ダンジョンカンパニー#エージェント番号S-070(3)
タバコ一箱分空にしたところで、ゲートが再び開き始めた
「ターゲットとの戦闘以外はお前が前衛、俺が後衛。ターゲットとの戦闘でお前は回復とサポートに徹しろ」
コイツの本来の役割はただのタンクじゃなく、味方や自身にヒールとバフを使い前線の維持をすることだが今回は裏方のサポーターとして働いてもらう。サポート能力だけ見れば本職のやつらが当然優れているが、純粋なサポーターだと流れ弾に直撃しただけで死亡する。一方でタンクなど、バカみたいな火力を持つイレギュラー個体の前では役に立たない
「こちらエージェント番号S-070。これよりゲートを進む」
『遅レヲ確認』
「申し訳ありません。 少し…いえ、何でもありません」
色々言いたいことはあったが、言い訳など無意味なのでぐっと堪えた
『速ヤカナル任務遂行ヲ期待スル』
いつも流れてくる定型音声だが、心なしか嫌味な音に聞こえる
そういえば、ゲートはチームでまとめて通れるから複数人でも問題ないはずなのになんで別チーム同士は同時に通れないんだ?ダンジョンは何を基準にしてるかサッパリ分からん
くだらない事を考えている間にゲートによる移動が終わった
「とりあえずターゲットが配信に写った階層、3階層に向かうか。道中のザコにも警戒を怠るなよ。腐っても深淵モンスターだ」
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<モンスター>
端的に言うと結晶に覆われた異形生物。どこから現れるのかどんな生態をしているのか詳しい事は分かっていない。基本的に人型であるが、ボスや特殊個体などは様々な姿をしている
<結晶>
ダンジョン内で確認されている未知の物質。ダンジョンの壁や床に散見される。また、モンスターの心臓部分であるコアは高純度の結晶で出来ているためモンスターを倒す事でより希少な結晶を得ることができる
この結晶はエネルギーからモノ作りまで資源として幅広く活用されている
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「敵があまりに多すぎる」
3階層まで着いたが、道中かなりの敵と当たった
「そうですね。これもイレギュラー個体と関係あるんでしょうか?」
知らねーよ。というかそういうのはお前の分野だろ、メガネかけてんだから(適当)
「というかお前アクティブスキルに移動系ないのによく俺のスキルに対応できるな」
「先輩が後ろから倒していくので自分は盾はってまっすぐ進んでいくだけですからね。回復に関しても先輩のスキルは移動中完全中断耐性じゃないですか。自分の後ろに戻ってきた時に回復かけてるだけですよ」
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スキルは大きく分けて2つに分けられる
アクティブスキル: 特定の発動条件を満たすと発動可能なスキル
パッシブスキル:ダンジョン内で永久的に効果を発動する技術
基本的にアクティブスキル、パッシブスキルともに2個である
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アクティブスキルに関しては個人差があるがな。多い例をあげると、ケントって冒険者は少なくとも10個は確定してるらしい。
俺?俺は2個だよ、その内1個は死にスキルだし
同じカンパニーとはいえ、スキルを全て明かしてる人間なんていない。とはいえアクティブスキルくらいはある程度見て分かる。前より盾持った時の移動速度が上昇してる気がするのはスキルのレベルが上がったからか?それとも新たなアクティブスキルを手に入れたのか?
「先輩、今の分かりましたか?」
ん?待て待て、考え事してて何も気が付かなかった
「いや?何か変わったか?」
「はぁ、今大きな力のぶつかり合いが起きました。正確には大きな力がぶつかって掻き消されたといった感じでしたが…」
答えを言われてみてもサッパリ分からん。それにこいつ今ため息ついたか?
「…先輩は強すぎるんですよ。おそらくあの子が強敵と戦っているんでしょう」
「あー、あのガキか。あんな羽虫に毛が生えた程度のやつに気がつく方が難しいだろ」
「あの子は相当強いと思うのですが…それより早く向かいm」
「「 !!?? 」」
「先輩!」
「先に行く。おそらくヤツだ」
これで探す手間が省けた。今日、確実に殺す。
“あの人からS-070を受け継いだ者として”