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AIロボット冒険譚  作者: ピノキヨ990
光の国
3/5

第二章 光の国、城下街へ

地下から出てきたアイ達は、再び謁見の間に来ていた


「契約書を確認させてもらった。

 シリス殿…で合っているな?先日はすまなかった。

 アイも、申し訳ない。

 詫びと言ってはなんだが、欲しいものがあれば用意しよう」

「なら、アイテムバッグをくれんか」


即答だった


「すまない。アイテムバッグは持ち合わせがなくてな。

 媒体となるものがあれば作れるのだが」

「……でしたら、これをお使い下さい。」


アイはトランクケースを差し出す

現世から持ってきた唯一の私物


「うむ。では一週間ほど待っていてくれ。

 王城の施設は自由に使ってくれて構わない」


一度部屋に戻されると、

そこには獣人の女性が立っていた

16、7歳位の見た目で、金属製の首輪をしている


「サーヤです。

 今日から光の国での生活を補佐いたします。

 何なりとお申し付け下さい」


シリスは露骨に嫌そうな顔をする

その顔を見てサーヤは焦りだし、お茶を()れようとする

それに “やめろ” とだけ言い、ベットで横になる


「今のお前に頼むことなんかない。

 ついて来るのは勝手じゃが、余計なことはするでないぞ」


アイとシリスを交互に見つめる

数回繰り返すと、悲しそうに俯いて固まってしまった


「それより、良かったのか?」


突然の質問に

なんの事か分からず首を傾げる


「トランクケースじゃよ。ワシの勝手でお主の物を使うのは悪いしの。

 もし嫌だったんなら、取ってくる」


シリスの質問に首を振る

“そうか…”の一言を最後にその日は寝てしまった



−数日後−

アイテムバッグが完成した

アイはこの数日間で書庫にあった(おおよ)その本を読み切っていた

どこにいく時もサーヤはついてきて、何かしら手伝いをしようとしていたが、

(ことごと)く無視されていた

その夜、ガルムは自らアイ達の元へ訪れていた


「こんな夜分にすまない。今後の予定を教えてほしくてな」

「少々お待ちください。」


部屋には、荷物を整理しているアイと、寝ているシリス、端の方に黙って立っているサーヤがいた

トランクケースを閉め、立ち上がる


「明日王城を出て、冒険者になろうと思います。」

「そうか。ならこれを持っていけ」


小袋を取り出す

ジャラという音と共にアイの手に落ちる


「銀貨が五十枚入っている。二週間は過ごせるだろう」

「感謝するぞ」


シリスが身を起こし、欠伸(あくび)をする


「ガルムよ、一つ頼みたいことがある」

「なんだ?」

「サーヤをくれんか」


少し悩んだガルムだったが、ため息混じりに了承する

シリスは鍵を受け取ると、躊躇いもなく首輪を外した

落ちる首輪の音が部屋に響く


「「「………」」」

「何故外した?!」

「ワシは奴隷が嫌いなんじゃ」

「奴隷が嫌い?あの…魔王がか?」


魔王という言葉にサーヤが反応する


「なんじゃ。ワシにだって心くらいある」


“そうか”と、少し考えるような様子でガルムは部屋を後にした

膨れていたシリスが振り返り、サーヤを見る

その体は小刻みに震えていた


「そんなに怯えんでも…」

「に、逃げるかもしれないとは思わないのですか?」


“逃げるのか?”という問いに力強く首を横に振る


「それに、逃げてもどうせ捕まります」

「逃げるなら追いかけん」

「なんで…」


サーヤは俯く


「さっきも言ったじゃろう。奴隷が嫌いなんじゃ」


まだ体は震えていた


「あれだけ…

 あれだけ大きな戦争を起こしておいて…

 私の親を、兄弟を、村のみんなを殺しておいて!

 どんな奴かと思っていたら“奴隷が嫌い”だ?

 戯言(ざれごと)を吐くのもいい加減にしろよ!」


言葉は荒々しくなっていく

息を切らし、涙目になりながら続ける


「あの後どれだけ大変だったかわかるか?

 分かるわけないよなぁ!

 上からもの言ってるだけで良かったもんなぁ!

 そんな嘘つくぐらいなら…

 私の家族を…みんなを返してよ…」


口調が少しずつ直り、力なく床に膝をついた

しゃくり上げるサーヤの頭を優しく撫でて宥める


「すまなかった」


しばらくすると、泣き止んで寝てしまった


-翌日-

早朝

三人は馬車に乗り、出発した

王城は山の上にあり、街に着くまで少し時間があった


「結局ついて来るんじゃな」

「別に許したつもりはありません

 行く宛がないだけで…」


サーヤはアイの腕を掴み背後(うしろ)に回る

シリスに向かって舌を出し、威嚇する

5分程進んだ頃、木々が晴れ、街が見えた

目を輝かせながら外を眺めるサーヤを膝に乗せるアイ

少しの笑みを見せながら街へ向かう

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