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始まり(4)
女だと思っていたが、少年だった。
いやいやいや。それよりも何よりも、僕はこの顔に見覚えがあった。とても馴染み深い顔だ。
「あ、兄貴?」
亡くなった兄の少年時代にそっくりだった。似ているというよりも生き写しだ。
僕は両手の力が抜け、左手のビニール袋と右手のビール缶を地面に落としてしまった。体に回りかけていたアルコールは一気に引いていった。
「私の話を、聞いてくれますか」
声はやはり、女性だった。僕は目の前にいる人間をどう捉えたらいいのか、全く検討がつかなくなってしまった。
言葉を失い、ひたすらに相手の顔を見つめていた。よく目を凝らすと、おでこの真ん中に小さなツノのような突起がある。
もちろん、僕の兄貴にこんな突起はなかった。一体、コイツは何者なんだ。
「ここで話すのも何ですから、こちらへ」
そういうと、この人間(いや、もう人間かどうかもう分からない)は僕の右手をつかんで歩き始めた。僕は地面に落としたビールやおつまみのことをすっかり忘れて、手を引かれるままに付いて行った。




