…え?」
呆然としていると、大神官様はこの世の神秘でも見たかのように崩れ落ち、涙を流していた。
「…あぁ神よ…!我が元に主人を授けてくださり、光栄でございます…!!」
そのまま動かなくなったと思ったら急に立ち上がり、こうしてはいられません!!と言い残し走り去っていってしまった。
「それで聖剣はどこに…?」
部屋に取り残されポカンとしていると、大神官様は走って戻ってきた。そして、ご挨拶なさい。と扉を開けると、複数の子供が入ってきた。
「この子たちは…?」
「聖女見習いです。この中から聖女様が現れます。」
まさか…と思いその中であの顔を探すといた。ディア…!!!!私を何度も何度も何度も刺した本人…!!パッと目が合ったと思ったらにやりと笑っていた。
「…あのくそ神が…。」
ボソッと思わずつぶやいてしまった。
大神官様は気づかず、見習いたちの紹介を始めた。皆、孤児で見つかった聖力を持つ者だそうだ。
「今回のお告げでは、独りで迷っている子を救いなさい、とあったため特例で孤児で探した子たちです。ビビナ様の様にもうすぐ、証が出ると考えております。」
紹介が一通り終わると、大神官様が聞いてきた。
「ビビナ様は神殿に残っていただけますか?」
目を輝かせ、期待の眼差しで聞いてきたが、私には待っている人がいる。ちらっとディアの方を見ると、こう伝えた。
「申し訳ありません。大神官様。私には、待っている婚約者がおりますの。」
ディアは顔を歪ませた。
(やっぱりね。記憶があるわ。あの野郎。次会ったら殴ってやる。)
「そうですか…うぅ。あ。そうそう、聖剣なのですが、呼ぶと出てきますので、ご安心を。」
「呼んだら…?」
「えぇ。聖剣の名前です。まずは命名しなければですね。」
「あ、私がつけていいのですか?」
「聖剣というのは退魔の聖女の魂の欠片が入ることで完成となります。なので聖女ごとに名前が違うのです。」
「名前…フォルマン。」
そういうと、再び胸元から聖剣が出てきた。
それを見た大神官様はまた感動で泣いていた。
「では、ビビナ様いつでもお待ちしております。」
神殿を後にし、私は家へ向かった。
「おかえり。ビビナ!!」
屋敷に着くなり、ルシアンが抱き着いてきた。




