2/8
始まり(2)
「叶えたい夢は、ありませんか」
その女性は続けて話した。
うつむいていたから、フードの上側しか見えない。フード付きのマントのような服で、中世ヨーロッパが舞台の演劇に衣装みたいだなと思った。光沢がある布地で高級そうだった。
「なんなんですか」
僕は少し不機嫌な声で言った。
せっかく1人で金曜日という喜びを噛み締めていたのに。宗教か占いなどの勧誘だと思っていた。
「あなたの夢、私が叶えて差し上げます」
どうにもこの女性の意図が分からなかった。
これ以上、相手にすると厄介なことになりそうだと直感した。
「結構です」
僕はそう言って女性に背を向け、再び自宅を目指して歩き始めた。今日は運がないなと思った。
「亡くなられたお兄さんに会いたくはないですか」
僕の背筋に緊張が走って、思わず立ち止まった。
僕がもう一度振り返ると、フードの隙間から女性の口元が見えた。
ニンマリと笑っているのが分かった。




