第3章 『リキュールエンパイア』~大酒豪時代を乗り切れ!~ その3
――勝利と雪奈が町に買い物をしているその間――
「それで、いったいどうしたっていうのよ、セリカ? なんであのバカを様づけで呼んでんのよ?」
「そうだよセリちゃん、あんなおまけはどうでもいいじゃん。ユイたちはユッキーをその気にさせて、借金返さないといけないのにさ」
「確かに、雪奈様のスキルはわたくしたちにとって素晴らしいものですわ。ディルを稼ぐのにはもってこいのスキルです。……でも、これを見てくださいませ」
「これって、あのバカが振ったサイコロじゃん。え、もしかしてあたしのミスリルに、あのバカ傷でもつけたんじゃないでしょうね?」
「リオンちゃん、そんなの無理に決まってんじゃん。オリハルコンほどじゃないけど、ミスリルってとっても硬いんだよ」
「ユイの言う通りですわ。ミスリルは非常に硬度が高く、魔法的にも安定した物質でございます。そのために加工も難しく、ましてや別の物質に作り変えることなど不可能でしょう」
「……何が言いたいのよ? まさか、もしかして、そのサイコロ……」
「うそでしょ、セリちゃん、じゃあこのサイコロ、ミスリルじゃなくて……」
「えぇ、オリハルコンですわ」
「……マジ?」
「じゃあ、タダちんのスキルって……」
「そうですわ、性質変化に属するものだと思われますわ。しかも、ミスリルをオリハルコンに変質させることができるほどに、強力な……」
「じゃあ、雪奈よりも」
「タダちんのほうが」
「そう、わたくしたちの目的である、借金返済にうってつけのスキルということですわ」
「なるほどね、ただのおまけ野郎だって思ってたけど、思わぬ収穫じゃない」
「それじゃあさ、リオンちゃん、ユイたちがやることはもう決まってるよね」
「えぇ。そう言う意味ではむしろ、雪奈様以上にやりやすいと言えるでしょう。なにせ相手は若い殿方でございますから。しかも、童貞臭い」
「童貞ってか、あいつ女子と付き合ったことはおろか、手をつないだりしたこともないんじゃないの?」
「しゃべったこともなさそうだよ。ユイ、そういうのわかるもん」
「とにかくそこは、勝利様が奥手であれば奥手であるほど、わたくしたちが有利ですわ。そういう殿方ほど、落とすのは簡単ですから。そうしたら……」
「あたしらのとりこにして、あとはたっぷりスキルを使わせ、こき使って……」
「稼いだお金は全部ユイたちに貢がせて、借金返済して……」
「うふふふ、そうですわよ、そうすればわたくしたちも、もう落ちこぼれ三女神なんて言われずにすみますわ」
「そうと決まれば話は早いわね、誰が一番にあのバカを落とすか競争よ!」
「リオンちゃん、そんなこと言っていっつも失敗してんじゃん。一番はユイだよ、だってユイだけちゃんづけで呼ばれてるし」
「あらあら、お二人ともわかっていませんわね。ああいう奥手男に一番きくのは、色仕掛けですわ。わたくしが少し肌を見せれば、イチコロですわよ」
「ふん、負けないわよ! ……でも、とにかくようやくあたしたちに運が向いてきたみたいね」
「タダちんを手のひらで踊らせて、ユイたちはがっぽり大儲け! そしたら……」
「手ひどくフッて冷たくして、泣き顔を優雅に拝んで差し上げましょう。あぁ、楽しみですわね」
「くひひひっ!」
「えへへへっ!」
「うふふふっ!」




