第三章 光の国、ギルドにて
−城下町 北口入り口付近−
馬車を降り、街に入る
街の中は、アテナに言われた通り栄えていた
この街は円形に構成されており、中央に大聖堂がある
「まずは近場のギルドに行きましょう。」
−冒険者ギルド−
木製の少し古びたドアを押す
中は街とは違う賑やかさがあった
三人は受付へ進む
幸い受付は空いており、待つことは無かった
「ラズリィ冒険者ギルドへようこそ
初めての方ですね。三人とも冒険者登録ですか?」
「はい。」
「でしたら本日仮登録をされた後、
冒険者試験に挑戦ください。
合格されますと、晴れて冒険者となります」
名前や年齢など基本的な内容を書くと、
魔力測定に誘導される
「ここにお立ちください
現在の魔力の総量、魔法適正、使用可能なスキルの測定ができます
なお、アイテムの使用や隠蔽は不可能ですので予めご了承下さい
こちらは測定次第こちらで記入させていただきます
終わり次第仮登録は完了ですので、
ギルドの指定日に試験を受けにいらして下さい」
サーヤとアイが先に済ませる
特にアイがかなり高い数値を出したらしく、職員が騒ついている
そんな中シリスだけが渋い顔をしていた
「どうしたのですか。」
「ん?ああ、少し不安でな
お主の数値でここまで空気が乱れるのじゃから
ワシの時はヤバそうな気がしての」
アイの記録を終えた職員がシリスを呼ぶ
行かない訳にもいかないので、渋々立ち上がる
指定の場所に立ち、測定を開始するが一向に終わらない
焦る職員たちを前にシリスの顔はやや強張っている様にも見える
故障か確認しようと動いた瞬間、とてつもない勢いで結果が出始めた
結果として出てきたスキルや魔力の桁が尋常ではなく
アイのとき以上に慌てふためいている
シリスは頭を抱え、諦めてしまっていた
「すみません。測定が終わるまで、大広間でお待ちください」
どうしようもないので指示通り大広間で待っていると
目の前にガタイの良い男が立っていた
見上げるとニヤリと笑った
「よお、嬢ちゃん達
見ない顔だが、ギルドは初めてかい?
こんな危ないことしねぇで俺たちと遊ぼうぜ」
話位かけられた途端、先程まで気落ちしていたシリスが苛立ち始める
サーヤはアイの後ろに引っ込んでしまった
「生憎お主と遊んでいる暇はなくての
さっさとどっかに行ってくれると助かるんじゃが」
「見た目の割に強気だねぇ
強気な子には燃えちまうタチでよ」
男の一言に耳がぴくりと動く
すると、体は瞬く間に成長し、20歳程の見た目に変化した
「幻影魔法か
もしかしてお姉さん強い?
自分、強さには自信あってさ
お姉さん達も惚れちまうかも」
大きな笑い声がギルド内に響く
怒りが爆発しそうなシリスの目に映ったのは
話しかけるタイミングを見失っていた職員だった
シリスは手招きで呼び寄せる
「結果が出たかの?」
「はい…
ですが途中で切れてしまって…」
そっと微笑み職員の頭を撫でる
今は逆に男が苛立っていた
「今、俺たち会話してたよなぁ
割り込んで入ってくるんじゃねえよ」
男は拳をあげ、職員に振りかざした
それをアイが片手で受け止める
驚き、手を弾くように振り解く
「悪行を働いていない者に手を出すことは関心いたしません。」
「ぐっ、軽く振った手を止めただけで調子に乗るなよ!」
何か思いついたのか、シリスは小さく笑っている
作ったような笑顔に切り替えると、男に提案を始めた
「一つ提案がある
お主、力には自信があるようじゃから、実力勝負といこう
決行日は明日
このアイに勝てたらお主と遊んでやる
仲間を呼んでもらっても構わん
これでどうじゃ?」
舐められている事に少し腹を立てていたが、
あっさりと提案を呑んでこの場は収まった
帰っていく男を横目に、ざわつく場を宥める
申し訳なさそうな顔をした職員が、
何度も頭を下げていた
「本当に申し訳ありません
私が割って入ったばっかりに…」
「どちらにしろ避けられんかったからの
よいのじゃ
それより怪我はないか?」
激しく首を縦に振る
優しい笑顔を見せると、体が縮み、
元の大きさに戻る
「とりあえず仮登録も終わった事じゃし
宿でも探すかの」
まだざわついているギルドを背にギルドを後にした