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100回目のキミへ。  作者: 落光ふたつ
〖序章〗
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〈思い出④〉

 美桜は誰にでも優しくて、男女問わずに人気があった。

 中学に入る直前で成長期が来たらしく、今とほぼ変わらない背丈になっていた。飛び抜けている訳ではないけれど男子の中でも目立つぐらいには背が高く、当時は俺の方が小さくて並ぶのには少し抵抗があった。

 そんな中学校では俺と美桜は同じクラスになる事は一度もなく。

 その分距離が出来、俺は少しずつ彼女を遠くの存在に思うようになっていた。

 すると無意識の内に姿を目で追っていて。

 それが、俺にとっての気付きだった。


「なんか用?」

「いやっ、なんでもないけど?」

 不意に目が合うと美桜は今までのように歩み寄ってくる。それに対して俺は変に一歩離れてしまい、また問い詰められる。

「なに? なんか最近、よそよそしい気がするけど?」

「別のクラスだし、そんなもんだって」

 俺としても自然を装うとするのだけれど、じゃれ合うように肩で肩を押され、嫌でも性差を意識してしまう。

 それでも美桜は以前と変わらず、俺の変な様子を可笑しいと笑うだけだった。

「というかさぁ、雅文もちゃんと友達作りなよ」

「いやっ、いないことはないからっ」

「えっ!? 誰かと話してるの見たことないんだけど?」

「き、雉尾くんとかとは最近話すし……」

「あー、あの水泳部の人ね。悪い人じゃなさそうだよね」

 小学生時代の事もあり、美桜は頻繁に俺の友人関係を気にかけてくる。それが杞憂に終われば、飛び切りの笑顔を浮かべた。

「ま、友達が出来たんなら良かった」

 思春期になってもその幼馴染はお節介を焼いてきて。

 それが俺は恥ずかしかったのだけれど、やっぱり近くにいられるのは嬉しかった。

 それぐらいに、好きだった。

「じゃあまたねっ」

「うん」

 手を振って、教室に戻っていく想い人。

 その背中が見えなくなるまで俺は見つめていて。

 2つ隣のクラス。でもそれ以上の距離を俺は感じていた。

 ハッキリとした物言いが出来て、人の考えを読むのが得意。彼女を嫌う人なんて聞いた事がなくて、どれだけ褒められても鼻にかけない。加えて笑顔が無邪気で。

 俺とは違うところ。俺にはないもの。

 それを美桜は、全て持っていた。

 だから俺は憧れたのだ。

 夜空に浮かぶ星のように。

 手も伸ばす事が出来ずに、ただじっと眺めていた。

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