旅の葉
僕は、一枚の葉だ。どこにでもあるような葉だ。
当たり前のように光合成をして、呼吸をする。
当たり前のように木についている。
そんな僕はある日、木から落ちてしまった。
隣に、知らない木の葉が落ちていた。
風が吹いてきた。
風に乗って、僕は街中を飛んだ。
こんなに世界が広いとは思ってもみなかった。
川の上を飛び、山を越えた。
建物の屋上で休憩し、海を眺めた。
車に運ばれ、トンネルで眠った。
ときには道行く人に踏まれ、雨に濡れた。
世界は、思っていたよりずっと広かった。
世界は、思っていたよりも美しかった。
やがて、僕は一本の木の前で止まった。
その木には、多くの葉がついていた。
しばらくすると、一枚の葉が落ちてきた。
風が吹いてきた。
先程の葉は、静かに舞い上がった。
また、新たな旅が始まる。