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ブラックボス

作者: Ryo

パワハラ——それは、単なる職場のストレスではない。

人の人生を狂わせ、心を壊し、時には命さえ奪う。


俺はかつて、そんな現実を目の当たりにした。

毎日、無意味に怒鳴られ、人格を否定され、理不尽な要求に耐える日々。

「仕事だから」「社会とはそういうものだ」——そう自分に言い聞かせてきた。


でも、それは間違いだった。


ある日、俺は決断した。

この地獄から抜け出し、パワハラを「犯罪」として裁くために。


これは、俺が経験した「職場の犯罪者」の話だ。

佐藤りょう(32歳)は、営業職として働く普通の会社員だった。

朝から晩まで走り回り、ノルマに追われる毎日。

それでも、仕事は嫌いではなかった。


しかし、それは「奴」と出会うまでの話だ。


新しく配属された上司、田嶋課長。

最初は「期待してるぞ」と笑顔を見せていたが、それも束の間だった。


「お前、何度言ったらわかるんだ?」

「営業のセンスねえな、こんなんでよくやってこれたな?」


注意は次第に暴言へと変わっていった。

どれだけ努力しても、「ダメなやつ」と決めつけられる毎日。


ある日、営業成績が落ちたことで田嶋の怒りが爆発した。


「お前のせいで俺の評価が下がるんだよ!」


怒鳴り声とともに、デスクに拳が振り下ろされる。

その拳が、次はりょうの顔面へ飛んできた。


殴る。蹴る。胸ぐらをつかみ壁に押し付ける。

「これくらい、先輩が後輩を指導するのに必要なんだよ!」


それだけではない。


「罰金だ」と称して給料から数万円を天引き。

会社の金庫に入ることはなく、すべて田嶋のポケットに消えていく。


社内でも噂は広まっていた。


「それ、犯罪じゃないか?」

「証拠を集めた方がいい。」


同僚たちの後押しを受け、りょうはスマホで録音を始めた。

暴言、暴行、そして罰金の要求——すべてを記録した。


そしてある日、会社のコンプライアンス部署へ提出した。


結果、田嶋は 「パワハラの事実を確認」 とされ、解雇された。


しかし、それだけでは終わらなかった。


田嶋は 傷害罪、恐喝罪、強要罪 の疑いで逮捕された。

テレビのニュースでも大々的に報じられ、世間からバッシングを受ける。


「パワハラ課長、暴行・恐喝で逮捕」

「部下に罰金を要求、パワハラの実態とは」


さらに、会社は「社員の安全を守れなかった」と謝罪会見を開いた。


そして田嶋の人生は、完全に終わった。


家族は離れ、家も財産も失った。

かつて威張り散らしていた男が、手錠をかけられ、カメラの前でうつむいていた。


そのニュースを見ながら、りょうは静かにコーヒーを飲んだ。


「パワハラは犯罪だ。遅かれ早かれ、裁かれる運命にある。」


りょうは今日も、新しい職場でまっとうな仕事をしている。

もう二度と、あの地獄には戻らない。

後書き(エピローグ)


パワハラは、決して「指導」や「教育」ではない。

それは暴力であり、犯罪だ。


田嶋はすべてを失った。

家族も、仕事も、社会的信用も。

だが、それは当然の報いだった。


ニュースを見ながら、俺は静かにコーヒーを飲んだ。

心は晴れやかだった。


——もし、あの日、何も行動を起こさなかったら?

——もし、泣き寝入りしていたら?


俺は今も、あの地獄にいたのだろうか。


この世界には、まだ「泣き寝入り」している人がいる。

理不尽な暴力に耐え、声を上げられずにいる人が。


だから、俺は言いたい。


「パワハラは犯罪だ」

「証拠を集めろ」

「声を上げろ」


そして、自分の人生を取り戻せ。


俺は今、新しい職場でまっとうな仕事をしている。

もう、あの地獄には戻らない。


そして、次に犠牲になる誰かを、もう見たくない。

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