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始まり(1)
僕が妖精という生き物を初めて見た日の話だ。
午前0時近くの深夜、住宅街は濃い霧で満ちていた。
コンビニからの帰り道だった。その日はようやく迎えた金曜日で、次の日は会社が休み。ビールを3本にビーフジャーキー、スナック菓子も買い、家で1人の晩餐を楽しむつもりだった。
車道脇の歩道を歩いていた。洋服店や本屋、美容院なんかが並ぶが、みんな電気を落としている。
深夜だったから当たり前だ。車一台も走っていない。
コンビニから徒歩5分の自宅まで我慢できず、ビールを一缶開けた。
ぼろアパートのほこりくさい部屋で飲むより、星空の下で飲む方が風情がある。
なんてことを思ったわけではなく、早く飲みたかっただけだ。疲れ切った脳と全身の肉に染み渡る。
「お兄さん、ちょっと、お兄さん」
僕は突然、声をかけられ、背中を突かれた。
後ろを振り向くと、黒いフードを深く被った小柄な人が立っていた。




