第1話【サービス終了前転生】
~登場人物説明~
*俺【天の邪鬼】
・雨でツーリングの予定を台無しにされた人物
・続ける気のないゲームは、するべきではない
・基本的に、イヤな事を言うおじさん
「どこだ、ココわっ!?」
俺の第一声はそれだった。そして驚く、声が高い。俺の知ってる、俺の声とは違う。
気付けば、ココに寝ていた。
前後の記憶はなし。見渡す限り、草原と小川
バイクで事故ったか……?
もう一度辺りを見渡す。
「……何処だココわっ!?」
まるで女性のような声だった。
自分の身体を見て、さらに驚く。
「なんじゃコリャァッッ!?」
俺は確かに格闘技はやっているが、ナゼか今の俺は道着を着ていた。着た覚えなど、ない。
着物とも、空手着とも柔道着ともわからぬ道着。上衣はともかく、下袴の腰のスリット部がやたらと大き過ぎる。
イヤ、そんな事より大問題だ。
「おっぱいがある……」
40過ぎのおじさんの台詞ではないだろうが、見事な塊の爆乳が胸に2個ついている。
コブ取り爺さんのラストでも、こんなに驚かないだろう。
そこで俺がした事は、予想出来るだろうか?
爆乳の感触を楽しむ。では、ないよ?
「……あるけど、なんかデカいっ!?」
下袴のスリット部から右手を差し込み、男性自身の確認である。
だって、40年以上の付き合いだもの
俺の知ってる、いつもの一物よりデカかった。
なんか、ショック。
「……玉がないし、穴が二つある……」
あぁ、それなりに経験はあるよ。
だから、ソレがナニかわかる。
以下省略ー
男とも女ともわからない、両性具有のモンスターになっていた。
40代半ば、男性独身。
酒に女に趣味全般。イロイロとつまみ食いをしたが、やっぱりゲームが一番良い。幼い頃は家庭が貧乏で、ゲーム機も買って貰えなかった。
その反動で漫画や小説を読み漁り、膨大な無駄知識を得て、育ってしまった。
ぶっちゃけ、只のオタクだ。
その抑制されていた欲望は、働き出しお金を手に入れた事により解放された。
ありとあらゆるハード機を買い、そのゲーム機の数こそ、自分のプライドの強味だと思った時期もありました。
次世代機の台頭ー
仕事のストレスー
三次元の現実ー
いつしか俺は優先順位1位だったゲームを捨て、女やバイクにうつつを抜かしていた。
ゲームなど、本当に暇な時にする程度のランクまで下がっていた。
今の時代は、良い。
無料で遊べるゲームを簡単にダウンロードする事が出来る。ま、課金はあるようだが、そうでなければアプリ会社が潰れるだろう?
たまたま、雨でツーリングが台無し。
暇になった俺は、ハードゲーム機の電源を入れる事にも億劫になり、スマホに適当なアプリをインストールする事にした。
どうせチュートリアルで飽きるんだから、そのゲームは『ヒューマン・オブ・ジェノサイド』と表記されていた。
モンスターとなって、人間を滅ぼそう。一時期、小説やアニメ、漫画で流行したコンテンツ。美麗なグラフィック、ど派手な演出。
いかにもって感じの、ゲーム
そして、このゲームは5周年目。何度もVerUpを繰り返し、あの手この手で生き延びて来たのだろう。
ただそれだけに新規プレーヤーは参入しにくい。この手のゲーム、古参・ガチ勢、積み上げた経験・アイテム・お金が全てを物語る。
つまり、やってきたモン勝ちなのだ。
対COM戦から対人戦、さらにはグループ戦。足し算・リニューアル・新コンテンツ。課金ユーザーを飽きさせない為、毎月毎月新イベントの目白押し。
イベントクリア上位者にはゲーム内有利アイテム・ガチャチケット・新武器等々プレゼント。
上げ膳、据え膳、重課金プレーヤーを肥えさせて、次回のイベントで、また新ガチャ。かと思いきや、旧キャラ・旧武器VerUp。復刻ガチャに課金中。
〔C〕コモン
〔N〕ノーマル
〔R〕レア
〔SR〕スーパーレア
〔UR〕ウルトラレア
後半期はインフレ状態。
この『ヒューマン・オブ・ジェノサイド』、出た当時はガチャの渋さで有名だった。
自キャラ決定がコモンカードばっかり
ノーマルカードでも出現率1%
レアカードなど、0.01%
何回リセマラさせんだよっ!!
チュートリアルにも行き着かねぇっ!?
ゴブリンだ。スケルトンだ。コボルトだって、コモンカードの山・山・山
たまに出るノーマルカード、オーガやグールでも超ラッキー
レアガチャのサキュバス目当てに、運営は億稼いだんじゃない?
まぁ、モンスターの進化だ。武器の強化だ。飽きもさせずにテコ入れテコ入れ、付き合った労力手離せない。
しかし、万策尽きた。
新規プレーヤーは未加入。古参ユーザーもガチ勢プレーヤーも脱ゲー、アンインストール多発。新規参加者には豪華なプレゼントも効果なし。
だったハズー
しかし、暇なおじさんはインストールしてしまった。
自キャラガチャ、設定
モンスターをさんざん弄り回した運営は、日本の化け物にも目をつけた。
鬼に天狗に雪女。しまいにゃ、閻魔大王。
そして新規加入ユーザーには、ジャパンモンスターのピックアップ・Rチケット。絶対にR以上が当たる優れ物。
さらにRモンスターを進化させるチケットを、1枚プレゼント。
古参メンバーに追い付け、追い越せっ!!
LVUPチケット・極大もプレゼント。
いたせりつくせり、最前線
さらにさらに、ピックアップ武器ガチャSR以上チケットプレゼント。
URには【神剣・七支刀】に【宝剣・草薙の剣】
SRでも【妖刀・村正】等々ー
そして武器強化チケット2枚プレゼント。
これで乗り遅れたなんて言わせない。
俺は初心者プレーヤーの恩恵説明もそこそこに、ジャパンモンスターピックアップRチケットを使用したはずだ。
「鬼だ」
出たのはRキャラの鬼、やっぱり渋いガチャ。鬼にも種類があったが、ある意味ノーマル鬼
進化チケットを使いますか?
使うと、その辺りをで記憶があやふやになる。いや、意識が飛んだ。武器ガチャも回したような気がする。チュートリアルは……、
覚えていない。
無言で爆乳の感触と、自分に新たに出来た穴の快感を味わい、脳髄がビリビリと痺れる。
結局、触りました。
40過ぎのおじさんのやる事では……、
イヤ、大多数の男性なら試すだろうよ。
俺は近くを流れている小川を覗き込む。
「スゲェ美人じゃん!!」
自分の顔を確認してビックリ。一流の美人女優や美少女アイドルにも劣らない、美形っぷり。
スタイル抜群、どスケベボディ
くたびれた、おじさん面じゃあない。
脳みその混乱っぷりは、とんでもなかったが、徐々に受け入れていけば流行モノ、いわゆる異世界転生って事か?
いや、ゲームの世界?
そんなに気持ちの入ってないゲームだったので、内容も曖昧だ。
おでこに角が一本ある。
そんなキャラデザだったっけ?
腰まである黒髪を、後ろで結んで垂らしている。
「こんなどスケベなキャラ……、アマノジャク? だったっけか?」
天の邪鬼だったと思う。
キャラ説明の欄に両性具有とあったが、日本人の性事情もオカシクなったものだ。
いや、もうイカレてるだろ?
天の邪鬼って瓜子姫にメチャクチャ悪事を働いたか、仁王に踏まれるドMの鬼じゃねぇかよっ!?
ありがちなヤツなら、ステータスパネルやアイテムストレージなどあるだろう。
目の前にパネルが開く。
やっぱりあった。カードゲームのカードのように名前とレア度とレベル、そしてイラストが描かれてある。
まじでゲームじゃねぇかっ!!
*【天の邪鬼】【SR】【LV1】
〔肉体強化・小〕
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*【大鉈・地獄門】【SR】【LV1】
〔地獄送り〕〔餓鬼召喚50〕
アイテムストレージのパネルに鉈が入っている。他にもチケットが何枚か。
イロイロと突っ込む所はあるのだが、少し整理をしようか……
「なんなんだコレはっ!?」
よく見た小説・漫画・アニメの類いではあるが、理解不能。
自問自答を繰り返し、以下省略ー
受け入れた。
~用語説明~
*『ヒューマン・オブ・ジェノサイド』
・只の架空のゲーム