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第2章 『バディ~勇者と商人~』~初デートでスキル炸裂!~ その2

「ごちそうさまでしたぁ……」


 それだけつぶやくと、おれはふっと目を閉じた。まさか、雪奈さんの手料理が食べられるなんて、しかも、めっちゃうまい! 外はカリカリ、中はふわっふわのフレンチトーストに、ミネストローネ、サラダにヨーグルトもついてるなんて。でも、ここって異世界なんだろ? よくこんなうまい料理が作れるよな。


「さ、ご飯食べたなら、しっかり働いてもらうわよ、多田野君」


 お皿を手早く洗いながら、雪奈さんが声をかけてきた。えっ? 働くって、ここ、異世界だよな?


「もう、忘れちゃったの? わたしたちここで、100万ディル稼がなくっちゃ、元の世界に戻れないんだよ」


 ため息まじりに雪奈さんが言う。100万ディル⁉ ……って、それ、一体いくらぐらいなんだ?


「あなたがたの国の通貨に直すと、1ディルは約1万円程度になりますわ。ちなみにこの世界、ディルフィーナにはもう一つ、リーラという通貨もございます。1000リーラで1ディルになりますわ」


 セリカが食後の紅茶を優雅にすすりながら説明してくれた。ダークブルーの紙がさらりと揺れ、まるで本物の貴族令嬢みたいだ。でも、1ディルが1万円ってことは、それじゃ100万円くらいになるのか。って、おれの年収より高いじゃないか、大丈夫かよ?


「……おまけ野郎、あ、失礼、多田野さんでしたか? あなた、計算間違えてございませんか?」


 セリカの冷たい視線がおれを突き刺す。なんだよ、そんな目で見なくたっていいじゃないか。それに、間違ってなんかいないだろ? 100ディル稼がないといけないわけで、1ディルが1万円なんだから……。


「あなたがたには、100万ディル稼いでいただかなければなりません。いいですか? 100万でございます。100ではございませんよ」

「いや、だからわかってるってば。要は100万円だろ? そりゃ、おれの年収よか高い金額だけど、それは元の世界の話であって、異世界でならおれだって」

「100万ディルでございます。100万ディル。100万円ではございません」


 ゆううつそうなセリカの声が、急にとげとげしくなる。いや、それよりも、今なんて言った? 100万ディル? え、それって……。


「日本円にして、約100億円よ、多田野君」


 雪奈さんが助け舟を出してくれた。そうか、完全に桁を間違えてたな。100億円だったか……って⁉


「はぁぁぁぁぁっ⁉ はっ、はぁっ⁉ は、え、はぁぁっ⁉」

「タダちん、うるさいよ。それよりユッキー、おかわりちょうだい」


 ユイちゃんが空になったお皿を雪奈さんに突き出す。くりくりした青い目が、おねだりするように雪奈さんを見あげている。だが、雪奈さんは困ったように笑うだけだった。


「ユイちゃん、ごめんなさいね。実はもう食材がないのよ」

「えーっ! ユイ、お腹すいちゃうよぉ!」

「なにがお腹すいちゃうよぉ、よ。あんたが一番食べてんじゃないの。しかもあたしの分まで食べようとして」

「お二人とも、お行儀が悪いですわよ。先ほどもお話した通り、今日は食料品を買いに町に出ますから、そのときまでがまんなさい」


 あのー、皆さん普通にお話されてますけど、ちょっとお待ちいただけますか? 100億円って、いや、無理でしょ? いくら異世界でも、どんなすげぇスキル持ってても、そんなの無理でしょ? だって、100億円って、どこの大富豪だよ⁉


「いいからあんたも皿洗い手伝いなさいよ! 雪奈、そんなのはこのおまけ野郎にさせればいいのよ。ろくなスキルも持ってないおまけは、雑用ぐらいしかできないんだからさ」


 なんだと、疫病神! 言わせておけば!


「それなのですが、リオン、一応おまけ野郎のスキルも調べておかなくてはなりませんよ」


 セリカが口をはさんできた。またおれのことおまけ扱いしやがって! ……ん、でも、スキルってどうやって調べるんだ?


「そう言えばまだだったわね。しゃーない、あんたのスキルも調べてあげるわ。っていっても、ろくなもんじゃないと思うけど。さ、ついてきて」


 リオンがおれをあごでしゃくる。くそっ、ふざけやがって……! おれも大股でそのあとを追った。


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