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第2章 『バディ~勇者と商人~』~初デートでスキル炸裂!~ その1 

「うぉっ! ……って、なんだ、夢か……」


 飛び起きたおれは、大きく息をはいた。それにしても変な夢だったな。わけのわからない世界で、スキルやら、オークやら、レベルやら……。でも、夢の中で雪奈さんに会えたのはうれしかったぜ。


「はーあ。でも、せっかくならもっと一緒にいたかったぜ。そりゃ、バイト先で会えはするけど、そうじゃなくて、こう、プライベートでも仲良くなって、ランチに行ったりできたら。いや、いっそ同棲して、『朝ごはん、できたわよー』なんて声で起こしてもらえたら……」

「朝ごはん、できたわよー」

「そうそう、こんな感じで……って、えっ⁉」


 なんだ今の、幻聴か? もしかしておれ、おかしくなっちまったのか?


「別におかしくなんてなってないわよ。それに夢でもなんでもない。あんたは、あんたたちは、確かにこの世界、『ディルフィーナ』に転生してきたのよ」

「うわっ! ……びっくりした、疫病神か」


 いきなり耳元で声かけてくんなよな、マジであせったぜ。……って、耳元?


「うおわぁっ!」

「きゃっ! びっくりした、いきなりブランケット引っぱらないでよね」


 いや、びっくりするなって言うほうがどうかしてるぜ。一緒のベッドに、この世のものとは思えないような美女が寝てたら、誰だって驚くだろ。ぷっくりしたくちびるに、赤みがかったツインテールがかわいらしい。そしてなにより、気の強そうな大きな目……。


「……って、なんでお前が!」

「なんでって、しかたないじゃん。この部屋、ベッドが二つしかないんだもん。さすがにあたしら女の子四人で一つのベッドには寝れないじゃん。でも、あんただけ床に寝させるのもかわいそうって雪奈が言うから、しかたなくじゃんけんして、組み分けをしたの。で、あたしたちがあんたと寝ることになったってわけ」


 わざとらしく肩をすくめて、リオンはため息をついた。くそっ、なんなんだよこの疫病神は。どうせなら雪奈さんと一緒に寝たかったのに……。ん、まてよ、そういやこいつ、今『あたしたち』って言わなかったか?


「雪奈はもう起きて、朝ごはん作ってくれてるよ。あんた、おまけのくせに寝相はやけによかったわね。雪奈とあたしにはさまれてても、ピクリとも動かなかったから、死んでるんじゃないかって思ったわ」

「待て、疫病神! 今なんて言った?」

「誰が疫病神ですって⁉ あんた、言うにこと欠いて、このあたしを疫病神扱いするなんて」

「いいから早く言えって! 今なんて言ったんだよ!」

「ちょ、近い近い! わかったわよ、言うから、ちょっと離れなさいよ! ピクリとも動かなかったから、死んだんじゃないかって」

「違う、その前だ!」

「その前?」

「そうだ、誰と誰にはさまれてたって?」


 リオンはのんきにポンっと手を叩いた。


「あぁ、それね。だから言ったじゃないの。雪奈とあたしよ。でもあんた、あれだけ寝相がいいんだったら、良い抱き枕にはなりそうね。ま、その顔に袋かぶせて、へのへのもへじでも書いておかなくちゃいけないだろうけど」


 アハハハッと疫病神が笑っているが、そんなことはどうでもいい。雪奈さんと、一緒に寝てた? 同じベッドで? ……マジかよ?


「……疫病神、お前、魔法が使えるんだったっけ?」

「なによ、やぶからぼうに」


 笑い続けているリオンが、ちらりとこちらを見た。


「それなら頼む! おれの記憶を、昨夜の記憶を戻してくれ! 雪奈さんと寝てたんだろ、だからそれを、頼む!」


 笑っていたリオンの顔が、一瞬で真顔に変わった。だが、そんなことであきらめてなるもんか! ドン引きされようがなにしようが、雪奈さんとの一夜の記憶のためなら、どんなことがあってもくじけるもんか!


「な、頼むよ、頼む! 感触だけでもいい、それだけでもいいから、頼む!」

「はぁっ⁉ ば、ば、バカじゃないの! そんなことするはずないじゃないの! だって記憶を戻したら、しゃっき……」


 バッと口を押さえるリオン。なんだこいつ、なにやってるんだ?


「その……ほら、そんなことしたって意味がないでしょ。だいたいあんたたちには、何にもなかったわけだし。それよりほら、朝ごはん食べに行くわよ! 今日はいろいろとやることが多いんだから」


 ベッドから降りて、リオンがあごでしゃくる。くそっ、こいつしゃべらないつもりだな。くそ、絶対意地でも記憶を戻してもらうぞ! ……あ、でも、確かおれ、こいつとも一緒に寝てたんだよな?


「……なによ、そんなじろじろ見て……。あたしの顔になんかついてる?」


 ネグリジェ姿のリオン改めリオンさんが、目をぱちくりさせた。朝日がボディラインをさらに強調させている。


「いや、なにも……」


 顔を背けて、おれは決意を新たにした。

 絶対に記憶を戻してもらうぞ!

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